【検証】RSの3か月の子どもを連れて旅行に行った家族の話はなぜ, バズったのか？
2023年7月, 子どもの感染症がとても流行しました.
僕も小児科医になって10年以上が経っていますが,
今年の流行は今まで1番ひどいです.
コロナウィルス, ヘルパンギーナ, そしてRSウィルスの流行が目立ちます.
そんな中, 7月の3連休中, あるTweetが大バズりました.
RS陽性の出生3ヶ月乳児。
咳と鼻水はあるが、哺乳は良好で自宅で経過見れそう。
シロップを処方し、自宅で経過観察を指示したところ、、、
「明日から、山口湖・富士山に行く」と最後にカミングアウトする。
ワイ：絶句。思わず、赤ちゃんを殺す気かと言ってしまった。
移動するだけでも体力が消耗するし、連休で医療機関へのアクセスが落ちる。
現在の小児医療逼迫の状況で他県に迷惑をかけるとか、無理。
「すでに宿は予約されていて、キャンセル料が、、、」と言い出した。
怒る気力も無くなったので、自己責任でと言って切り上げてしまった。やってらんねーよ😡
そしてその2日後, この続きと思われるTweetが
3ヶ月の乳児家族、旅行に行って戻ってきた。
旅行先から、「呼吸状態が悪くなった、、どうしよう」と連絡が来た。山梨の病院に受診するように説明したら、こっちに戻って診察してほしいと。
当院受診時、善明著名・顔色不良の状態でRS細気管支炎として症状が完成。呼吸不全状態。
挿管が必要になる可能性がある旨を両親に説明。
「先生、こんなになると思ってなかった。何で、説明してくれななかったの、、、」と泣かれた。
説明したよ、泣きたいのは、赤ちゃんだよ、、、。
これから、入院処置する基幹病院の先生方も泣きたいと思うよ、、、。
搬送後、先方から連絡を頂く。
・呼吸不全、循環不全でICU
・挿管管理（鎮静あり）
・循環管理（カテコラミン使用）
との事。
「3ヶ月のRS陽性ならその場で紹介すべきだった」と、きつくお叱りを受けた。
おっしゃる通り。何も言えない。
旅行に行かせてしまった自分も悪い。
残ったのは後悔だけ。
このツイートは300万回近く表示され, 1万件近い❤️が送られました.
もともとこのアカウントはフォロワー数百人程度のよくあるアカウントでしたが,
一晩にしてフォロワー1万人の巨大アカウントになりました.
【なぜこのTweetはここまでバズったのでしょうか？】
この記事ではその理由について考察してみたいと思います.
ここには子育て世代の苦労, 子育てを行う家庭に対する批判的な態度が混ざっているように思います.
このツイートがバズった理由は大きく分けて以下の通りだと思います.
1.ドラマチック展開
このTweetは, RSウイルスに感染した3か月の赤ちゃんの経過を書いています. 1歳未満の赤ちゃんで呼吸障害を起こすRSウィルスが流行中で, RSウィルスにかかった赤ちゃんがどんな経過をたどるのか, 多くの方の関心を集めたのだと思います. そして実際に赤ちゃんの症状が悪化し, 重篤な状態になったという展開は, まるで医療ドラマをみているかのように読者の関心を引きよせたのだと思います.
2.医師の悩み, 自責に対する共感.
このTweetの中では, 医師は赤ちゃんを守るために最善の対応をしようとしたにもかかわらず, 親が自己責任で旅行に行ってしまったことが明かされています. 医師は親を責めつつも悪い経過を辿ることになった赤ちゃんのために自らICUがある施設に頭を下げ, 赤ちゃんの治療に対して最善の行動をとり, 尚且つ, 判断が甘かった自分を責めています. この感染症の中で, なんとか子どもを守ろうとする小児科医のリアルな悩み, 苦しみを読者は感じられたのだと思います.
3.親の行動を批判する2つのグループ
ここからがこの記事で最も言いたいことなのですが, このTweetがバズった背景には医師の話を無視して旅行に行った“無責任な”親に対する批判があります. そしてその批判を行なっているのは2つのグループなのではないかと感じています.
1つ目のグループは今, まさに子どもの感染症に対応しながら, 我慢しながら生活している親御さんたちです. 日本は共働き家庭が増え, にもかかわらず貧困化が進んでいます. 多くの親御さんたちが歯を食いしばりながら, いろんなことを我慢しながら子どもを育てているのです. この感染症の流行で子どもを保育園に預けられず仕事の調整をしたり, レジャーなどの予定をキャンセルした方も少なくないはずです. そんな【我慢して子育てしている親御さん達】が, 我慢できず遊びに行った親御さんに対して強い怒りを向けているのだと思います.
2つ目のグループは, 元から子育て家庭・子育てを行う親に対して批判的な態度を向けているグループです. このグループは常に子育て家庭に批判的な態度を向けていて, 本来なら許容されてもいいはずの, 子どもの言動にも注意を向けてきます. 子どもが公園で走り回ったり, 声をあげたり, 初めての場所で泣いてしまったり,,, そんな子ども達を強く否定し, その子どもの親を非難するのです.
このTweetがバズること自体が, 日本は子育て家庭に優しくないな, と思います.
少子化を変えるためには,
・子育てしている親御さんの我慢・負担を少しでも減らす.
・子育てに批判的な態度の大人から子育て家庭を守る.
ことが必要なのだと思います.
ということで, 今まさにバズっているTweetについて検証してみました.
ここまで読んでくださってありがとうございました.
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