★読書愛好会(87)

バイトは杉並学院、バー、以上二つになりました。杉並学院の教務管理に詳しくなり先生たちともずいぶん仲良しになりました。校長、副校長も僕のことを気に入ってくれて杉並学院への就職は確定的になりました。

学校にはパソコンに詳しい人がいないのですが僕はいちおう大学でコンピュータの授業を熱心に受講していたのでパソコン関連のトラブルにはだいたい対応できます。校長はその点をたいへん高く評価してくれました。大学で得た知識を利用して身につけた技能が社会に出てから周囲に評価されるというのを初めて体験しました。

大学はあと二年と少し。講義は相変わらず楽しくて退屈することはありません。

近代日本文学史の授業では夏目漱石にたいへん詳しい教授がいて各作品についての深い考察を語り、それを聞いて驚きました。こんなに深く考えることができるのか、と。大学教授というのは、全員がそうだとは言いませんが、それぞれの分野のプロフェッショナルですので全くもってその知性の深堀りは大したものです。狭いが、深い。

さて、国語教師として何を目標にがんばるか。目標なしに仕事することも可能ですよね。「教師の仕事は生活のため」と決めてしまえば何らかの目標は一切必要ないのです。

杉並学院は進学校ではないから「難関大学突破」みたいな目標は酷く不適切です。僕は、「今は目標を定めないほうが良い」と判断しました。まずは学校の指示に従い三年ぐらい教師としての経験を積み、目標はそれから考えようと。

コースの状態が全く分からないのにマラソンの目標を立てるのは少々無駄かな、と考えました。アップダウン、路面の状態などを詳しく知ったうえで作戦を立てたほうが良い、とマラソン大好きな林マスターが言ってましたよ。

昨晩はまた豚もやしを作り父に提供しました。餃子も焼きました。美味しそうにビールを飲みながら僕が作った料理を美味い美味いと食べてくれます。

「リュウ、彼女と結婚したらこのマンション、あげるよ」

「え?」

「ローンも終わったからさ、お前の金銭負担はないよ」

「お父さんはどうするの?」

「知り合いがうちの会社の近くにマンションを持ってて、その部屋を格安で貸してくれると言ってるんだよ」

「ご飯とか、どうするの?」

「婚活やって、新しい奥さんを探す」

「おー、ついにその方向に!」

「お前と彼女の付き合う様子を見てたら俺も羨ましくてさ、だんだん結婚したくなってきたんだよ」

「あはは!」

我が家は長らく冬でしたがいろいろあって春が来て、毎日毎日穏やかな生活で、また春を迎えつつある、という感じですかね。

家事をしっかりやって父を支えるという役目がもうすぐ終わるかも、と思ったら少しだけしんみりしてしまった。家事は全く嫌ではなかった。毎日楽しかったのです。

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