★国語教師(8)

今朝は目玉焼き、ベーコン、トマトスープ、トースト一枚を食べて出勤です。

最近は学校のキッチンRoomが楽しくて頻繁に顔を出してます。先週は豚の生姜焼きの実習でした。豚の生姜焼きって、誰でもできると言うと語弊がありますけど、豚肉にタレを付けて焼けばいいという料理ですよね。失敗するのが難しい料理じゃないですか。

ところがそうじゃないんです。丁寧にやればやるほど美味しくなります。火力をちゃんとチェックして焦げないように気をつけます。

火力調節に失敗して肉を焦がしてしまった生徒が三人いました。僕は難無く仕上げて生徒に振る舞い、調理室を出ました。調理実習は実に楽しいですね。

調理部の顧問は生物を教えている青木由美子先生と言いましていま20代後半ぐらいじゃないですか。小柄で笑顔が絶えない先生なんです。生徒にたいへん人気があります。栃木出身で少しだけ栃木訛りがあります。

僕はキッチンRoomを出てそのまま読書愛好会の部活に参加し、会議室の隅っこで生徒たちの話し合いを見学しました。その日は15人くらい生徒がいましたね。

彼らは夏目漱石の「こころ」を研究してました。なぜ先生は自死したのか。自死する必要はあったのか。奥さんが気の毒ではないか。「先生」の行動については批判的な意見を出す生徒が多かったです。

僕が思うに、時代が違うと思うんですよね。人々の倫理観が大きく変化した。簡単に離婚するし、夫婦それぞれ出会い系を利用して浮気する。天皇陛下を心から尊敬している国民はごくわずかである。

先生は友人を裏切ったという罪の意識に生涯苦しんだ。僕には親友が一人もいないので友人を裏切る行為についてはいま一つピンと来ないんですよ。

乃木将軍は自分の判断ミスによりたくさんの部下を死なせてしまったことについて生涯悩み続け、最後は明治天皇崩御が強く彼を後押しして奥さんと共に自決した。昔の侍って、すごいなあと思いますね。現代においてそのような倫理観は稀有でしょう。

なんだかいろんなことが軽い時代になりました。SNSで知り合ったばかりの人を気軽に友達と呼び、その人が嫌になったら細い糸をさっさと切ってお別れする。哲学的なことをしょっちゅう考えている人のことを「あいつはちょっと重い」と言って揶揄する、敬遠する。

現代が漱石の生きた時代より良い時代だとは言いきれないよなあ、と、生徒たちの話し合いをぼんやり聞きながら考えておりました。

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