ありふれた導入

 問題、というのは、現在と目標との誤差のことだ。例えば将来お医者さんに、パン屋さんに、画家になりたい。しかし現在、君はそうではない。君は僕が90分間話し続けるのを、うつらうつらしながら、未知との出会いに多少期待しながら、同時に諦めを抱いて受講する。そういうありふれた学生の一人でしかない。
 もしかしたらこの大学で、僕の講釈を拝聴するのが目標でした、なんて人は、いないと思うけれど、新しい目標が生まれた筈だ。生まれていないなら、新しい目標設定が目標だ。すると、目標というのは常に自身の目先にあって、問題というのは常に自身の内にある。飽きてきたかな、安心してほしい、この講義はあと132秒後に、西欧形而上学の歴史を取り扱う講義になる。それを君はもっと退屈に思うかも知れないけど、僕にとってはこれが仕事だから。
 
 
 

 「それじゃあなんですか、私は死んでるって言うんですか」

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