★国語教師(9)

昨晩父からLINEが来ました。部長に昇進したと書いてあり、驚きました。決して望んでいた進路ではないと思いますね。給料は1.5倍、苦労は三倍と言ってましたので。

しかし第一子が生まれ稼ぐ必要はますます高まる。父は家庭維持のため嫌な仕事を引き受けることにしたんだなあ、としみじみ父の心情に感銘を受けました。僕は新宿のデパートにいき高価な靴を買って父にプレゼントしました。

よし、僕もがんばるか。現在、一年生の国語担当、読書愛好会の顧問、そしてバーの仕事。これ以上仕事を増やすのは得策とは言えません。とにかくしばらくは授業をがんばり、国語教師としての腕を磨くというのが大事です。さいわい学校は阿部校長との関係も良好だし、国語チーム内もなんら問題が生じていないため仕事は捗ります。

気になるのは石上教頭ですが今のところ彼女との接触は極めて少ないのです。相変わらず恐怖政治みたいな授業をやっており、やれやれとは思いますが。生徒が気の毒ですよね。今朝も校門付近に仁王立ちして生徒たちを捕まえ小言を言い続けてましたよ。

ゆかり先生に誘われ高円寺の沖縄料理屋に行きました。相変わらずかなりの人気で店は満員御礼でした。ゆかり先生は泡盛をロックで飲んでました。僕はハイボールです。僕は24歳、ゆかり先生は32くらいじゃないですか。結婚は強く望んでいないようです。趣味(スキューバダイビング)が一番、仕事が二番、男は三番と言ってました。

趣味か。僕には何にも趣味がないんですよね。確かに料理は好きだけど趣味というよりは僕の健康、生活維持に必要な家事という認識があります。

本を読むのは趣味というより幼い頃からの習慣であり、歯磨き、入浴、ラジオ体操みたいなものだ。

スキューバダイビングは何が楽しいんですか?と聞いたら「海の中で魚になれるから」とゆかり先生は言ってましたね。先生はスマホを取り出して僕に海中の写真を見せてくれました。様々な形や色をした魚が泳いでいます。

学校で働きつつ年に六回沖縄に行き海で遊ぶ。なかなか豊かな暮らしだと思いましたね。趣味と仕事を存分に楽しんでいる。

帰り道、先生と並んで歩いていたら向こうからバーはやしの常連客が歩いてきました。気さくなおじさんです。彼は僕を見て少し驚き、ゆかり先生も見て、僕に「彼女?」と聞きました。僕が答えるより先にゆかり先生が「はい、そうです!」と言いました。(笑)

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