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蓬莱同楽集3.5集(序文と目録)

はしがき

本書は「蓬莱同楽社」の活動記録集です。

蓬莱同楽社編『蓬莱同楽集』は、インターネット発の漢詩合同同人誌として二〇一八年に出発しました。以来三集にわたり、数十名以上の方々にご参加いただき、ここまで歩みを続けています。編集部は現在五名、日々鋭意取り組んでいるところです。

第三集を編集しているときのことです。ありがたくも数多くの方々が投稿してくださった結果、予定のページ数をはるかにオーバーしてしまうことに気づきました。編集部員(当時四名)も全員が作品を投稿していたのですが、載せるスペースがありません。

振り返ってみれば、これまでにも作業の過程で未掲載となった記事などがかなり多く出ています。たとえば毎号「あとがき」を付けていたのですが、入稿後に対談してイベント当日に配布する方式を採っていますので、まとまった記録がありません。

また、スタッフにも発表したいことがそれぞれ出てきています。それに、実験的に出発した同人誌ですから、第三集までの経験を今後どう活かすか考えるためにも、一度は立ち止まり、振り返ってみる必要があるでしょう。

未掲載の記事類を実際にまとめてみると、蓬莱同楽社の動向が一覧できるのみならず、インターネットの漢詩人集団の動向がかなり見えてくることがわかりました。いつもの合同誌ではありませんから、あえて『蓬莱同楽集』第四集とはせず、3.5集スタッフ集として一冊にまとめることにしました。

本書掲載の各作品・論述等の出典や掲載意図等については、各部の冒頭にそれぞれ添えました。
本書を通じて、インターネット上における漢詩界の動向を振り返り、蓬莱同楽社および広く私たち漢詩文を楽しもうとする人々がこれからどう進むか考えていきたいと思っています。来たるべき第四集そして今後の活動に向けて、みなさんのご意見を賜われれば幸いです。

二〇二〇年五月六日

蓬莱同楽社編集部一同

ネット公開版追記:本書は文学フリマ東京(2020/5/6)で同人誌として刊行する予定だったものです。折からのコロナ禍によりイベントが中止となったため、その日に合わせ蓬莱同楽社の経歴と展望に関わる部分を抜き出してネットに公開するものです。

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蓬莱同楽集3.5集 編集部作品・論述集

蓬莱同楽社の出発点 
蓬萊同樂集序
蓬莱同楽社の活動 
蓬莱同楽社 来歴
編集部作品集
(飯田周山)
(聽 雪)
(田姓雅韻堂)
(安原櫻岳)
蓬莱同楽集第一―第三集作品目録
蓬莱同楽集参加募集要項・参加者向け案内

蓬莱同楽社の展望
・漢詩合同集『蓬莱同楽集』あとがき(第一集あとがき)
・インターネット漢詩同人誌のいままでとこれから
・蓬莱同楽社、今までとこれから
・蓬莱同楽社を結成してから(※)

編集部員論集
・インターネット上における漢詩文実作の動向について
・インターネット漢詩界の最近の動向について
・奈良・平安期の日本漢詩について 第一回 小野篁(※)
・黄遵憲の詩を鑑賞する(※)

あとがき 

ネット公開版注:(※)はネット非公開です。今後冊子として刊行する際に掲載する予定です。

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蓬莱同楽社の出発点
蓬莱同楽社の基本コンセプトは「楽しむこと」にあります。このコンセプトを明示した一文を掲載します。 

蓬萊同樂集序
余頃日讀一書曰、孟子說齊王、獨樂樂與人樂樂孰樂、曰不若與人、不若與人、實爲游賞歡娛斷案、凡雪月之吟賞、山水之游覽、有與人杖屢徜徉之閒、談笑唱和、則不覺倦厭之色、又曰、不獨游賞歡娛、人生之事皆然、
至矣古人也、余每讀此文、感嘆不能措也、嗚呼非同樂何人從之乎、然近人大患文運衰微、或爲懸河之辯、或著萬卷之書、以欲誘掖少年、雖然中心憂悶、故往往使少年曰欲誘掖少年也、少年不樂而亦頗困惑、是非本末轉倒何也、老人憂愁少年煩悶、誰人從之哉、
顧前賢也、讀書之士頗多、何也、是讀書自有樂故也、所謂書中自有千鐘粟、是也、勤向窗前讀、天地推步、人情所暢、粲粲如而眼前髣髴矣、其樂也何窮有之矣、有喜樂而欲頒之、亦人情之所然、故相逢而各暢其情也、既有言必有聞、故偕樂不窮也、是非同樂何也、
丁酉仲夏、余嘗問曰如欲作詩合集何、數名相應、依同年晚秋、告版行之也、無慮十餘名參集、或寄詩、或題書、或校閱、以成此集、光榮之至、同樂之極也、因名蓬萊同樂集、以頒之同人云爾、

戊戌晚春      
南望樓主人 識
余、頃日一書を読みたるに、曰く、「孟子、斉王に説きて、『「独り楽して楽しむと、人と楽して楽しむと、孰れか楽しき」。「曰く、人と与にするに若かず」』と。『人と与にするに若かず』、実に遊賞歓娯の断案たり。凡そ雪月の吟賞、山水の遊覧、人と杖屢徜徉する有るの間、談笑唱和、則ち倦厭の色を覚えず」と。又た曰く、「独り遊賞歓娯のみならず、人生の事皆然り」と。

至れるかな古人や。余、此の文を読む毎に、感嘆措く能はざるなり。嗚呼、同楽に非ずんば何人か之に従はんや。然るに近人、大いに文運の衰微を患ひ、或ひは懸河の弁を為し、或ひは万巻の書を著し、以て少年を誘掖せんと欲す。然りと雖も中心憂悶、故に往往にして少年をして「少年を誘掖せんと欲す」と曰しむ。少年楽しまずして亦た頗る困惑す。是れ本末転倒に非ずんば何ぞや。老人憂愁、少年煩悶、誰人か之に従はんや。

前賢を顧みるや、読書の士頗る多し、何ぞや。是れ読書自づから楽しみ有るが故なり。所謂「書中自づから千鐘の粟有り」、是れなり。勤めて窓前に向ひて読めば、天地の推歩、人情の暢ぶる所、粲粲如として眼前に髣髴たり。其の楽や何ぞ窮まること之れ有らん。喜楽有りて之を頒たんと欲す、亦た人情の然る所なり。故に相ひ逢ふて各おの其の情を暢ぶ。既に言有れば必ず聞く有り。故に偕楽窮まらざるなり。是れ同楽に非ずんば何ぞや。
丁酉仲夏、余、嘗みに問ふて曰く、「詩の合集を作らんと欲さば如何」と。数名相ひ応ず。依つて同年晩秋、之を版行するを告ぐ。無慮十余名参集し、或ひとは詩を寄せ、或ひとは題書、或ひとは校閲、以て此の集を成す。光栄の至り、同楽の極みなり。因て『蓬莱同楽集』と名け、以て之を同人に頒たんとすると云爾。 

蓬莱同楽社の活動
蓬莱同楽社の活動は、同人誌『蓬莱同楽集』を中心に多岐に及びます。ここでは、参加者多数のため第三集掲載を見送った編集部員作品と、参加者の様子を示す記事として、「蓬莱同楽集第一―第三集作品目録」ならびに『蓬莱同楽集』第三集の参加募集要項・参加者向け案内を掲載します。

蓬莱同楽社 来歴
二〇一八年
五月頃 蓬莱同楽社編集部結成
六日  漢詩合同誌『蓬莱同楽集』第1集刊行(南望楼主人名義)頒布
於 文学フリマ京都
一二月二六日 漢語中古音に親しもうの会(講師:Mag462さん)
於 東京秋葉原

二〇一九年
一月二〇日 漢詩合同誌『蓬莱同楽集』第2集刊行・頒布
於 文学フリマ京都
古典に親しもうの会 対談:六畳院さん(歌人・冷泉流)
 酔翁(蓬莱同楽社)
於 出町座
九月八日 漢詩合同誌『蓬莱同楽集』第3集刊行・頒布
於 文学フリマ大阪
一〇月二七日 蓬莱同楽社(関西)雅会
於 富永屋(京都府向日市)
二〇二〇年
一月一九日 既刊頒布 於 文学フリマ京都
三月 二〇一九年度『乙訓文雅』作品審査に参与
五月六日 漢詩合同誌『蓬莱同楽集』第3.5集スタッフ集刊行・頒布
於 文学フリマ東京 ※コロナ禍により頒布中止
九月六日 漢詩合同誌『蓬莱同楽集』第4集刊行・頒布(予定) 於 文学フリマ大阪

以上

表紙画像著作権表示:『芥子園画伝』146・148頁
(日本古典籍データセット(国文研所蔵)CODH配信)



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