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皮膚縫合のこだわり

そう聞くと、「金沢は皮膚縫合に対して思い入れのある手技をもっている」と思われるかもしれませんが、それは違います。

理想の縫合方法とはなんだろう??と思い悩む日々なのです。

皮膚縫合と一言でいっても…

  • 皮膚へのメスの入れ方による皮膚断面の違い

  • 皮下剥離の仕方(層、広さ、鈍的、鋭的)

  • 真皮縫合のかける深さ(キズの縁からの距離、糸同士の間隔)、皮膚を盛り上げる強さ

  • 糸の太さ・素材、針の形(丸、角、曲率、おおきさ)、持針器、ピンセットなどの器械

  • 表面の縫合の強さ、間隔、バイト(傷の線から針を通す位置までの距離)の大きさ

  • 縫合後の創部管理

ポイントがたくさんあるのです。

世の中には多くの形成外科医がおり、各々が自分流の縫合の仕方をもっています。それぞれにこだわりがあり、そのばらつきの幅が広い広い。

ただし医局(教室)によって傾向があります。どの門(もん)を叩いたかで形成外科手技の主なる考え方・流れが決まります。

わたしは千葉大学(昭和大学)、名古屋大学系列で形成外科医としての基礎を学んだので、修行した場所で縫い方が大きく変わるということを身を以て体験しました。

名古屋に行ったときに私の縫合が注目されたのです。「へえ、千葉ではそうやって縫うんだあ…」テストされているかのような緊張感でした。他の医師も「よその縫合の手技」は興味があるものなのです。

実際真皮縫合の深さの違いは大きなインパクトでした。さらに表の縫合の強さの違いも。仕上がりの皮膚の盛り上がりも、もうね、まったく違う。

もう21世紀ですよ。標準医療が喧伝されてどの医師からでも同質な医療を受けることができるのが現代です。

こんなにばらつくものなのかとただただ嘆息…

で一番綺麗に仕上がるのはどれか?仕上がりに影響を与えるのはどの手技、材料か?が一番重要なテーマになるのですよね。

それぞれに一長一短があり、絶対正解がなさそうというのが今の私の結論です。だから私は未だ思い悩むのです。よりベストに近い方法はないかな?と。たくさんの先生のやり方を見て、いいところ採りすべく模索しています。

誤解されているかもしれない、意外な事実

ちょっと怖い表現になりますが、下手な真皮縫合をするくらいなら真皮縫合はない方がましです。下手な表の縫合をするくらいならテープやホチキスの方がマシです。

細い糸ほど綺麗になるとは限りません。何針も縫合すれば綺麗になるとは言い切れません。

これ、悲しい現実です。

思いの外形成外科医は井の中の蛙です。自分のやり方が正しいと信じていますが、一歩外に出ると非常識な縫合だったりするのです。

慢心することなく、ブラッシュアップに努めなければいけません。自戒も込めて。

ちなみに下のイラストのような縫合の痕跡。いわゆる縫合が丁寧で上手な医師でも起こる現象です。

このテーマも一筋縄でいきません…

縫合の痕跡


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