★国語教師(6)

ナオコさんが妊娠しました。僕の兄弟が増えるわけですね。ずいぶん歳が離れてますけど。

ナオコさんは自宅中心に活動し出産に備えることになりました。たぶん具合が悪くて家事があんまり出来ないときもあると思うんですよ。そんなときは遠慮なく声をかけてくださいね、と伝えてあります。

僕は土日が休みなんですがたまに進学クラスの補講があるのでそんなときは先生たちのお手伝いで出勤しますよ。プリントをコピーしたりテストの採点をしたりします。

うちの学校は調理師を目指している生徒のため、キッチンルームがあるんです。都内で料理店をやっているオーナー数名が来て生徒に調理を指導します。昨日はオムライスの授業でした。僕も参加してオムライスを作ってみました。知っている教え子が何人かいて「え?先生は料理が出来るんですか」と驚いてましたね。

石上先生は常に口うるさく生徒の行動を否定しているためガミ子と呼ばれています。髪が長い、スカートが短い、髪を染めている、爪に色を塗っている。いつもいつも生徒をチェックしています。こんな人と一緒に暮らしたら一ヶ月で胃潰瘍になりそうだ。(笑)

でも阿部校長はそんな石上先生を許しています。なぜかというと石上先生は阿部先生が校長になる前から教頭なんですよ。学園のオーナー一族と深い関係がある人、という噂があります。

阿部校長はおそらく、石上教頭のやり方を全面的に支持していないと思います。しかし彼女を解雇するとオーナー一族の気持ちを刺激する。だから見て見ぬ振りをしているんだ、とゆかり先生は解説してました。大人の世界はけっこう複雑ですよね。

校長、教頭があらゆる面で同調し、一致協力して学園運営に向き合うことができればそれが一番いいと思います。しかし現実は校長と教頭の間に決して浅からぬ溝がある。

ゆかり先生も石上先生には若干ネガティブな意識を持っている。しかし石上先生はゆかり先生の上司だから、何らかの命令が下ればそれに従わなければいけない。早い話、高校に保健室設置というのはmustではないため石上先生が動けばゆかり先生は失業するかもしれない。

僕の場合、今のところ石上先生から何か指令が飛んできたことは一度もありません。だいたいの指令は国語科の主任である夏目先生から飛んで来る。夏目先生の場合、指令とは言っても細かい話は一切なくて、「リュウ君、がんばってるねー」とか、そのような感じです。

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