★極道学園(505)

飲食店を全国展開している会社の幹部たちが一般客のふりをして各店舗を利用して問題点を店舗責任者に指摘するというのは良くある話である。

ポン社長の会社も似たようなことをやっているがポン社長自身はこのような覆面調査が出来ない。テレビ新聞雑誌に顔が出ており店舗の社員だけではなくアルバイトにまで顔を知られているからだ。一方の俺は昔から一切メディア関係に顔を出していないためこういった覆面調査の時に役立つ。

先日はチバギンの天ぷら屋を調査した。Googleの口コミ評価が4.4。かなりの高得点である。俺は金髪のカツラをつけ、サングラスをかける。老年のロックシンガーをイメージした。

慶子はやはり金髪のカツラ、サングラス、黒いタイトなミニスカート、上半身は白いTシャツに黒い革ジャンである。

我々は夕刻にフラリと入り、空いてますか?と聞いた。そしたら店長らしき人がニコニコ爽やかに笑い、カウンターでもよろしいですか?どうぞどうぞと招き入れる。

確かにGoogleの口コミには「店長さんの笑顔最高」と書かれていた。俺たちは3500円のコース料理を頼み、親方が揚げてくれた天ぷらを食べてみた。うん、美味い、大したもんだ。

この店はOpenしてまだ半年ぐらいなのだが早くも予約困難な店として有名になった。ヤマザキが納品する新鮮な魚介類、油は愛知のホウロク。店舗は和食屋の設計で著名なマンコロリン石田。これで流行らないはずがない。ちなみに親方は前科10犯である。(笑)

柏市出身の暴走族で道交法違反、傷害窃盗を繰り返し少年院に入所したのちシャバに戻ったが仕事は全くない。親が心配して同級生の先代に「親分、うちの息子をどうかよろしく」と頭を下げ、龍神組に入ったのである。

山口組関係の抗争があった際には三人コロシてムショ入りした。通常無期懲役のところ紅林警部が動いてわずか三年で出所し、銀座の天ぷら屋で修業したのである。その店で彼の才能が爆発的に開花した。天ぷら職人は彼の天職だったのだ。

俺がサングラスを外して親方を見たら彼はびっくりし、「え?!親分....」と絶句した。全くもう、意地悪ですね、全然気付きませんでした。親方は頭をかきながらお茶を出してくれた。

ポン社長に電話して「まあ、身内なので甘口採点になるんだが、この店は大丈夫だと思いますよ」と伝えた。慶子は天ぷらを三人分追加注文してテイクアウトにした。翌日、天丼を作ると述べていた。

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