★極道学園(506)

慶子の運転で長野の山小屋に行った。鹿を一頭捕らえたら東京に戻るという予定である。夕刻、山小屋に到着し組員から肉、野菜を貰い、鍋で煮込んで食べた。そして慶子と抱き合ってさっさと寝た。

翌朝、四時に起床して前日用意したおにぎりをリュックに入れ、鹿を探しに行く。すぐに足跡、糞を発見したので忍び足で追跡したら高い草木から鹿が顔を出した。俺たちには気付いていないようだ。すばやく地面に身体を伏せる。 
 
やがて鹿は餌を求めて草原に向け、ゆっくり歩き出した。距離は100メーターだ。慶子と俺は静かに鹿との距離を縮める。

目と目で話し合い、慶子が撃つことにした。50m付近で木の枝により銃を固定して弾丸を撃ち込む。弾は鹿の首に当たり鹿は仰向けに倒れ足をヒクヒクと動かしていたがやがて息絶えた。

すばやく血抜きして大きな革袋に鹿を入れ二人で引きずり小屋に戻った。組員たちが「(解体は)俺たちがやりますよ」というので彼らに任せた。

150kgぐらいある鹿だ。可食部が四割として60kgの肉である。毎日300gのステーキにしても200日も持つのである。自然の恵みというのは本当にありがたいものだ。

内臓を焚火で炙り食べる。モモ肉は炭火でじっくり焼いて塩を振りかけ食べた。

猟が終わり慶子は小屋のソファーに寝転がり本を読みはじめた。俺は組員たちと雑談したのち昼寝した。

一頭仕留めるのに三日はかかると思ったのだがあっさり二日目で任務完了だ。

配送担当の組員に電話して鹿肉をヤマザキに届けてもらうことにした。それをヤマザキはチバギン、あるいは海上レストランに納品するのである。100gが300円ぐらいの取引きなので今回は18万円の売上だ。

上野に戻り午後からホテル104の自室で執筆活動を行った。400字詰めの原稿用紙で20枚、約8000文字の短編である。このぐらいの分量だと、調子が良ければ二時間ぐらいで書ける。調子が悪いときはウンウン唸りながら書き四時間以上かかるときもある。昨日はまあまあ調子が良く三時間ぐらいで完成し、ロバーツ田宮にメール送信した。すぐに田宮から返事が来て「親分、最高に面白いです!」と書いてあった。

俺は気分上々で慶子と共に田中工務店に向かった。店は空いていて俺たちはさっそくビールで乾杯し、長野から持ってきた山菜を店主にプレゼントした。店主は非常に喜び、これはお返しですとにっこり笑い、山形の美味な日本酒をサービスしてくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?