後楽園球場と父とのキャッチボール
小学6年生のタカシは、野球が大好きでした。学校の休み時間や休日には、友だちとグラウンドで野球をするのが楽しみで、プロ野球の試合を見るのも大好きでした。ある日、父が仕事から帰るなりこう言いました。
「タカシ、今度の日曜日に後楽園球場で試合を見に行かないか?」
その言葉にタカシは飛び上がるほど喜びました。テレビでしか見たことがない球場に行けるなんて、夢のようだったからです。
試合当日、父と一緒に電車に乗り、後楽園球場へ向かいました。駅を降りると、大勢の人が球場を目指して歩いています。球場が近づくにつれ、熱気が伝わってきて、タカシの胸は高鳴りました。
「これが後楽園球場……!」
タカシはその大きさに圧倒されました。スタンドの上に掲げられたチームの旗が風になびき、売店では応援グッズやお弁当が売られていて、球場全体が祭りのような雰囲気に包まれていました。
父と席に着くと、目の前には広大なグラウンドが広がっています。緑の芝生と赤い土のコントラストが美しく、そこを選手たちが軽やかに走り回っています。
試合が始まると、スタンドは一気に盛り上がりました。タカシも周りに合わせて応援歌を歌い、選手がヒットを打つたびに手を叩いて喜びました。
「やっぱり生で見る試合は全然違うね!」
タカシは父に言いました。
「そうだな。球場の雰囲気や応援の声も試合の一部だよな。」
父は笑顔で答えました。
途中、売店で買ったホットドッグとコーラを片手に、タカシは試合を見続けました。特に印象に残ったのは、チームのエースが投げた力強いストレート。捕手のミットに「バシッ」と収まる音が響き渡り、スタンドから大きな歓声が上がりました。
「僕もあんな速い球を投げられるようになりたいな。」
タカシがつぶやくと、父が少し考えて言いました。
「じゃあ、次の休みにキャッチボールをしようか。」
その言葉に、タカシは「本当?」と目を輝かせました。
試合が終わると、スタンドには夕焼けが差し込み、グラウンドが少しオレンジ色に染まっていました。球場を出るとき、タカシは振り返り、しばらくその風景を眺めていました。
「また絶対ここに来ようね。」
そう言うタカシに、父は頷きました。
次の日曜日、父と公園でキャッチボールをすることになりました。タカシは後楽園球場で見たエースのフォームを真似して、全力でボールを投げました。父もそれを受け取りながら笑って言いました。
「いい球だな。でも、もっと肩の力を抜いた方が速い球が投げられるぞ。」
そのアドバイスを受けて何度も投げるうちに、タカシは少しずつコツをつかんでいきました。
それ以来、タカシは野球がさらに好きになり、いつか自分も後楽園球場のような大きな球場でプレーすることを夢見るようになりました。
「球場で見たあのストレートを、いつか自分で投げてみせる。」
その思いはタカシの心に深く刻まれました。
教訓
「大きな夢は、小さな一歩から始まる。」
この物語は、後楽園球場での体験を通じて、憧れや目標を持つことの大切さを教えてくれます。