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ふざけたやつら

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書いたことさえ忘れていたりする文章です。
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2023年7月の記事一覧

時限爆弾の作り方

* ソリッドなブルースカイを真っ赤に染めたいと思ったその日、俺は時限爆弾になることを決意した。 ところで諸君は、人間が時限爆弾になることなんてできないと思うかもしれない。あるいは、先ほどの俺の言葉はなんらかの比喩であると考えるかもしれない。否。文字通り時限爆弾になることは可能なのだ。 方法は実に簡単。タウンワークを見れば、様々な現場で時限爆弾を募集していることがわかる。そこで俺は、募集欄に書いてあった電話番号に電話し、新宿の雑居ビルで面接を行うことになった。 「幻想は

ザンビアに行った日

* 永遠の万華鏡がある。光は上下左右に三次元的な曲線を描いて広がり、緑の中からピンクが、ピンクの中から黄色が生まれる。正面にあるのは、水の入ったグラス。それは遠くにあると同時に近くにある。グラスのふちの円形にこの世に存在したあらゆる「美」そのものが顕在していることに気がつく。意識は、液状のガラスの表面を滑るように明晰でありながら、複数の場所に同時に存在していて、すでに時間を超越している。目の前に巨大化した自分の足が迫る。もはや大小の感覚すら存在しない。存在しないと同時に存在

アイスクリームユニバース

* 「佐々木」 「何?」 「宇宙ってデカくね?」 「・・・そうだね」 完璧な絶叫と完璧な沈黙は、同じ音がする。仮に音というものを鼓膜に伝播した物体の振動と定義するのであれば、両者はともに皮膜の無限の動であり、無限の静である。肉体の中心から発せられる実存の叫びは、皮膚直下で反響を繰り返し、決して体外の空気を振動させることはない。それゆえ、人体は、沈黙の絶叫を閉じ込めた鋼鉄の檻と化し、常にその崩壊の予感に震えているのである。崩壊は、救いである。わずかな隙間が生じれば、一

はじまりはじまり〜

よう、きょうだい。眠れないのか。それなら、俺がお話を聞かせてやる。これから話すことは全て事実であり真実だ。真実を言うと殺されるとむかし誰かが言っていたが、俺は構わない。それを言っていたやつは、結局、運命に殺されて死んでしまった。 残念だけど、さっき言ったことは半分嘘だ。これから話すことは、事実ではない。言葉は、初めに自分があらわしていたものの記号としての役割に飽きて、余計なことまで語るようになった。やがて、自分の正体を偽造したり、全く違う名前を名乗ったりする大胆なやつまで現