【声劇台本】曲がりカドはあとみっつ!【2:2:0】

台本利用規約


台本利用の前に、下記利用規約をお読みください。
よろしくお願いいたします。


【概要】


 ・所要時間:20分
 ・人数:男性2、女性2
 ※男女比は執筆時の想定です。指定するものではありません。

【登場人物】


 ・神様:実験好きの神様。ときどき暴走するが人はよい。
 ・助手:神の助手
     神を認めているが、受け入れられず見下す。
 ・運命の人:全然出会えない運命の人。あの手この手で会おうとする。
       ナレーションもあります。
 ・女子高生:いっけなーい遅刻遅刻系女子。出会えない。


【本編】

〇天界 神のラボ
   神様、モニターにかぶりつく
   助手、神様を後ろから見下す。
神様:うおおおお! ついに、ついに出会うぞい!
助手:やっとですか。随分と時間がかかりましたね
神様:ゆけ、そのまま、そうじゃ、そこじゃ!
助手:うるさいですよ神様。私の耳が悪くなったらどうするんですか
助手:黙っていてください。もしくはただひたすら謝っていてください
神様:お前は助手のくせにいつも言うことがひどすぎるんじゃ
神様:なんて言ってる間に! 見よ! とうとう曲がるぞ!
神様:曲がりカドを!
助手:この世界に残る曲がりカドはあと四つ。
助手:せいぜい頑張ってください。いずれにせよもうすぐ終わりです
神様:絶対成功じゃ! ここで成功するんじゃ!
神様:確率は収束する! さあ出会え! その先に運命はある!
   
     
運命の人(N):運命のいたずら。神の御業(みわざ)。
運命の人(N):人は、想像しがたい出来事や状況を前にすると
運命の人(N):様々な形でその畏怖を表現する。
運命の人(N):とりわけ、奇跡と称するような、およそ現実的ではない事象を体験すると
運命の人(N):運命や、神といったものを信じざるを得ない。
運命の人(N):この世界の神は今まさに、神の御業、運命のいたずらを仕掛けていた。
運命の人(N):すなわち、
運命の人(N):トーストをくわえて曲がりカドを曲がると、どのくらいの確率で運命の人に出会えるのか…という実験である。
運命の人(N):神の好奇心は、世界を巻き込み、一人の女子高校生が
運命の人(N):トーストをくわえ『いっけなーい、遅刻遅刻ー』
運命の人(N):と叫びながら数々の曲がりカドを駆け抜けることになった
運命の人(N):世界中に数多(あまた)ある曲がりカドを曲がり続け
運命の人(N):残すは、あと四つ!
運命の人(N):神様と助手は、彼女が曲がりカドを曲がるなりマンホールに落ちたことを見届けると
運命の人(N):深くため息をついた。
   
   
   助手は淡々と冷静にお願いします。神様との温度差が欲しいです。
神様   失敗…じゃと…
助手   その様ですね。もう無理でしょう。無意味です、無駄です、もう実験は終わりにしましょう
神様   まだじゃ! まだあと三回チャンスは残っておる!
助手   はぁ…、チャンス、ですか
助手   私はあの高校生の女の子が不憫でなりません
助手   神様のような変態の実験体にされてしまって。
助手   今後、彼女が生きているうちにどんなことをしでかしても、必ず天国にこれるよう手配しておきます。
神様   だからキミさ。わしの助手よね? わしを助ける手と書いて助手よね?
神様   どうして実験が失敗して落ち込んでいるわしを慰めるどころか
神様   追い込むような事を次々と。神様泣いちゃう!
助手   助ける手…、そうだったのですか。介錯(かいしゃく)を求めておいででしたか
助手   私としたことが気づくことが出来ず、お許しください。では、さっそく白装束の用意を
神様   待った待った待った。何でそうなるんじゃ。
神様   そこは優しく『神様、泣かないで、私の膝枕でお休みになって』とこう優しく
助手   セクハラです。最後の審判にかけますのでそこを動かないでください
神様   ゴメンて! ゴメン! 最後の審判はわしがかける側じゃから!
神様   わしが最後の審判されてたら陪審員たちも動揺しちゃって迷惑かけるから!
助手   ちゃんと私が助手として根回ししておきますので滞り(とどこおり)なく進みます
助手   ご安心ください。助手ですから
神様   優秀! 優秀な助手! もう判決まで用意されてそうじゃん!
神様   違うんじゃよ、今回の失敗をどう次に活かすかという話し合いをしたいのじゃよ
助手   それは断罪ののち、生まれ変わったらという話ですか?
神様   怖い!もうこの助手こわい! わし、ただ運命の確率を知りたいだけじゃのに!
助手   それが迷惑だというのです。
助手   人の子は、そんな神様のいたずらのために生まれてくるのではありません
神様   ぬっ…この…神様みたいなことを言いよって…
助手   この実験が始まってから、あなたの代わりに、どれだけ人の子らに福音を授けてきたと思ってるんですか
助手   人の子らは、もうあなたのことなんて忘れていますよ
神様   乗っ取り! 神の座が乗っ取られようとしている! 天界に下克上システムはないのじゃぞ!
助手   ちっ…とにかく話を戻しましょう
助手   これ以上神様と余計な話をしていると、本当にもどしてしまいそうです
神様   もうただただ無礼。
助手   いいからさっさと続きを話せ豚野郎。
神様   怖いですじゃ
助手   定時過ぎたので帰ります
神様   まって! わしが悪かった! 謝る! 戻ってきて!
   
 間
   
   
助手   それで、結局まだ続けるんですか
神様   確率の上ではもういつ出会ってもおかしくないんじゃ
神様   というより、とっくに出会ってなければおかしいのじゃ
助手   と、いうと
神様   何か、作為的なものを感じるのぅ…イカサマめいた、というのか
神様   とにかく、出会わないようになってるとしか思えんのじゃ
助手   確かに、これだけ試行回数を重ねたのに、一度も出会えないというのは
助手   いささか腑に落ちませんね
神様   そうじゃろう。とにもかくにも、残りの曲がりカドは三つか
助手   残りの三つ、特に希望が持てる要素もありませんが
助手   すぐに始めますか? 私としてはとっととこんな実験は終わりにして
助手   彼女の天国行き確定チケットを発行してから、有給取って遊びに行きたいのですが
神様   前半と後半の落差がすごい! 仕事はきっちりやってから休むあたり実にキミらしいのう
神様   しかし、今日は終わりにしようかの
神様   なぜ出会わないのか、ちと調べてみないとの
助手   そうですか。では、コーヒーをお持ちします
神様   帰らんのか? 定時は過ぎておるぞ
助手   私は優秀な助手ですので
神様   本当に助かるよ。ほっほっほ
   
 間
   
   
運命の人   (N)さて、神様の実験に付き合わされているとは知らない女子高生はというと
運命の人   (N)どうやら、これまでの実験を、夢の中の出来事と思っているようです。
運命の人   (N)おや、どうやら私も出番があるようです
運命の人   (N)それでは、また、すぐにお会いしましょう。あなたの夢の中で
   
 間
   
 女子高生はテンション高めの少女漫画第一話風です。運命の人は出来るだけ王子様風にお願いします。
女子高生   いっけなーい! 遅刻遅刻~!
女子高生   あの曲がりカドを曲がったら学校ね! このペースならぎりぎりセーフだわ!
女子高生   最近よく見る変な夢のせいで、目覚まし時計で起きられなくなっちゃった!
女子高生   もう、せっかく高校入るときに記念で買ったのに!
女子高生   でも、トーストくわえながら走って登校って、ちょっと漫画みたいかも
女子高生   この曲がりカドを曲がったら…運命の人とぶつかって…倒れた私にその人が…
運命の人   「大丈夫ですか、お嬢さん。失礼しました、私としたことが」
女子高生   「だ、大丈夫です。私こそ…急いでいて…ごめんなさい」
運命の人   「いいんですよ、さ、お手を…」
女子高生   「ありがとう、ございます…あ、チャイム!
女子高生   ごめんなさい! 私、学校へ急がないと! 遅刻しちゃう!」
運命の人   「待ってくださいお嬢さん、せめてお名前を!」
女子高生   なんてねなんてね! それでそれで学校についたらその人が実は転校生でー
女子高生   「あーあなたは今朝の!」
運命の人   「あなたは…よかった、また会えましたね」
女子高生   なんて素敵な笑顔で私の隣の席にきたりして!
女子高生   そんな素敵な曲がりカドよ! 私に運命の出会いをあたえたもう!
女子高生   いざ! 運命の曲がりカドを曲がったら!
女子高生   ま、マンホール? これ、落ちる…落ち、いや、いやあああああああああ!
   
 間
   
神様   まいったのう
助手   どうされましたか、神様
助手   参っているのは私です。謝ってください
神様   キミはほんにブレないのう
助手   助手ですから
神様   え、それ説明になってるの? …まあいいわい
神様   例の女子高生について調べてみたんじゃ
神様   今回の実験は、無作為に選んだ人の子が
神様   トーストをくわえながら曲がりカドを曲がったとき、運命の人に出会う確率を検証する
神様   といった実験じゃ
助手   無作為…? ニッポンの女子高生、セーラー服を着ている高校一年生というのが
助手   実験対象の絶対条件だとレポートの一ページ目にでかでかと書いてありますが?
神様   え、なんでそのレポート持ってるの?
助手   私、優秀な助手なので
神様   優秀な助手は絶対開けるなと書いてある上司の引き出しは開けないもんじゃよ!
助手   とにかく、その女子高校生がなにか?
助手   何があっても彼女は天国行きですよ
神様   いや、天国行きかはわしの決済が
助手   ハンコならもう頂きました。ご安心ください
神様   え、なんでわしのハンコもってるの?
助手   私、超優秀な助手なので
神様   超優秀な助手は上司のハンコをなんの許可も取らずに持ち出したりしないと思うんじゃよ!
助手   話を逸らさないでください。女子高校生の話を早く。
神様   この話はあとできっちりするからの
神様   その女子高生じゃが…
   
運命の人   (N)神様は何かに気づいたようです
運命の人   (N)一方そのころ女子高生はというと…
運命の人   (N)どうやら、こちらも何かに気づいたようで…
運命の人   (N)え、また出番あるんですか?
運命の人   (N)どうせまたちょいセリフでしょ。
運命の人   (N)本当に、いつになったら出会えるんですかこの子と
運命の人   (N)僕、一応運命の人、何ですよねぇ?
   
 間
   
 女子高生の寝言から始まります
   
女子高生   …おち…おちるのいや…いや…うぅ…
女子高生   はっ! …はあ…はあ…夢?
女子高生   おかしいわ…あれが…夢だなんて…
女子高生   リアル過ぎる…でもマンホールに落ちたのにこうしてベッドにいるってことは…
女子高生   ちょっと、いちから思い出してみようかしら
女子高生   起きて目覚まし時計を見たら、遅刻すれすれの時間で…
女子高生   慌てて家を飛び出して…お母さんがトーストをもって追いかけてきて…
女子高生   鬼ごっこだと思った私は、お母さんを振り切るために他人の家の塀をよじ登って
女子高生   裏路地から誰にも気づかれないように学校を目指して…
女子高生   さすがにお母さんはそんなのお見通しで、途中でつかまっちゃって…
女子高生   そこからはトーストをくわえながら、遅刻しないために学校へ向けて走って…
女子高生   途中の横断歩道でトラックが信号無視して突っ込んできたけど
女子高生   私はヒラリとかわして、そのまま学校へ向かって走ったわ
女子高生   そのあと、クラスメイトの男の子が自転車でやってきて…
運命の人   「お前、こんなとこで何してんだ! このままじゃ遅刻だぞ!」
女子高生   「うるさいなぁ! だから一生懸命走ってるんでしょ!」
運命の人   「し、仕方ねえな、後ろ、乗れよ。自転車なら、ぎりぎり、間に合うだろ」
運命の人   「しっかりつかまってろよ。お、落ちても、しらねえからな!」
女子高生   「いや、乗らないし。二人乗りとかダメでしょ。何考えてるの?」
運命の人   「え…」
女子高生   「じゃ、私急ぐから。本当に遅刻しちゃう。じゃあね!」
運命の人   「え、ちょっと…え」
女子高生   なんてことがあって…まったく、急いでる女の子呼び止めるとかほんと信じられない
女子高生   あれは彼女出来ないわ
女子高生   えっと、それから…信号待ちしてたら生徒会長の送迎用の車が横に止まって
女子高生   生徒会長に話しかけられたのよね…
運命の人   「やあ、キミは僕と同じ学校の生徒だね。このままでは遅刻してしまうよ」
女子高生   「せ、生徒会長…イケメンでお金持ちで勉強スポーツなんでもござれの完璧超人…」
運命の人   「あはは、面白い子だね。どう? 車に乗っていかない?」
運命の人   「キミにちょっと興味がわいたよ。是非お話ししたいな」
運命の人   「二人っきり、でね」
女子高生   「いや、結構です。私、上級生の方といると緊張しちゃって居心地悪いんですよ」
運命の人   「え…」
女子高生   「あ、私急ぎますので…本当に遅刻しちゃう! それでは失礼します!」
運命の人   「え、ちょっと…え」
女子高生   それからそれから、あといくつかカドを曲がれば学校だーっていうときに
女子高生   不良グループに会っちゃったのよね
女子高生   絡まれると面倒だから、さくっと倒したところに学校の番長って言われる怖い人がきて…
運命の人   「おい、てめえら…女一人相手によってたかって…たか…あれ」
女子高生   「ひっ、あなた、ば、番長さんですか?」
運命の人   「あ、ああ、俺が番長だが」
女子高生   「怖い! こわっ! さよなら!」
運命の人   「え、いや俺はただ女の子が不良どもに絡まれてたから助けてやろうと」
女子高生   「いや無理です、こっわ! 怖すぎ! ごめんなさい、さよなら!」
運命の人   「ええ…」
女子高生   それでやっとこのカドを曲がれば学校だーってときに…
女子高生   まさか曲がった先にマンホールがあって、その蓋が開いているだなんて…
女子高生   私ってなんて不幸なの
女子高生   …やっぱりおかしいわ。こんなにはっきりと覚えているのに…
女子高生   マンホールから落ちた後のことをまるで覚えていない…
女子高生   気が付いたらベッドの上だなんて…
女子高生   ひょっとしてこれ…神様が…何かの実験で私を使っていて
女子高生   その都度記憶を書き換えて夢のせいにしてるんじゃ…
女子高生   …なんてね
女子高生   そんなことあるわけないか
女子高生   あ! もうこんな時間! 早く寝なくちゃ!
   
 間
   
 ここからちょっとシリアスにお願いします
   
神様   こほん、で、その女子高生じゃが、選んだのはキミじゃったな
助手   はい。神様の趣味に合わせて無作為に選びました
神様   女子高生の経歴及び人生の行く末は確認したかの?
助手   …、いえ、そこまでは。無作為に、との話でしたので
助手   条件にあった人の子を、そのまま。
助手   この子に何か問題が? …まさか…この子…
神様   超優秀、というのは伊達ではないのう、気が付いたかの
助手   では、本当に…この子は…すでに悪魔に
神様   そう、この子はフラグクラッシャーじゃ!
   
 シリアスは終わりです
   
助手   …フラグクラッシャー……?
神様   …あくま?
 短めの間
助手   神様
神様   はいですじゃ
助手   もう一度ご説明願えますでしょうか
助手   このままではこのラボを、裁きのイカズチによって破壊しなければなりません。
神様   待つんじゃ待つんじゃ! 話をちゃんと聞かんかい!
助手   話は聞きました。神様の頭がやっぱりいかれていたので、今から地獄へ落ちるというお話でしたね
助手   書類はこちらに用意してあります
神様   何もかもちがう!
神様   人の子には生まれ持って様々な才能が与えられる。ギフトというものじゃ
神様   その中には、まれに、フラグクラッシャーと呼ばれるものが存在するんじゃ
助手   そんな話聞いたことありませんが
神様   これは超超トップシークレット。神様しか知らないことなんじゃ
助手   では、それを知ってしまった私も神だ、と?
神様   なんでそうなるんじゃ、どう考えても他言無用にとわしから頼まれる場面じゃろうが
助手   仕方ありません。とりあえず、先日ここに届いたお中元のフルーツ缶詰は、私が頂いていきます
神様   桃缶だけは! 桃缶だけは残して! お願いじゃから!
助手   とにかく、悪ふざけではなく、本当に人の子にそんなふざけたギフトを割り振っている、ということですか
神様   割り振っている、というと少し語弊があるんじゃが…
神様   そうさのう、変異型、というのか。最初は違う性質を持っていたのじゃが
神様   成長の過程でフラグクラッシャーに変貌してしまうのじゃ
神様   最初からわかっておれば、取り除いて別のギフトを贈るんじゃよ
助手   なるほど。彼女は類まれなる才能、ギフトを持っていると
神様   そういうことじゃな
助手   では、神様の言っていた「作為的なもの」というのは、このフラグクラッシャーのことだと?
神様   そうじゃ
助手   ではもうこの実験は失敗ですね。最初から、失敗は確定していたということですね
助手   神様がきちんと被験者のことを調べていれば、実験開始前に別の被験者に変えることもできたのに
助手   被験者の画像をみて、「可愛い、めっちゃタイプ、抱き枕にしたい」とかふざけたことを言って
助手   そのまま決定したせいで、この実験は失敗です。ざまあないですね
助手   早く謝ってください。私に。ほら。
神様   待つんじゃ助手よ! わしの話を聞いていたのか? 超優秀な助手よ!
助手   だから何度も
神様   フラグクラッシャーというのはそういうことなんじゃ
助手   なん、ですって
神様   わしもキミも、実験成功のフラグを折られていたんじゃ
助手   では、すべてはこの子が原因で…
神様   そういうことじゃ。じゃが、逆に考えればフラグクラッシャーとは
神様   折っても折ってもフラグ、つまり出会いや成功のきっかけが次々に集まるということじゃ
神様   一回でも、このフラグを成功させることが出来れば…
助手   出来れば…?
神様   フラグクラッシャーは消滅し、その反動でこれから起こるすべてのフラグが成功へとつながるじゃろう
神様   何をやっても成功するし、転がり込むのも幸運ばかり、とんとん拍子でこの世界を生き抜くじゃろう
助手   それは…最高じゃないですか
神様   そうはいかんのじゃ
助手   なん、ですって
神様   なに、そのリアクション気に入ってるの? だめじゃよパクリは
助手   パクッていません。オリジナルです。謝ってください。ぶっとばしますよ
神様   照れ隠しに神様をぶっとばす助手がいてたまるかい
神様   とにかく、なんでもかんでも上手くいって、思うがままに生きられる人生を誰が認めると思うんじゃ
助手   最後の、審判…
神様   そうじゃ。人の子は、幸福ばかりで生きてはゆけんのじゃ
神様   そんな人生の行き着く先は決まっておる。嫉妬、怨恨、彼女をとりまくのは負の感情だらけになるじゃろう
神様   それでも彼女には幸運が訪れ続ける。周りでどんな凄惨なことが起きようとも
神様   彼女だけはうまくいく。成功し続ける
神様   天国へ行ける、善人として生涯を終えると思うかね?
助手   それは…
神様   そんなことはありえん。残念じゃが、人の子は…恵まれ過ぎた人の子は
神様   天国へ行けるほど、善行を積めぬのじゃ
助手   神様…
神様   じゃから、生まれてからフラグクラッシャーになったものは…誰にも出会えず、何も成功もせず…
神様   ただ、長い時間を生きるだけになってしまうのじゃ
神様   今からわしがこのギフトを取り除いたとて、彼女の人生が好転したとしても
神様   それよりはるかに長い、悠久の時を地獄で過ごさねばならぬ…そんなことはわしには出来ぬ
神様   わしにはできぬのじゃ…
助手   神様
神様   なんじゃ、助手よ。慰めてくれるのかの。その膝枕で
助手   ひざまづいて、生まれてきたことを悔い改めながら私に謝ってください
助手   それはそうと神様。彼女は、大丈夫なんじゃないでしょうか
神様   何を言っておる。大丈夫なものか。人の子はみな
助手   いえ、私先ほど彼女の天国行きの確定申告書を提出し、受理されましたよ
神様   え?
助手   いえ、ですから、天国行きの確定申告書を受理されたので
助手   今後の人生で、彼女が、なにを、どうしようとも、天国行きは確定なのです。
神様   キミ! でかしたぞ! キミは本当に!
助手   私、最も神に近い至高の助手ですので。
神様   そのうち、本当に神の座につきそうで怖いですじゃ
助手   こんなくだらない実験のために、彼女の人生をもてあそんだのです
助手   天国行きくらい、ご褒美としては当然なのでは?
神様   その申告書が受理されたということは、彼女のフラグクラッシャーを回収し
神様   フラグというフラグを全て成功させられるということ!
神様   これはつまり!
神様   実験の確実な成功を意味する!!
助手   最初の目的はその確率を求めることだったのでは
神様   うるさい! 彼女が幸せになればそれでいいのじゃ!
神様   わしはいつだって今の気持ちに正直にいきてきたんじゃ
神様   さあ、実験を再開するぞ! 助手よ! 準備するんじゃ!
神様   わしの好奇心が、誰かの迷惑になんかなるわけがなかろう!
神様   いつだって、人の子らの為に! わしは実験を続けるのじゃ!
助手   準備整いました。やりますか?
神様   よし、始めるのじゃ! 世界に残された曲がりカドは…
助手   世界に残された曲がりカドはあと…
   
   
運命の人   (N)神様と助手は、女子高生を救う方法を見つけました
運命の人   (N)フラグクラッシャーを回収したのち、実験を再開したようです
運命の人   (N)さて、彼女はこのあとどんな人生を送るのでしょうか
運命の人   (N)運命のいたずら。神の御業(みわざ)。
運命の人   (N)人は、想像しがたい出来事や状況を前にすると
運命の人   (N)様々な形でその畏怖を表現する。
運命の人   (N)とりわけ、奇跡と称するような、およそ現実的ではない事象を体験すると
運命の人   (N)運命や、神といったものを信じざるを得ない。
運命の人   (N)人が、彼女を神に愛された者と呼ぶようになるのは、そう遠くないお話
運命の人   (N)運命の幕開けは、とある曲がりカドから始まります
運命の人   (N)その曲がりカドまであと…
   
   
女子高生   いっけなーい遅刻遅刻!
女子高生   なんで目覚まし時計ならなかったのー?
女子高生   高校入って買ったばっかななのに!
女子高生   とにかく急がなきゃ、えーと学校まで…
   
   
女子高生   曲がりカドはあとみっつ!
   
   
   
   
 了
   
   
   

いつもサポートありがとうございます。 頂いたサポートは、皆様に還元できるよう頑張りたいと思います。 が、お金は大事です。サポートする前に、もう一度よく考えて…