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雪月花

私だけが雪月花に取り残されている
各々が夏めく中で
私の手のひらにはかじかんだままの感触だけが
じんわりと私の心を蝕んでいる
花弁に触れても月明かりにかざしても凍てつく指先
私の心が取り残されていることに気づいた

春の暖かみを感じれないなんて。
なんて、そんなことあっていいわけないのに。


飴玉を舌で転がした日には隅々まで歯を磨いた
甘ったるさで夢の中でさえ息が出来なくなりそうだ、溺れたくない

君は夢でしか会えない人間になった
夢でしかお互いを想いやることが出来ない
なんて無様なのだろうか
絡まった慕情は、ただ記憶に夢に言葉に音に。
まとわりつくだけのフィルムにくっつき糸を引く飴玉のように。


私だって夏を、感じたい
爽やかな夏、きらびやかな夏
私にとって夏はいつも残酷だ
爛れるような暑さに吐き気を催す
孤独さながらの光景は見慣れた
揺れるアスファルトを1歩ずつ歩く
吐瀉物がそこら中に溢れかえっていても
私は私だけが可哀想な人間であり
私だけが可哀想な夏が今年も始まるのだ
他人の吐瀉物を踏みにじりながら足を取られながら
私は、前進に見立てた努力を披露する
私の夏は、そんな夏だ。

あれは入道雲なんかじゃない
私だけの涙雲だ。

苦しい、苦しい。

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