★極道学園(480)

ひきこもりの俺に気を使い、太田が仙台までドライブに誘ってくれた。

早朝上野を出て首都高に乗り、しばらく北上して浦和ICで東北自動車道に乗り換える。

浦和~仙台宮城ICは320キロぐらいである。しかし太田は宮城ICではなく、その先の仙台泉ICで下車した。海岸に出る近道があるようだ。奥松島に行きたいと言っていた。泉ICから裏道のようなルートがあるそうだ。

泉区というのは昔、泉市だった。市町村合併により仙台市に組み込まれたのである。昔は田んぼだらけだったのだが次々と住宅地、ゴルフ場などが造成され、マンションが建ち並び、利便性の高い地域に生まれ変わった。

三菱地所などのDeveloperに山林、田んぼを売って成金化した農夫たちがたくさんいるところ、それが泉区である。成金だから当然ながら文化の蓄積がない。そのため洒落たバー、カフェは一軒もない。

泉区の富裕層というのは、無教養な、単なる田舎者なのである。映画、音楽、文学、美術にも興味なし。酒、女、ゴルフに走るのみ。文化人を応援しようという気風がない。

書店の少なさも仙台市の特徴である。たぶん読書を好む人々が少ないのだろう。文化的には非常に停滞している都市である。

仙台の七夕祭り?

あれは祭りとは言えない。青森のねぶた祭りのワクワク度を100点とすれば七夕祭りはわずか3点である。これをわざわざ他県から見に来る者がいるのでたいへん驚く。時間とお金の無駄ではないか。

人口100万で東北一の大都市を誇っているが近年人口が伸び悩んでいるのはなぜか。要は文化がないからである。

博多と違い、地元愛もない。余所から引っ越してきた人々が大半だからだ。隣県の福島のほうが余程がんばっている。

以上のようにダニエル先生が酷評していた。

先生がなぜ仙台市に詳しいかというと若い頃東北大学で三年ほど社会学を教えていたからである。先生は仙台の悪口を言う割になぜか仙台を気に入り、現在でも年に数回仙台市を訪れる。

過去、宮城県知事と仙台市長が建設会社から多額の賄賂をもらい熱心に都市開発を進めたが結局両者逮捕され、開発に急ブレーキがかかった。仙台市地下鉄南北線の北端は泉中央駅だが、本来、南北線はもっと北に伸びるはずだったのである。

いろんな意味で中途半端な仙台市はこれからも緩やかに迷走を続けるであろう、とダニエル先生は語っていた。

「でもね、僕は仙台が大好きなんですよ。五月の、新緑の山々、秋の稲刈りの風景を見ると心が和むのです。東京生活では絶対に得られない自然との触れ合いがあります。たまに市街地に熊が出てくるのも好ましいですね」

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