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心の奥の取材ノート

スタンさんのこと


交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い――
今もありあり思い出す、取材で出会った人たちのこと。
編集部

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 今年3月に死去したスタンレー・プラニンは、弊社どう出版の前身、合気ニュースの社長であり、本誌『道』の前身『合気ニュース』の初代編集長でした。何より、私たちが親しみを込めて「スタンさん」と呼ぶ彼は、家族同然のかけがえのない存在でした。 

 アメリカ人でありながら、合気道開祖・植芝盛平に心底魅了され、合気道のこと、植芝盛平のことを知りたい一心で一人研究活動を雑誌発行という形で開始します。それが1974年で、その最初の研究誌第一号がガリ版刷りの英語版『AIKI NEWS』でした。これが30号からは日英対訳版の『合気ニュース』となり、143号からは、内容もあらたに枠を広げ、『道』に誌名変更して、今日に至っています。

 スタンさんは、いつもまじめで、正直で、まっすぐでした。時にあまりに正直すぎて、損をしたり、誤解されることもありましたが、長い年月の中で身近にスタンさんと接した先生方は、誰もがその人柄を認め、愛してくださいました。

 スタンさんは、武道をやる人は国境・文化の壁を越え、親しく交流するべきと、友好演武会などさまざまなイベントを国内外で開催し、世界にコミュニケーションの場を提供しました。組織の壁をものともせず、日本人にはない大胆な発想で次から次に行動していくスタンさんに、周りはいつもハラハラドキドキ。でも「大丈夫、だぁいじょぶよ!」というスタンさんの言葉通り、いつも大丈夫になるので不思議でした。

 スタンさんは、盛平翁のほとんどの直弟子にインタビューし、実に700時間以上の膨大な資料を後世に残しました。脚色をせずに記録、保存すれば、次の世代が必ずや引き継いでくれるからと、それがスタンさんの信念でした。

 物事を史実、事実として捉え、ありのままの真実を伝えるというその姿勢は、本誌『道』の基本姿勢としてしっかり引き継がれています。スタンさん、本当にありがとうございました。スタンさんのこと、私たち決して忘れません。                                                     (編集部 木村/千葉)



                         ―― 季刊『道』 №192(2017春号)より ――

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