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アルゼンチンの謎の肺炎はレジオネラ肺炎です。治療法あり

こんにちは。こちらは気持ち良い午後ですが、いかがお過ごしでしょうか?
謎の肺炎とし煽られていたアルゼンチンの肺炎の謎がとけました。感染症が多いですね

アルゼンチンの謎の肺炎はレジオネラ肺炎


アルゼンチンに謎の肺炎が発生したという報道が続いていましたが、9月3日にアルゼンチンのカルラ・ビゾッティ国家保健大臣は、Luz Médica療養所の患者と看護師から採取してマルブラン研究所に送った検体がレジオネラの陽性結果を示したことを確認したと発表しました。ビゾッティ国家保健大臣は、『レジオネラ感染症は治療法のある感染症で、患者たちはすでに治療を開始しし快方に向かっている。感染症の情報は迅速に公表し不安を煽らないことが大切です』と述べました

レジオネラ肺炎とは?
レジオネラ属菌の感染による肺炎です
レジオネラ属菌は60種類以上あり、自然界(河川、湖水、温泉や土壌など)に生息しています

レジオネラ症の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は、2~10日です

レジオネラ属菌の中でレジオネラ・ニューモフィラが肺炎をおこすことが多いです。レジオネラ肺炎は重症で、他に軽症のポンティアック熱もあります

レジオネラ肺炎についてもっと詳しく
全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難が見られるようになります。まれですが、心筋炎などの肺以外の症状が起こることもあります。また、意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢(ちゅうすう)神経(しんけい)系の症状や、下痢がみられるのもレジオネラ肺炎の特徴とされています。軽症例もあるものの、適切な治療がなされなかった場合には急速に症状が進行することがあり、命にかかわることもあります

レジオネラ属菌はどのように感染しますか?
感染様式はエアロゾル、吸引・誤嚥
感染源はクーラーの水・加湿器・循環式浴槽、温泉浴槽・河川など、汚染された腐葉土など

汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)の吸入などによって、細菌が感染して発症します。レジオネラ属菌はヒトからヒトへ感染することはありません
代表的なエアロゾル感染源は、クーラーの水、加湿器や循環式浴槽など
温泉浴槽内や河川で汚染された水を吸引・誤嚥して感染することがあります
汚染された腐葉土の粉じんを吸い込んで感染した事例が報告されています

対策
消毒 レジオネラ属菌は60℃では5分間で殺菌される
洗浄 循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24 時間風呂など)を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、浴槽内に汚れやバイオフィルム(生物膜。細菌で形成される「ぬめり」)が生じないよう定期的に洗浄等を行う

治療
マクロライド系、ニューキノロン系やリファンピシン等の抗菌薬で治療することができます。早期診断、早期治療が重要です
ただしポンティアック熱は、自然に軽快することが多く、抗菌薬なしで数日以内に改善することがほとんどです


レジオネラ属菌に対するワクチン
現在のところ、予防できるワクチンはありません

レジオネラ症は珍しい?
国立感染症研究所の報告によると、国内の発生例は一年中みられます。特に7月、9月に多く、温泉への入浴や旅行と関連してみられることがあります。また国内だけではなく、海外旅行中に感染したレジオネラ症の報告が増加し中です。直近10年間は、中国、韓国、トルコ、イタリア、台湾などでの感染が疑われる事例が多いということです。日本では2017年で約1700件

レジオネラ症の診断方法は?
医療機関では、培養、尿中レジオネラ抗原検査、遺伝子検査(LAMP法)や血液中の抗体検査などを用いて検査することができます。いずれかの検査が陽性となった場合にレジオネラ症と診断されます
ただし、尿中のレジオネラ菌体の一部(レジオネラ抗原)を見つける尿中レジオネラ抗原検査は、過去に感染したことがある人も陽性となることがあります

医師がレジオネラ症の患者を診断した場合に行うこと
レジオネラ症は、感染症法上の四類感染症に分類されているので、全数報告対象です。診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ます。発生届様式はこちら

臨床の写真をご紹介します

レジオネラ肺炎の胸部X線、胸部CT、気管支鏡

出典 Am J Case Rep. 2022; 23: e936309-1–e936309-8. Published online 2022 Jul 12. doi: 10.12659/AJCR.936309



右下肺野の斑状硬化像およびスリガラス陰影

胸部CTの軸位面では、右中葉(B)と下葉(C)に融合性およびエアブロンコグラムの兆候を伴う肺の混濁を示した。右上葉(A)と中葉(B)に "crazy-paving "パターンを呈し,一部の副葉を残して,小葉内中隔肥厚を伴う散在性地中ガラス混濁を伴うコンソリデーションが認められる.胸部CTの冠状面では、実質的な所見の分布(Dでは主に右肺領域)と気腹(矢印、D)が確認されている

気管支鏡検査で右上葉気管支の分岐部膜と中間膜に出血性液体を確認


これに対して、ポンティアック熱は、突然の発熱、悪寒、筋肉痛などの症状がみられますが、またそれらは一過性のもので、自然に治癒します

リンク集

国立感染症研究所 レジオネラ症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ra/legionella/392-encyclopedia/530-legionella.html

国立感染症研究所 我が国のレジオネラ症の発生動向調査における概要 2007.1.1~2016.12.31
https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/1674-disease-based/ra/legionella/idsc/idwr-sokuhou/7638-legionella-20171030.html

レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(平成15年7月25日厚生労働省告示第264号)



厚生労働省 レジオネラ対策のホームページ (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124204.html






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