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僕のベースの話

 僕がベースを弾いていた15年ほど前のこと。とある中古楽器店で出会いがありました。
 それまで使っていた初心者用ベースでは物足りない気がしてきてベースを買いかえようと、中古楽器店に入ると見たこともない中古のベースがありました。
 ヘッドにはライオンのロゴと「Turner」の文字。ピックアップは菱形。これに「Rick Turner定価40万円くらい」というアバウトな値札。販売価格はその半額以下でした。
 その頃はベースマガジンを立ち読みしたりしていたからそこそこメジャーなメーカーは知ってきたけどこんなのは見たことも聞いたこともない。定価も本当かよって感じてしたが個性的な姿に魅せられて翌日には購入していました。
 そして、今。
 もう何年も弾いていないこのベースを手放そうかと考えました。部屋も片付けたいし、いくらかのお金になればありがたい。ベースも誰かに弾いてもらった方が幸せだろうと。
 さて、いくらの価格で売れたら妥当だろうか。修理が必要な箇所もあるし、ほとんどジャンク品扱いか。
 とりあえずこのベースがどういう物か調べよう。
 検索すると「Rick Turner」というブランドのホームページはすぐに出てきた。御年73才になるアメリカの楽器職人の名前らしい。Rick Turner製のギターやベースの画像もいくらか出てきたけど、僕と同じものはない。菱形のピックアップのベースが全く出てこない。
 面白いことを思いついた。ホームページから直接メールをしてみよう。僕は翻訳サイトを使って手に入れた経緯や、手放そうと考えることも書いた上で、僕のベースの特徴を書いた。
 翌日に返信がきた。文章の最後には「Rick」と書いてある。僕は興奮した。早速翻訳にかける。確かに自分が制作したベースだろう、価格リストでは3750ドルだということが書いていた。なるほど購入時の約40万円というのは為替レートで変動するからかと納得した。返信メールにはシリアルナンバーがヘッドに書いてあるから教えて欲しいと書いていた。
 僕はシリアルナンバーを調べ再びメールを送った。また、翌日返信があった。1994年に製作したベースで希少なものであるという。菱形のピックアップのものは10本も作っていないとの内容。世界に10本とない?!
 僕は嬉しくなったと同時に困惑した。ネットやオークションで売るのが何かつまらなく思えてきた。この体験をどうすればもっと素敵なものにできるかと欲が出てきた。
 まだ、このメールについて返信していない。(小川)
 つづく。

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