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心の奥の取材ノート

医師 日野原重明先生のこと

交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い――
今もありあり思い出す、取材で出会った人たちのこと。
編集部

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 日野原重明先生に『道』にご登場いただきたい、と願ったものの、現役医師として超多忙の先生が、受けてくださるだろうか……。その心配は杞憂となり、予想外にあっさりと取材の許可のご連絡をいただけたのです。ただし、お話を伺えるのは30分。ほとんどの取材が2時間を超える本誌の取材としては異例の短さで、たいへんに緊張したのを覚えています。

 聖路加国際病院の理事長室に案内されましたが、私たちの前に面会されている方がまだ日野原先生とお話しをされていました。インタビュー中にもお電話が入り、緊迫したお話をされて、またインタビューに戻られる。本当に分刻みに、一日一日をまっとうしておられるのだなと思いました。

 誌名の『道』にからめ、ご自身の歩む道について、

 「私自身は、戦争を経験しましたし空襲も経験している。またこれまでたくさんの癌患者を看取ってきました。ですから、私は、次の時代をつくる子供たちがどういうふうになればよいかということを、私なりに願いながら、そしてその子供たちにとって私の歩む道が参考になるように、あるいはモデルとなるように、自分を進めていきたいというのが今の私の思いなのです」

と語ってくださり、その言葉の通り、この7月に105歳でそのいのちを終えられるまで、生涯現役、探究心を衰えさせることなく、日本中の人々に道を示してくださいました。

 「『道』というタイトルはいいですね。人生の道ということになりますからね。道というのはひとつの生き方そのものですから。(中略)どんなに病気があって、いろんなハンディキャップがあっても、生きることに感謝しながら生きがいを感じるという、そういう気持ちがあればね、身体のなかに自然と免疫体ができて、抵抗力ができる。細胞自体が反応する、働きます。そういうように私は思います」

 そう締めてくださった日野原先生。手にした私たちからの取材依頼の手紙の封筒に、赤いサインペンで書きつけてあった「(取材を)受けてください」の文字。本当に自ら進んで受けてくださったのだなと分かり、胸がいっぱいになったのでした。                                            (千葉)

―― 季刊『道』 №194(2017秋号)より ――

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