斜陽虐殺王破伝
斜陽高校校内は物々しい雰囲気に包まれていた。
校舎から錆鎖で吊るされた死骸を鴉共が啄み、血絵具で彩られた壁面に蠅がたかり、校庭に積み上げられた机椅子と死骸が燃やされ、大きな篝火を上げている。
同様に、裸に剥かれて股から口までを鉄骨に貫かれた上に四肢を捥がれた死体が無数に燃やされて地に突き立っていた。
「手前らの中に俺の蛮器を盗んだ奴がいる。名乗り出ろ」
裸のまま横一列に並ばされた十名の男女生徒と向かい合う〈鉄塊の嵬〉こと鷂組頭領の巨漢が怒鳴り声を上げた。
名乗り出る者はいない。
彼らの背後で群衆が殺せと囃し立てる。石を投げる者もいた。
やれ、と巨漢は傍に控える配下の者達に命ずる。命を受けた者達は無言で一人の生徒を取り押さえた。抵抗も虚しく彼は尻を巨漢の方に向けさせられた。
巨漢の皮膚の下で何かが這い、やがて隆起した異物が肌を突き破り露出した。
鉄骨である。
「名乗らないんなら」
悲鳴を上げる生徒に向けて、鉄骨を把握した巨漢は思い切り手を振るった。膂力が唸りを上げ、筋が畝った。
鉄骨が股に突き刺さり、内臓をかき分け頸椎を砕き頭蓋をかち割ってその先端が飛び出した。
「こうだ」
群衆が歓声を上げた。
後を継いで控えていた者達が処理を始める。一人が慣れた動きで山刀を振るい四肢を切断し、もう一人が口から酸を吐いて顔を潰し、残りが地面に死体を突き立てる。仕上げに一人の女が燐寸を顔の前に掲げ、可燃性の吐息を吐いて火で炙った。
「さて、残りは九人。これは俺ら鷂組の沽券に関わる。だから名乗り出るまでは全員火祭りにしていくから早めに名乗り出ることだな」
ここに救いはない。
だが。
「俺が盗んだ」
槍玉に挙げられた者達の背後、騒ぎ立てる群衆の中から一人、男が進み出る。右手に握られた鉄塊のような大剣が鈍く炎光を受けて明滅する。
男は左手の内から出した渾天儀を見せた。
「返して欲しけりゃ頭を下げな」
【続】
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