ベンゾジアゼピン系薬剤と認知症リスクの関係

ベンゾジアゼピン系薬剤と認知症リスクに関する研究はいくつかある。
認知機能の正常なオランダの成人5,400人以上を対象にしたこの研究では、同薬剤の使用と認知症リスクの増加との間に関連性は認められなかったという。研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの増加を報告した過去の2件のメタアナリシスとは逆の結果であると述べている。しかし、脳の構造には長期的な影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。

研究の概要

調査対象と方法

エラスムス大学医療センターのFrank Wolters氏らが行ったこの研究は、認知機能が正常なオランダの成人5,443人を対象に実施されました。対象者の平均年齢は70.6歳で、そのうち57.4%が女性でした。研究では、1991年から2005〜2008年までの調剤薬記録を元に、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用履歴を確認し、その後の認知症発症との関連を追跡しました。

主な発見

  • 認知症リスクとの関連: 5,443人中、2,697人(49.5%)が過去15年間のいずれかの時点でベンゾジアゼピン系薬剤を使用していました。追跡期間中に726人(13.3%)が認知症を発症しましたが、薬剤の使用と認知症発症リスクの増加には有意な関連は見られませんでした。

  • 薬剤の種類別リスク: 抗不安薬と鎮静催眠薬の使用リスクも調査されましたが、いずれも統計学的に有意ではありませんでした(抗不安薬:ハザード比1.17、鎮静催眠薬:同0.92)。

  • 脳構造への影響: 脳MRI検査を基にした分析では、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が海馬や扁桃体の体積減少(萎縮)と関連していることが示されました。特に海馬の萎縮が顕著でした。

研究の意義と今後の課題

この研究は、ベンゾジアゼピン系薬剤が認知症リスクを直接的に増加させる可能性が低いことを示し、過去の研究結果と異なる見解を提供しました。しかし、脳の構造に対する影響が認められたため、長期的な使用には依然として慎重さが求められます。

研究者たちは、今後の研究でベンゾジアゼピン系薬剤が脳の健康に及ぼす潜在的な影響をさらに詳しく調査する必要があるとしています。

感想

もともとの認知機能の低下がある場合は依然としてリスクの可能性は高く
15年を超えた使用は潜在的なリスクはやはり高いかもしれません。今後も適正使用について意見がまとまってくると思われます。

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