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その64 リスク管理とGOサイン

 口から食べられなくなることがあります。心身的な問題として。一方で食べさせてもらえない方がいます。もちろん医学的判断のもとで。これだけの話なのですが、実は全く単純な話ではありません。ここに社会的な問題も含まれているのですから。

 医療者が、何のリスクもない方に「禁飲食」の指示を出すことはありません。口から食べることで何らかのリスクが生じる時、医療者の判断で「禁飲食」の指示が出ます。難しいのは、リスクは0か100かではないということです。リスクが20の時どうする?50の時は?80の時は?それでも口から食べることを許可できるのかどうか。

 極端な例では、確かに窒息や誤嚥のリスクもあるかもしれないというレベルで禁飲食の指示が出ているケースもあります。その結果、一生食べられなくなるという人は多くいます。要は医療者のリスク管理と裁量の問題です。特に病院では、リスク管理という名のもとに、極端な禁飲食も行われています。

 では、どのレベルだったら口から食べていいのでしょうか。全ては医療者の状況判断です。その方の機能、体調、生活環境、意欲などなど、多くの判断基準が存在します。例えば、かなりリスクが高い方であったとしても、ターミナル期で、本当に最後に一口食べたいと言われればGOサインを出すこともあるでしょう。全く同じ機能で、リスクも同じくらいであっても介護力の差でGOサインを出せないことがあるかもしれません。

 口から食べさせないのは神様ではありません。医療者のリスク管理と状況判断によるものなのです。医療職の保身のために禁飲食が出さていることは問題ですが、簡単な判断でもないのです。

 口から食べさせないのは神様ではありません。医療者のリスク管理と状況判断の結果です。だからこそ医療者はその方の機能だけでなく、周囲の状況を見極めて判断すべきです。

 

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