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小児MIS-C UpDate 2022年12月

12月18日に日本のMIS-C の情報を追加しました

12月8日2022年に行われたCOCA 教育講演からの要点と、パイロン先生によるお知らせは、目次の米国におけるMIS-C発症は?からお読みください

オミクロン変異株以降に、日本の子どもの新型コロナウイルス感染経路が変わってきています

オミクロン株流行前 (2020年2月~2021年12月) では70%が家族内感染で舌が、オミクロン株流行後 (2022年1月以降) は家族内感染が40%に減少しました

さらにオミクロン株流行前 は家庭内感染のうち父または母からの感染が73.2%を占めていましたが、オミクロン株流行後は父または母からの感染が52.7%と下がり、同胞からの感染割合が7.8%から36.3%に増加していました

もう1つの感染経路の大きな変化として、オミクロン株流行前は感染経路が不明の割合が約1割だったのが、オミクロン株流行後は4分の1程度にまで増加しました

以上のデータは勝田友博先生 (聖マリアンナ医科大学小児科)
@第54回日本小児感染症学会総会 をもとに私が作図しました

MIS-Cとは?

日本小児科学会の説明

日本小児科学会ホームページの記載のスクショです。赤枠の中が小児多系統炎症性症候群 MIS-C の一般の方むけの説明になります。小児科学会の該当ページへリンク

日本における MIS-C の発症数は多いのか?

日本で実施されているMIS-C の疫学研究からのデータが、先日ニュースで流れました。これまで日本で発症したMIS-Cは64人です ニュースリンク
ニュース中の12.7、12.3は日付のように見えます。ニュースは11月に流れましたので2021年か、2020年と考えられます

新型コロナウイルスに感染した子どものうち、全国で少なくとも64人が感染から2から6週間後に心臓の働きなどが悪くなる「MIS−C=小児多系統炎症性症候群」と診断されていたこと、また64人のうち死亡者はなかったことが自治医科大学附属病院などの調査でわかりました

ニュースで流れた症例は2021年10月に発症した患児で、日本におけるオミクロン変異株流行よりも前です

オミクロン変異株になってから、感染者数がとても増加しています。ニュースでは、小児の新型コロナウイルス感染症が増加するとMIS-C も増える可能性はあると警告がされています

なぜなら、MIS-C は自宅療養では治療が足りないからです

それでは、保護者は現時点で第8波でこれまで以上に多数の子どもの感染者が出ると予想されるから、MIS-C も増えると予測され、どうしてもMIS-C を恐れて今すぐにmRNAワクチン接種をするべきなのでしょうか?

疑問に思うかたは続きをお読みください

米国における MIS-C 発症は?

2020年2月19日~2022年10月31日までに、アメリカで MIS-C の症例報告数 は 9,073例です。このうち死亡は 74 人でした。発症年齢の中央値は9才で、男子が60% でした。さらにアメリカにおいて MIS-C の発症にエスニティが関係します。多いのは、30%が非ヒスパニック系黒人の子ども、26%がヒスパニック系/ラテンアメリカ人の子どもです

[改善] 米国における MIS-C 発症数はオミクロン株になってから減少した

下のグラフは米国 CDC による21才以下のMIS-C (青線) とCOVID-19 (グレイ) 発症者数を表しています。最近のオミクロンBA.2、BA.4/BA.5に入ってから小児MIS-C になる人は激減しています

from CDC Data


[改善] 治療法が改善し、MIS-C 症例致死率と重症化率が減少した

データは第3波までしか出ていませんが、MIS-Cを発症した子どもが免疫グロブリン静注、ステロイド治療、免疫調節剤治療を受けれることが多くなり、それに伴ってICU 入室が減少し、死亡は発症者の2%から0.6%に抑えることができました。一つ前のグラフで各波を見ると、第3波でMIS-C 発症者が最多でした。デルタ波は第4波になります

from 米国CDC

CDC の全米サーベイランスシステムに報告された MIS-C の症例は 4,470 例です

  • 心機能障害、心筋炎、ショック/血管圧迫剤投与など、いくつかの心血管系合併症の頻度は時間とともに減少しました

  • 入院期間、人工呼吸、ECMO、死亡などの臨床転帰は、MIS-Cの最初の3回の流行期を通じて改善されました

[予想より良] 英国では予測値よりもMIS-C 症例が減少し続けている

英国の場合、第1波、第2波のサーベイランスの結果から、MIS-C を発症する子どもの数を推定しました。実際には下のグラフのように、予測値 (赤) よりも発症者数 (青) が少なく、現在もこの傾向が続いています

上のグラフの論文解説ブログ概要と結果へリンク 論文解説ブログ考察と結論へリンク

[変化] MIS-C の発症年齢が低くなっている

米国の MIS-C 発症者の 年齢 (中央値) はデルタ波まで8才、オミクロンBA.1波で7才、そしてオミクロンBA.2/BA.4/BA.5波で 5才 としだいに低年齢化しています。最もよく罹患する年齢層は、5-11歳の小児から5歳未満の小児へと変化しました

米国CDC のデータ

イングランドでもMIS-C の発症年齢の低年齢化が見られます (下図)


MIS-C 発症の低年齢化の理由

1. イングランドでは、大多数の子どもが感染してしまった
 アメリカの大多数の子どもも感染済みと考えられる
2. イングランドでは、1回ワクチン接種をした子どもが増えた
3. ウイルスの変化

MIS-Cの新しい定義

MIS-Cの臨床データの特徴が、以前よりも正確にわかったので、米国 CDCは2023年から使用する新しいMIS-C の定義を決めました。すぐ下の表は新旧比較です

上の表を日本語にすると (米国CDCの定義では21才未満)

by パイロン先生

CRP≧3.0mg/dL決定の根拠は、下図になります

Distinguishing Multisystem Inflammatory Syndrome in Children From COVID-19, Kawasaki Disease and Toxic Shock Syndrome

血液検査の血小板数とリンパ球数は下図です

Distinguishing Multisystem Inflammatory Syndrome in Children From COVID-19, Kawasaki Disease and Toxic Shock Syndrome

定義の多くは、MIS-Cは川崎病KDやトキシックショックTSSを比較した論文が根拠です [論文:Distinguishing Multisystem Inflammatory Syndrome in Children From COVID-19, Kawasaki Disease and Toxic Shock Syndrome 対訳ブログへリンク]要点腹痛、呼吸困難、ショック、低血圧、頭痛は川崎病よりMIS-Cに多い発疹、粘膜皮膚病変、結膜充血はMIS-Cより川崎病が多かった結膜充血はトキシックショックよりMIS-Cに多い発疹、ショック、低血圧はMIS-CよりTSSに多い血液学的検査値はMIS-Cと川崎病で有意差があるフェリチンやフィブリノゲンと比較して、CRPの上昇はMIS-Cを他の炎症性疾患と区別するのに有効である米国では、MIS-Cの小児患者、ICUへの入院や心血管系の病変を有する者の割合が増加した

まとめ

日本の保護者様へ

最後まで読んでくださいましてありがとうございます

おまけ Twitterから乳幼児の副反応集




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