幾重にも堆積した水色の空、手を伸ばしてひと掴み、指解けど空虚、覆水この手に帰らず、重力に逆らえるのは、少女が不注意で手離した白い風船だけ、しゃがみ込んで栓を抜けば、渦を巻いて、世界が逆転する、鬱は溶けてゆく、ヘリウムや熱せられた煤は急速に落ちてきて、代わりに涙が空へ昇りはじめた。

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