★国語教師(16)

睦美が三年間の勤務を全うし、コンサルMを退職したので僕たちは結婚しました。式は食事会形式にし、父、ナオコさん、茶太郎、睦美の両親、睦美の親戚数名を招待し、新宿のホテルの一室を借りて中華料理を食べました。

父は巧みに司会をやってくれました。さすが話術のプロです。ときおりみんなを笑わせて和やかな雰囲気を作るよう工夫していました。

父の会社に勤務している青木さんという人がカメラマンをやってくれて大量の写真を撮影してくれました。これはきっと良い思い出になるでしょう。

料理は回鍋肉、五目焼きそば、焼売、小籠包、卵スープ、チャーハン、麻婆豆腐、北京ダック、餃子、青椒肉絲などです。酒はビール、日本酒、焼酎、紹興酒などが提供されました。僕と睦美は酒量を抑えました。

茶太郎は初対面の人に対しても何ら抵抗感なく、ウキャウキャと張りきってました。この優れた社交性は父の遺伝子かもしれません。

睦美は僕の家で暮らしはじめ結婚後、半年で妊娠しました。やがて男の子が生まれたので長太郎と名付けました。僕はバーのバイトをしばらく休み、なるべく家にいて家事を手伝うことにしました。長太郎は頻繁に深夜、泣くので睦美はいつも寝不足です。

学校からは扶養手当の名目で毎月二万円が支払われるほか杉並区から児童手当が支給されます。僕はまだ新入りのため薄給ですが幸いにも父に支払う家賃が低額なのでなんとかやりくりできます。

国語チームは夏目先生が定年退職して毎年契約更新の非常勤教師になり、志賀尚子先生がチームリーダーになりました。新卒で太宰治子(はるこ)先生が赴任しました。津田塾大学を出た秀才です。彼女は一年生の授業を担当します。僕は現在二年生を担当しています。

睦美とナオコさんは頻繁に連絡を取り合い、今日は睦美が茶太郎と長太郎を預かる、来週はナオコさんが、という相互扶助をやっています。保育園は高額なのでこのやり方で経費を抑えようという工夫です。

父と僕もあれこれ話し合い、育児を妻にすべて押し付けるのは良くないよね、ということで旦那チームが茶太郎、長太郎を預かり、睦美とナオコさんに「たまには一緒にランチしておいで」と父が一万円を渡して彼女たちの自由時間を増やす努力も怠りません。

茶太郎、長太郎はまるで実の兄弟みたいに仲良しで三歳上の茶太郎がいつも長太郎を気遣い、自分が日常的に使っているおもちゃを気前よく長太郎に貸して面倒を見てくれます。

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