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その59 栄養とリハビリテーション

 やせ細ってベッドに横たわる高齢者がいたとします。力なく、起き上がることも困難な状態で、トイレに歩いていくことなどできない状態であったとします。家族から「歩けないからリハビリをして歩けるようにしてください」という依頼が来ました。あなたはこの高齢者を立たせて無理やり歩かせようとしますか?

 もちろんこの高齢者に無理やり歩行訓練などする人はいないと思いますし、訓練もできないでしょうから成果も出ません。じゃあなぜこの高齢者に訓練をしようと思わないのか。元気がない、体力がない、栄養状態が悪いからです。しかし、残念ながら栄養状態が十分ではないのに訓練をされている人がいます。「訓練すれば良くなる」信仰でしょうか。

 栄養状態が良くないとリハビリテーションをやっても十分な効果は出ないだけでなく、かえって悪化するケースもあります。この考え方が、若林秀隆先生の提唱するリハビリテーション栄養の基礎です。

 訓練における1つの目標は筋力アップ。歩く筋力をつけたいなどと思うでしょう。しかし、十分な栄養量、タンパク量等がなければ筋力はつかないのです。

 リハビリテーションをするならまずその方の栄養状態を確認し、不足していたら栄養ケアを先行させなければなりません。残念ながら地域のリハビリテーションにおいては栄養ケアは不十分です。家族とケアマネジャーが相談し、「ではリハを入れましょう」ということで訪問リハが開始されます。しかし、栄養評価や栄養ケアが同時に入ることはほぼありません。

 病院においてはリハビリテーション栄養の概念は広まっているかもしれませんが、今後、地域でもその概念を広めていかなくてはなりません。

 栄養状態が良くないとリハビリテーションをやっても十分な効果は出ないだけでなく、かえって悪化するケースもあります。地域における栄養ケアとリハビリテーションのコラボ体制づくりが急務です。

  

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