見出し画像

メカニズムから,治療法を考える

図のようにアトピー性皮膚炎の皮膚にはいくつか「違い」があります.その違いに対する治療を考えると,治療というものがどこをターゲットにしているか,少し理解ができます.

第1に角質バリア機能異常に対して,とにかく保湿が必要なのはもうおわかりですね.

第2に皮膚の表面に細菌(黄色ブドウ球菌)が多くいるので,1日1回泡を使って洗浄することも大切だと思います.腸内の常在菌の正常化がアレルギー疾患に大切であることがいわれていますが,最近では皮膚の常在菌の正常化も皮膚アレルギーにとっても大切であることがわかってきました.洗浄が大切なのではなく,皮膚の環境を整えることが本質的には大切なのだと思います.

第3に肥満細胞(mast cell)から放出されるヒスタミンは,例えば蚊に刺されたときのような痒みを誘発します.それによる痒みを抗アレルギー薬(=抗ヒスタミン薬)は抑えてくれますが,アトピー性皮膚炎の痒みにおいては,ヒスタミンだけを抑えても効果が低いことがわかっています.


第4にアトピー性皮膚炎の病態の黒幕と考えられるのがリンパ球といわれる白血球の一つで,中でも2型ヘルパーT細胞と呼ばれる細胞です.アレルギーに関連する細胞で,その割合が多くなるとアレルギーが起こりやすくなります.これらの細胞を抑えるのが免疫抑制薬のシクロスポリン(ネオーラル)という薬で,痒みにかなり効果の高い薬です.外用剤としてはタクロリムス軟膏(プロトピック)が有効で,炎症のある程度根本の部分を抑えてくれるので,プロアクティブ療法に有用な外用剤です.


第5にナローバンドUVBやエキシマライトと呼ばれる光線治療は,表皮細胞,炎症細胞を抑えるだけでなく,過敏性を生んでいる神経線維(C繊維)の延長を抑える効果があり,弱めの光線療法を定期的に照射することで,バリア機能,炎症,痒みにじわじわ効いてくる,意外と有効性の高い治療法です.夏にじっくりこんがり日焼けすることは,アトピー性皮膚炎の肌にとってはいいことなのです.しかしながら,日焼けをして赤くなるほど強い紫外線を浴びると,皮膚炎は悪化し,また,しみ,しわなどの光老化につながるため,過度に日焼けをすることは,何もよいことがありません.


第6にステロイド外用剤ですが,これは炎症細胞,表皮細胞,毛細血管など様々な部分に作用し炎症を総合的に抑えるため,効果も高いのですが,不必要な部位に働くことでの副作用も生じてしまうわけです.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?