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U-Roy – Dread In A Babylon (1975)

 自身の顔が半分隠れるほどの煙を吐き出す挑発的なジャケットに包んだ本作の中で、U-RoyことEwart Beckfordはかつてないほどラスタ信仰について積極的に語るようになった。現在でもDJの元祖として崇拝される彼にとって、初めて本格的に世界に進出した『Dread In A Babylon』は非常に重要な立ち位置のアルバムだが、これは振り返ってみると少し面白い造りの作品でもある。
 背景にはBig Youth(彼はBeckfordのフォロワーでもある)の傑作『Dread Locks Dread』が同時期にヒットしていた影響があった。実際に本作の中で最もラスタマンらしい重みを感じさせる「The Great Psalms」では、「Big Youth Special」のずっしりとしたリディムを引用している。それでいながら、タイトルをそのまま拝借した「Dread Locks Dread」というトラックの中では、The Wailersの名曲「Rude Boy」風の明るいコーラスを取り入れている。そしてBeckfordの揚々としたトースティングがこの2曲が持つ雰囲気をより対照的なものにしており、実に興味深い。
 とはいえ、そういった周辺の事柄を差し引いても、本作はとても親しみやすく心に残る一枚だ。「Chalice In The Palace」のロックステディのリズムに乗った、まるで歌うようなトースティングはBeckfordの真骨頂といえる出来だし、「African Message」のうねるダブ・サウンドには、生粋のロック・ファンも思わず三歎するに違いない。
 ノスタルジックな「Listen To The Teacher」に続く「Trench Town Rock」は、本作で唯一Augustus Pabloを思わせるメロディカ(鍵盤ハーモニカ)をフィーチャーしたダブ・トラックだ。これも、同様にB面がほとんどダブだった『Dread Locks Dread』を思い起こさせる演出だが、どういった意図があったのは不明である。