★国語教師(10)

学園内では他の先生の授業を見学することが強く推奨されています。昨日は石上先生の授業を見学しました。

登壇した先生はいきなりある生徒に教科書の一ページを音読することを命じました。二年生の生徒なんですが、あまり英語が得意ではないらしく出てくる単語の半分は読めません。石上先生の機嫌はどんどん悪くなり生徒に「ちゃんと予習してこないからだ」と言いました。生徒はうなだれてましたね。

次に、黒板に穴埋め問題を書いて、()内に入るべき単語を生徒に答えさせます。主にwith、in、at等です。指名された生徒はしばらく沈黙し、分かりませんと言いました。

これ、先週習ったよね、どうしてわからないの?と先生は詰問します。石上先生の授業は否定、詰問、叱責、鞭打ちのオンパレードなんですよ。このような授業を楽しいと思う生徒は世の中にいるんでしょうか。いるとしたらドMではないでしょうか。

僕は非常に憂鬱な気分になり、石上先生に黙礼して教室を出ました。職員室に戻り石上先生の授業を振り返り、あれこれ考えました。あー、嫌だ嫌だ、あのようは授業は良くないよ。僕は生徒を威嚇するのではなく、励ますような授業をやりたいな。

最初に音読を指名された生徒はクラスの中でも最下位と言っていいほど成績が悪い生徒です。石上先生はそれを知っていて意図的にその生徒を指名したのです。そして皆の前で恥ずかしい思いをさせた。まるで公開処刑じゃないですか。

僕の授業はスマホOK、内職OK、睡眠OKなんですよ。私語は禁止ですが。真面目に国語を学びたい生徒以外は真剣に聞かなくてもいいよというスタンスです。前日、夜遅くまで部活をやっていた生徒は時間割表の国語という字を棒線で消して「寝る」と書いてます。(笑)

僕の授業を見学した石上先生は全体職員会議で「名前は伏せるが授業中、スマホを弄っている生徒を注意しない先生がいる」と、僕の顔をチラッと見ながら述べました。

石上先生はいわゆる潔癖主義、完璧主義であり、白い陶器にわずかに付着している小さな黒いシミをひたすら磨いて真っ白にしたい人だ。非の打ち所がない人間の完成を目指している。しかし僕は白い陶器に付いているシミを邪魔なものではなく模様みたいなものだと思っている。愛すべき模様、個性だ。欠点がたくさんある人でけっこうじゃないか。

僕は学食で180円のカレーを食べながらそのように思いました。

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