血清クレアチニンと糸球体ろ過量(GFR)
こんにちは。腎臓内科医のDr.クロシバです。
前回は腎臓の検査では糸球体ろ過量(GFR)、尿蛋白、血尿の結果が特に重要というお話しをさせていただきました。
腎臓の採血項目で最も有名なのは血清クレアチニンですが、重要な3項目にはあえて入れませんでした。
その理由について、今回は解説させていただきます。
クレアチニンとは?
クレアチニンは筋肉から出る老廃物(ゴミ)で、腎臓で捨てられます。
腎臓の機能が低下すると、捨てられなかったクレアチニンが血液中に残り、血清クレアチニン濃度が上昇します。
血清クレアチニンの良いところ
「簡便」という一言に尽きます。
特別な準備(安静や薬剤投与)は必要なく、その場で1回だけ採血するだけで、1時間以内に大まかな腎機能を知ることができます。
測定も小型の機械で可能なので、院内で測定できるクリニックも多いです。
血清クレアチニンの困るところ
①筋肉量で正常値が変わる
クレアチニンは筋肉から出るゴミなので、同じ腎機能でも筋肉が多いほどクレアチニンの血中濃度が増加します。
したがって、筋肉が多い男性や若年の方は正常値を高く、筋肉量が少ない女性や高齢の方は正常値を低くしなければいけませんが、残念ながら採血結果に併記されている正常値には反映されていません。
②腎機能がどのくらいか分かりづらい
「あなたの血清クレアチニンは1.0です。」と言われても、今の自分の腎臓の機能がどのくらいなのか、分かる人はまずいないと思います。
前述のとおり筋肉量で正常値が変わるため、腎臓専門医である私でも自信がありません。
糸球体ろ過量(GFR)
血清クレアチニンの欠点を補うために使われるのが、糸球体ろ過量(GFR)です。
実際には推算GFR(eGFR)かクレアチニンクリアランス(CCr)という項目名で検査結果に記載されています。
GFRは血清クレアチニン値を計算式に入れ、腎臓のゴミ処理機能を100点満点で採点しているような数値です。
(腎機能が正常の1/2なら50点、1/4なら25点)
直感的で分かりやすく、過去の数値との比較も簡単です。
糸球体は腎臓内でゴミをこし出す網のような構造物のことで、この網がろ過(浄化)している血液の量を示すのが本来のGFRの意味なのですが、小難しいので詳しい説明は省略することにしました。
まとめ
採血で腎臓の機能を調べた時は、血清クレアチニンよりもGFR(eGFR、CCr)を見た方が良い理由を解説させていただきました。
ただし、GFRを計算するには血清クレアチニン値が必須なので、血清クレアチニンが重要であることは間違いありません。
GFRは、簡便で優秀な血清クレアチニンの長所をさらに伸ばす武器、のように捉えていただくと良いと思います。
おまけ
慢性腎臓病の啓発サイトです。
アンバサダーに元宝塚の檀れいさんが就任されました。
今回取り上げたGFRを基準として、慢性腎臓病が解説されています。
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