★読書愛好会(100)・最終回

僕は大学を卒業して杉並学院に就職し、高一の国語を担当することになりました。

国語の先生は三人いて、夏目透析先生、志賀尚子先生、森憤慨先生です。

夏目先生は高三、志賀先生は高二、森先生は難関大学受験クラスを担当しています。

そのほか非常勤の女性教師が二人いて、主に古文、漢文の授業を担当しています。

僕は国語チームの教務主任である夏目先生から授業内容について指導を受けることになりましたが夏目先生からは特にこうしろ、あーしろという指示はありません。自分の好きなようにやりなさいというスタンスです。

僕は自分の好きな作品を次々選び、それを解説する、あるいは文章の意味を生徒に考えさせるという授業を繰り返しています。

学校指定の国語辞典は「新明解」ですが、生徒に「分からない言葉があればすぐに辞書で調べる」という習慣を身につけてもらう工夫をしています。この習慣が身につくと生徒の知っている言葉がどんどん増えるのです。単語の誤用防止にもなります。

国語力を伸ばすには「ひたすら大量の文章を読む→意味を考える→分からないことがあれば辞書で調べる→その文章の意味するところを自分の言葉で書き記す」、このサイクルを延々と回せば良いのです。自分の頭でとことん考える力を伸ばす、これが国語教育の肝なんです。

校長に「生徒が読書大好きになるきっかけ作りのため、読書愛好会を作りたい」と相談したらすぐに許可が下りました。さっそく高一~高三の生徒を15人集めて毎週水曜日の夕刻に部活動をやっています。僕は顧問なので細かいことは一切口出ししません。みんなの書評をひたすら褒めるだけです。

部長はコンサルMの仕事で土日、深夜関係なく働いています。現在は日本政府からの依頼で某省庁の行政改革について提案書を作る仕事を先輩社員と二人でやっているようです。終電が間に合わず毎日タクシーで帰宅です。

父はナオコさんと結婚し、家を出ていきました。僕はいま3LDKのマンションに一人住まいです。学校は定時に終わるので夜はバーのアルバイトを週三回やっています。林マスターは教職にたいへん詳しい人なので何かあればいつでも相談できます。

さて、僕の高校生、大学生の頃のことを長々とお話しました。次は社会人になってからの話、具体的には学校での仕事のことや部長との結婚生活がどうなったかという話をしたいのです。しかし社会人一年目の今は仕事に集中したいため、日記みたいな僕の話はいったん終わりにし、また時期が来たらお話を再開したいと思います。

僕の拙い話を辛抱強く聞いて頂いたみなさま、どうもありがとうございました。またいつか、お会いしましょうね。

(第一部、完)

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