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「骨を鍛える」とは!?

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
中高年、特に閉経以降の女性の大きな問題である「骨粗鬆症」。

【骨が弱くなる要因】

そこまで行かなくても、骨密度が低い人もいるでしょう。
ホルモンバランスなどの影響はありますが、実は骨は筋肉の様に継続的な刺激が無いとドンドン弱くなっていきます。
無重力の宇宙に長期滞在していると、筋肉だけでなく骨も弱くなることは広く知られています。

【骨の強化に有用なこと】

その予防として有効なのが、重力刺激。ではなくて、振動や衝撃を習慣的に加えることです。全身の骨全てに与える必要は無く、特に下肢の大腿骨や脛骨などへの振動刺激、衝撃刺激が骨密度の強化に役立つ様です。

実際にこの性質を利用して、ハンマーで骨を叩いて修復液を分泌させ、治りが遅い骨折や、歪に修復された骨を治療するイリザロフ法という治療法がありますし、木工大工用のゴムハンマーで踵などを刺激する健康法もあります。

ゴムハンマーを使わなくても、座った状態で足組みをして踵を拳で軽く叩き、下腿から膝の方まで軽く叩くのは、中医学的にも脾経や腎経の様々なツボを刺激しますので、消化機能や浮腫み、生命力や生殖機能などの改善にも役立ちます。座った状態で軽く膝叩きをするのも有効ですし、立った状態で踵を上げた後にドスンと下ろす、と言うのを繰り返すのも良いです。

軽くジャンプしたりしても良いですね。動けるのであれば、歩行やジョギング、階段昇降などが出来れば、自然に骨に刺激を与えられます。

骨を鍛える意識で運動をする場合、衝撃吸収力の優秀な履き物は履かない方がより効果的ですが、いきなり衝撃吸収力のほぼ無いベアフットタイプの履き物や素足で運動をすると、関節や腱、足裏などを傷めてしまいますので、少しずつ体を慣らしながら行う様にして下さい。

現代人に骨密度が低い人が多いのは、高性能な履き物が普及し過ぎていることも、原因のひとつかも知れませんね。

健康のためにはこの様なやり方で十分かと思いますが、身体の超回復反応に合わせて刺激を強くしていくことで、武術で言う部位鍛錬の様に体を強くすることも不可能ではありません。とは言え部位鍛錬の目的は体の一部を硬くして武器化すると言うことではなく、痛みが少ない様に脱力して打ち込むスキルを体得する為とも言われてますけどね。

【「骨トレ」の可能性は凄い】

話はそれましたが、この様に意識して骨に振動や衝撃を与えることは、骨の強化だけでなく、認知症や糖尿病を予防したり、体脂肪を減らすなど、非常に幅広い効果が期待できることが分かって来ています。

骨は単純な鉄骨の様な固まりでは無く、生きた細胞でできていて、古い骨を破骨細胞が壊し、新しい骨を骨芽細胞が作る、と言う骨代謝が正常に働くことが、骨の維持にはとても大切です。

上記の様なことを行い、骨に刺激が加わるなどして負荷がかかると「もっと強い骨を作れ」という指令が出るので、骨芽細胞が活性化されます。骨芽細胞が元気に働いている時に、「オステオカルシン」や「オステオポンチン」などのホルモンが分泌されます。

オステオカルシンは、膵臓の働きを活性化しインスリン分泌を高める効果が報告されていたり、オステオカルシンを分泌できないマウスは、神経細胞の働きを高める神経伝達物質の分泌が低下し、逆に機能を抑制するアミノ酸が増えたという報告があり、正常な脳神経機能の維持に重要だと推測されています。また、老化マウスにオステオカルシンを注射で補充すると、蛋白質合成能が高まり、骨格筋量が増え、運動機能が回復したという報告もあります。興味深いですよね。

とは言え、頭部への振動や衝撃の刺激は、むしろ中長期的には認知機能や運動機能を低下させてしまう、と言うことも、ボクシング、アメリカンフットボール、サッカーなどのプロ選手の症例で明らかになっています。ブルブル振動するボードの上に乗る、と言うトレーニング器具もありますが、「脳を振動させる」ことの無いように気をつけましょう。

【腱や靭帯も実は鍛えられる】

骨が鍛えられる、と言うことにビックリした人もいると思います。

筋肉が骨に付着する部位近くの「腱」や、骨と骨を繋ぐ関節を支える「靭帯」などは、コラーゲン繊維が束ねられた構造をしていますが、成熟した腱や靭帯には、細胞がほとんど存在せず酸素や栄養素をあまり必要としないので、損傷が起きた時に治りにくい組織であり、鍛えることも出来ないと言うのが長く通説でした。事故やスポーツ外傷によって靭帯断裂が起こった場合、再建手術がされることがほとんどかと思います。

靭帯や腱などを構成する成分には、強固な保持に有用なコラーゲンだけでなく、弾性をもたらすエラスチンも含まれます。加齢と共にこれらの成分が減少し、関節の柔軟性を低下させる要因とされますが、骨折などによって膝をギプス固定した若者でも、靭帯の硬さや弾性は著しく低下します。このことには、エラスチンの減少やコラーゲンの変性が関係していると考えられています。

最近では、腱や靭帯は「一度失った柔軟性を回復出来る」と考えられる様になりましたが、「筋肥大には、腱や靭帯などの結合織の細胞が強くなることが必須である」と言う1970年代の研究から後には、コレと言った腱や靭帯に特化したトレーニング理論は確立されていません。

ですので、「腱や靭帯を強くするには筋肉を鍛えるしか無い」とも言えますが、軽い重量でより負荷を強く感じられる、スロートレーニングを行うことで、腱や靭帯の許容範囲を超えた負荷をかけずに筋肉を最大限に鍛えることが出来ます。

それとともに、腱や靭帯に伸び縮み刺激を強く与えられる、しゃがみ込んでジャンプする、腕立て伏せ(膝つきでも可)で体を浮かせて拍手する、と言う様な運動を継続的に行うことで、腱や靭帯が強化されるとも言われています。
その様な運動は、骨の強化に重要な振動や衝撃を与えることも出来ますので、一石二鳥ですよね。

とは言え、腱や靭帯は細胞成分が無いので、回復するのがゆっくりです。休養を十分に取らないと、長距離走選手にありがちなオーバートレーニングになり、逆に傷害を起こしやすくなるので気をつけて下さいね。

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