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オミクロン対応二価ワクチンの有効性 速報

さて、第8波が進行し、免疫逃避能の高いBQ.1.1が日本でも優勢になってまいりました。オミクロン対応2価ワクチン接種をしてないが、した方が良いか悩んでいる方はいらっしゃいますか?

この記事ではオミクロン対応二価ワクチンの有効性に関する速報をお届けします
新型コロナウイルスのワクチン接種が問題となっている重要なポイントについては次の記事となります


1. 日本の感染研による報告 (2022年12月13日公開)

日本における2価ワクチンの接種の状況


オミクロン対応 2 価ワクチン(BA.1)ファイザー社製とモデルナ社製は 9 月 20 日から、オミクロン対応 2 価ワクチン(BA.4-5)ファイザー社製は 10 月 13 日から、オミクロン対応 2 価ワクチン(BA.4-5)モデルナ社製は 11 月 28 日から、それぞれ接種可能です

日本における2価ワクチンの効果 感染研の報告から


期間 2022年9月20日〜2022年11月30日
流行株 同時期の関東地方ではBA.5 (75〜90%) ref 11
対象 関東地方の複数医療機関の発熱外来等を受診した 16 歳以上の者(一部医療機関では成人)
詳細は後ろにあります

結果 

ワクチン有効率


感染研の出してくださったオミクロン対応 2 価ワクチンの発症予防効果の有効率は、オミクロン対応2価BA.1 が73、オミクロン対応2価BA.5が69 でした。もとになる検査陽性者と陰性者は、オミクロン対応2価BA.1が陽性34人と陰性36人で、オミクロン対応2価BA.5が陽性20人、陰性23人でした。人数がとても少ないので、年齢別の有効性や、それまでに何回1価ワクチンを接種したかによって有効性を区別できませんでした

なお、ワクチン有効率は(1-調整オッズ比)×100%で推定していました

念のための追加記載がありました。1 価ワクチン接種から 3-6 ヶ月と比較した有効率は 30% (95%CI -13-57)でした。1 価ワクチン接種から 6 ヶ月 以降の者と比較した有効率は、オミクロン対応ワクチン接種後 14 日以降で 44% (95%CI 11-65)で した

公開されたデータは下のようになります。下表2で、どのような接種歴であっても一定数以上が感染している状況です。さらに入院や重症化のデータはありません

*年代、性別、基礎疾患の有無、職業(医療従事者かそれ以外)、医療機関、カレンダー週、濃厚 接触歴の有無、過去 1 ヶ月の新型コロナウイルス検査の有無、3 ヶ月以上前の新型コロナウイル ス感染症診断歴、マスクの着用状況、飲酒を伴う夕方・夜の会食への参加で調整、今シーズンの インフルエンザワクチン接種有無 †オミクロン対応 2 価ワクチンを接種していない者で 3 回または 4 回接種していない者のみ ‡オミクロン対応 2 価ワクチンを接種していない者で 4 回接種していない者のみ §オミクロン対応 2 価ワクチンを接種していない者

Table S1を文章化すると、オミクロン対応 2 価ワクチンを接種された者のうち、オミクロン対応 2 価ワクチン(BA.1)を接種された者は 102 名(52.8%)、オミクロン対応 2 価ワクチン(BA.4-5)を接種された者は 91 名(47.2%)でした

Table S2を文章化すると、オミクロン対応 2 価ワクチンを接種された者において、それまでに 1 価ワクチンを 2 回接種された者は 20 名(10.4%)、3 回接種された者は138 名(71.5%)、4 回接種された者は 35 名(18.1%)でした

感染研の報告 リンク はここから↓ダウンロードできます

2. 米国CDCからの速報

2-1. 免疫力がない65歳以上の成人におけるCOVID-19関連入院の予防に関する二価mRNAワクチンの効果の早期評価-IVYネットワーク、18州、2022年9月8日~11月30日

期間 2022年9月8日~11月30日
流行株 BA.5.2系 (25.47%)、BA.4.6 (7.22%)、BQ.1系(6.22%)ほか
対象 全米18州、65才以上 で免疫力のない798人
   
注意:もともとのデータベース上の65才以上は約3万人いました
      そのうちの免疫力のない人が対象です
調査 救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院した人数
結果 
65才以上でオミクロンBA.5対応2価ワクチンブースター接種者は79人でした。そのうち新型コロナウイルスに感染して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院した人は20人でした。2価ワクチンブースター接種して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院する率は25%です

これに対し武漢型を4回接種して、感染して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院したのは280人で、感染して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院する率は48.6%です

さらにワクチン未接種でこの期間に感染して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院したのは81人で、感染して救急外来/緊急医療(ED/UC)受診または入院する率は56.6%でした
下の表になります

入院に対する相対的ワクチン有効性は、未接種に対して52.06%で、武漢型4回接種に対して44.69%です
だいたい武漢型4回接種者の4人に2人が入院するのに対して、オミクロンBA.5対応2価ブースターを加えると4人に1人入院する、という改善効果がありました
CDCレポートへリンク
直訳のブログへリンク

3。今、流行中の変異株はBQ.1.1系で、1月ごろに上陸する見込みの変異株はXBB.1.5

今、ニューヨークで流行している感染力の強い変異株はXBB.1.5です (下図)
これまで日本は米国の流行に後から続くスタイルでした。したがってこの冬のうちに、日本でもXBB.1.5が流行する可能性があります。おおよそ1月すぎでしょうか?

4。 オミクロンBA.5対応2価ワクチンの効果_______@クリーブランドクリニック従業員の場合


対象 米オハイオ州のCleveland Clinicの従業員51,011人 (平均年齢42才)
期間 オミクロン対応BA.5-二価ワクチン接種開始日 9月12日2022年〜
流行株 9月22日から10週間はBA.4と BA.5、12月からはBQ.1, BQ.1.1, と BF.7
二価ワクチン接種状況 研究終了までに10,804人(21%)が二価ワクチン接種した。ブーストされた。二価ワクチン接種者の内訳はファイザー9,595人(89%)、モデルナ1,178人であった。このうち、2,452人(5%)の従業員が13週間の研究期間中にSARS-CoV-2検査陽性となった

結果 Table 2にあるように、期間中に二価ワクチン接種者は、調整済みハザード比が0.70 (赤線)でした。いいかえると二価ワクチン接種を接種した人は30%感染から保護されました。この結果は、BA.4/5が流行している時期に、BA.4/5のS蛋白を含む二価ワクチンを接種すると、30%ほどBA.4/5に感染しにくくなったことを表していて、流行している変異株のS蛋白が二価ワクチンに含まれていたからでた30%の有効性です。12月から流行しているBQ.1、BQ.1.1、BF.7に対する有効性は次の5. のセクションを見てください

この論文を全文のブログ記事へリンク

5。BA.2.75.2、BQ.1.1、XBBに対するオミクロンBA.5対応2価ワクチンの効果

現在、流行中のBA.2.75.2、BQ.1.1、XBBに対するオミクロンBA.5対応2価ワクチンの効果を調べた論文が、12月21日に投稿されました

BA.2.75.2、BQ.1.1、XBBは共通して懸念されるR346T変異を持っています(下図, クリックすると大きくなります)

3種類のグループ (下表) の血清を用いて生ウイルス中和能を調べました

原著へリンク
対訳ブログ記事へリンク

6。 4回接種してBA.5既感染者はBQ.1.1中和能あり____二価ワクチンブースターの優位性は?

カナダのモントリオール大からのプレプリントです

新型コロナウイルスは、感染者やワクチン接種者の増加の影響で継続的に進化を続けています。このウイルスの免疫逃避能を高める変異が限られているので収束進化をします。重要な5つの変異はR346T、K444T、L452R、N460K、またはF486Vです。すべてBQ1.1に存在します

4回新型コロナウイルスmRNAワクチンを接種した人の血清が、BQ.1.1を中和するかどうか、偽ウイルス中和実験で調べられました

対象 総数63人、平均年齢59才。うちわけは下表です。最初の3回は、ほとんどの人がファイザー1価を接種しました。さらに3回接種後の感染の有無でグループに分けて違いを評価しました

結果 最近の感染歴があると4回接種者は全て、BQ.1.1中和能が上がりました。したがって、4回接種者は5回目に2価ワクチンをブースター接種しなくてもBQ.1.1中和抗体価が上がると期待できます。またこの非常に少数のニ価ワクチン接種者の比較ですが、モデルナのBA.1-ニ価ワクチンの方がファイザーのBA.4/5-ニ価ワクチンよりも、BQ.1.1中和に対する効果が高かった
考慮すべき点は、この研究は対象人数が少ないので、例外的に中和抗体価の上がらない人の存在が隠れてしまっていることです

論文全体のブログ記事へリンク
プレプリントへリンク

7。コミナティBA.4/5-2価 接種後死亡

コミナティBA.1-2価接種後死亡として厚生労働省に報告された例
12月2日までで3例

コミナティBA.4/5-2価接種後死亡として厚生労働省に報告された例
12月2日までで15例

スパイクバックスBA.1-2価接種後死亡として厚生労働省に報告された例
12月2日までで1例

2022年12月2日までのオミクロン対応ワクチンの総接種数は24,933,103回

ソースは第89回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応 検討部会、令和4年度第14回薬事・食品衛生審議会薬事分 科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 2022(令和4)年12月16日 URL

コミナティBA.4/5-2価 の症例の詳細へのリンク

コミナティBA.4/5-2価 4回目3日後 87歳女性 基礎疾患等: 糖尿病、パーキンソン、脳梗塞後遺症、高血圧他。; 8/19にCOVID-19感染しラゲブリオ投 薬で治癒。他 リンク 1

コミナティBA.4/5-2価 5回目接種5分後 42歳女性 基礎疾患等: 高血圧症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群 リンク 2

コミナティBA.4/5-2価 5回目当日脳出血 81歳男性 基礎疾患等: 2009年悪性リンパ腫(現在治癒) 現病歴:腰痛、高脂血症、不眠症 リンク 3

コミナティBA.4/5-2価 5回目3日後脳出血 81歳男性 基礎疾患等: 2009年悪性リンパ腫(現在治癒) 現病歴:腰痛、高脂血症、不眠症 リンク 4

コミナティBA.4/5-2価 接種から7~9時間後(推定) 注射薬剤に対して異状死 27歳男性 基礎疾患 難治てんかん、心奇形術後、等 リンク 5

コミナティBA.4/5-2価 接種10時間後呼吸困難 80歳男性 基礎疾患等: 慢性心不全、慢性腎障害 リンク 6

コミナティBA.4/5-2価 接種翌日 高齢者 他の情報なし リンク 7

コミナティBA.4/5-2価 4回目4日後 79歳 女性 基礎疾患 アルツハイマー型認知症、高血圧症、糖尿病 脂質異常症、緑内障、慢性硬膜下血腫 リンク 8

コミナティBA.4/5-2価 5回目翌日 92歳 女性 基礎疾患 高度認知症、慢性心不全、骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折 リンク 9

コミナティBA.4/5-2価 4回目2日後不明 50歳 男性 基礎疾患 なし リンク 10

コミナティBA.4/5-2価 5回目当日風呂で発見された 86歳 女性 リンク 11

コミナティBA.4/5-2価 4回目3日後広範囲脳出血 50歳 男性 基礎疾患 脳動静脈奇形 リンク 12

コミナティBA.4/5-2価 4回目 50歳代 男性 基礎疾患 高血圧 リンク 13

コミナティBA.4/5-2価 5回目翌日 97歳女性 基礎疾患 動静脈シャント手術 11/16狭心症発現 リンク 14

コミナティBA.4/5-2価 4回目20日後心筋炎 55歳女性 基礎疾患 なし リンク 15


コミナティBA.1-2価 の症例の詳細へのリンク


コミナティBA.1-2価 5回目2日後夜間急性心臓死 71歳男性 基礎疾患等: 約30年間入院中の慢性期統合失調症 リンク 1

コミナティBA.1-2価 4回目2日後脳幹部出血 58歳男性 基礎疾患等: 統合失調症、不眠、高血圧 リンク 2

コミナティBA.1-2価 4回目1時間15分後呼吸が止まっていることに気づく66歳女性 リンク 3


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