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#1 中村哲先生って? (2023)


1.はじめに

ご覧いただきありがとうございます。中村哲記念講座TAのS.Sです。今回のnoteでは2023年10月4日(水)に行われた第1回ガイダンスの様子をお届けしたいと思います。

中村哲記念講座とは・・・
九州大学医学部OBであり、長年にわたりアフガニスタンやパキスタンで医療や灌漑事業などの現地支援活動に尽力されてきた中村哲先生の人生と思想について学びます。講義やグループワークを通じて、中村先生が行ってきた活動の意味を理解し、私たちにできることは何かを考えてみたいと思います。

(シラバスより抜粋)

講座の概要の詳細はこちらからご参照ください。

2.ガイダンス

授業の序盤は授業の趣旨や授業概要、今後の予定などオリエンテーションと中村哲医師の基本的な経歴と活動された場所の歴史・地形などについて学びました。その後、ドキュメンタリー『良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの』について視聴しました。


≪アフガンが抱える問題≫

担当教員である鏑木先生が中村先生の言葉を紹介してくださいました。

「ペシャワールとアフガニスタンは、アジア世界の抱える全ての⽭盾が⾒える」

(中村哲『天、共に 在り』p. 118)

戦争、貧困、空爆、干ばつ、文化の折衝、感染症、差別・・・

様々な問題が中村先生が活動された現地には混在していました。

大きく分けると現地には3つの特徴があります。1つ目は「地政学的要衝」である点。ソ連のアフガニスタン侵攻、ソ連軍撤退後の内戦、同時多発テロによる国連制裁、など戦争が絶えませんでした。2つ目は「文明の断層線」である点。イスラム文化圏でありながら中国やインド、アメリカ、ソ連など諸外国の文化も参入し、宗教やイデオロギーの対立がありました。3つ目は世界の危機の兆候としての干ばつに代表される環境問題。最大の環境問題である地球温暖化による大干ばつが2000年中央アジアを襲いました。

そういった複雑な状況の中で、中村先生が「何を見て何を感じ何を考えたのか」、考えさせられました。問題は常に想定外で、不幸は一つずつ訪れるものではなく度重なる。自分1人には解決できない問題もあるし、すでに目の前にやらなければいけない仕事は山積している。今の私はそれを一つ一つこなすこと(=処理すること)で精一杯だけれど中村先生は違うように思います。複雑な状況の中で、目の前の不条理(≒問題)に何ができるのか。何がこの問題の”本質”なのか。そして、何をするのがその不条理に対抗する手段として有効なのか。そういう大切にしにくいけれど本質的な何かに真正面から向き合う姿勢の大切さを学びました。


≪『良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの』を観て≫

その後「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」(KBC制作,2020年)を観ました。この番組は同級生や現地ワーカー、ご家族など生前親交のあった人のインタビューをもとに構成されています。ハンセン病の治療など医療支援や井戸掘り、用水路事業など中村先生の活動などについても触れられています。しかし、それだけでなく、「中村哲」の核心に迫るためにインタビューを通じて重層的に「中村哲」を捉えているように感じる作品でした。実際の映像を通して「中村哲」を捉えることで、実際に何が起こっていたのかイメージしやすいものだったと思います。逆にいえば、想像力が働きやすく、内容を重く受け止め、終わった時には喪失感や放心状態?のような余韻が残っているように感じられました。何故中村先生の生き様が多くの人を魅了するのか、そんなことを考えることができる時間となりました。学生の皆さんは、それぞれ中村先生の「魅力」について気づいたようでした。特に「議論はいらない、行動あるのみ」という言葉と「一貫した姿勢」が印象に残った人が多かったようです。目の前で傷ついている人々、失われていく命、そんなものを目の当たりにした中村先生だからこそ、”議論”よりも”行動”を大切にされたのかもしれません。番組最後に長年看護師として氏を支えた藤田さんが中村先生の魅力について、数秒間沈黙して「変わらなかったから」と言葉を詰まらせながら答えられたシーンが印象的でした。この人は絶対困っている人を見捨てない、だから安心してついていけたと。それぞれ学生の心にとまったことを大切にしつつ、一つ一つ落とし込んでいきたいと思う時間でした。


≪良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの≫

ドキュメンタリー「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」(2020年5月29日放送、全48分)

中村医師と共に事業を行ってきた人々、友人など親交のある人々の証言を軸に制作した作品。番組中では中村医師の長女、秋子さんが、家族として初めてメディアのインタビューに答えており、過去映像や数々の証言、中村医師が自身の著作や、支援を受けるNGOの会報に遺した多くの言葉から、中村氏の人生を辿る構成となっている。 贈呈式では、満面の笑みをうかべる中村医師の写真が登場する印象的なシーンについてご紹介いただきました。

受賞歴 : 2020年 第26回 平和・協同ジャーナリスト基金賞 奨励賞
: 2020年 第27回PROGRESS賞 最優秀賞
(九州大学附属図書館から抜粋)

https://www.lib.kyushu-u.ac.jp/ja/news/58417


3.次回予告

以上が第1回の講義になります。TAを含め学生それぞれに中村先生の志・想いが自分の中に入っていく時間となったと思います。

第2回は担当教員の鏑木政彦先生から中村先生の略歴を説明していただきます。どうして、氏がパキスタンやアフガニスタンに行くことになったのか。なぜ井戸掘りや用水路事業に着手することになったのか。そういった一つ一つの「問い」が日々の轍となり人生の道が出来ていくと思います。個々の学生が異なる「問い」をもちながらも、グループの仲間と共に中村先生を読み解いていく姿勢を大切にしたいと思います。

最後までご覧になっていただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします。


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