「Body-code.138」第2話
○(OP)歌舞伎町スラム・ラーメン屋
ミナト「大将、先生のお世話、いつもワリィね」
大将「いや、世話んなったからな」
大将「Aセット、3つ」
レン「当分ないぞ。心して食っとけ」
○(トビラ)タイトル「Body-code.138」「第2話 星の輝き」
○ラーメン店・店内
ミナト「火星たって、どうやっていくんだ?」
オキシラ「(色っぽくポーズ)イーロン・マスクを誘惑?」
レン「フッ」
オキシラ「むっか! アタシだって……!」
レン「勘違いするな、お前は魅力的な女だ」
オキシラ「(ドキッ)え……」
レン「だが、そんな時間はない」
キャスター「昨夜未明、都庁で爆発があり、治安維持管理局局長の兼房十三氏が亡くなりました。反政府組織による関与が疑われており、現在、以下三名の非市民が指名手配されています。発見次第、当局へご連絡を――」
レン「安全なところまで逃げるのが先だ」「大将、ごちそうさま」
大将「これでよかったのかい」
大将「街区の皆で出し合った、足のつかねぇチケットと偽造パスポートのデータだ」
レン「感謝する」
ミナト「じゃ、先生をヨロシクな!」
オキシラ「また来るから、それまで潰れないでね!」
大将「……ここも、どんどん客が減っちまうなぁ」
がらがらの店内。
それだけネズミ狩りで客が少なくなった。
○首相官邸・総理執務室
T「首相官邸・総理執務室――」
都知事「も、申し訳ございません」
首相「……政治家モードで話すの、辞めましょうか」
都知事「え」
首相「聞きたいのは、今を取り繕う謝罪の言葉ではなく、人が命を懸けて絞り出す今後の対応についてです」
都知事「そ、それは無論、既に警察と協力して――」
首相「それがあなたの命懸け、ですか」
都知事「(ごくり)……」
首相「都知事、なぜ、我々認定市民がドッグと呼ばれるか、その理由をご存じで」
都知事「権力の番犬と蔑まれているためかと」
首相「確かに。我々は非市民(ネズミ)の不法を裁き、認定市民の生活を守るべく働いています」
「そう、犬は飼い主に忠実な生き物……ならば果たして、その飼い主とは一体誰のことなのでしょう」
都知事「(怯え)――」
首相「知事や首相、大統領ですら、あの方を失望させることは許されない」
首相「命懸けとは言葉だけでは伝わりません。犬は忠誠なくして生きられないのです」
○空を飛ぶ旅客機
○同・内
オキシラ「すっごーい、貸し切りじゃーん☆」
ミナト「つか、なんで誰も乗ってねんだ?」
レン「……嫌な予感がする」
ミナト「は?」
レン「立て、急ぐぞ」
ミナト「おい、どこへだよ」
レン「操縦室だ。パイロットを代わってもらう」
ミナト「いや、代わるって、操縦できんのかよ?」
レン「いちいち聞くな。説明している暇がない。これ以上高度が上がれば彼らが脱出できなくなる」
ミナト「(戦闘態勢で)もう手遅れみたいだぜ」
オキシラ「(同じく深刻な顔)……」
レン「お役所にしては仕事が早いな」
謎の男「ハイジャックは重罪ですよぅ?」
レン「ほう、殺人はいいのか」
謎の男「重罪人に協力した者は等しく重罪ですからぁ!」
「さあぁ! 権力に盾突く反逆者の皆さぁんヌッ! 死刑執行の時間で――」
オキシラ「(異能力発動状態)ダッル、話長っ」
ミナト「(同じく)パワハラ確定。コンプラ違反で死刑な」
ミナト、オキシラ、レンM「刺青回路(バディ・コード)――」
刺客「私のコードはクマムシの能力を引き出す特注品です」「この程度の攻撃、地上最強の生物クマムシには通用しませんがナニかぁ?」
レン「そうか、地上以外も試してみるか」
刺客「――」
× × ×
× × ×
刺客「くっ、気圧が……機体が上昇していくだとぉぉぉぉ!?」
刺客「あははははっ! なぁ~んて、焦るとでも思いましたぁぁぁぁ?」
ミナトM「なんか、ウザくね?」
オキシラM「ウッザ」
レンM「同意」
刺客「高度10kmより上へ行けば酸素がなくなるんですよぅ? 飛行機の燃料は燃えず、エンジンは回らなぁぁい!」
「ハァイ! 手間が省けましたぁ! 墜落墜落墜落ぅ! でもクマムシ、秒速728mの衝撃にも耐えられるぅ! 墜落しても生き残るぅぅぅぅ!」
オキシラ「あっそ。別に作ればいいだけだし」
刺客M「液体酸素――」
○旅客機がぐんぐん上昇していく
○旅客機の中
刺客「自殺覚悟で、私を宇宙空間へ放り出せば殺せるとでもぉ? ククク……クハハハッ……! ハッ、ハハッ……ハァハァハァ……!」
オキシラ、ミナト、レン「――」
刺客「ハァァァァイ! 残念でしたぁぁぁぁ! クマムシは死にましぇぇぇぇんヌッ!」
「【乾眠】と言ってですねぇ、危機的状況に陥ると休眠状態に入りまぁす! そうなれば、-273度の超低温でも、150度の高温でも、真空や放射線でも、無酸素でも、無摂食、無摂水でも! 決して死なない不滅の存在となるのでぇぇぇぇす!」
「おバカさぁぁぁんヌッ、死ぬのはあなたたちだけでしたぁッ!」
オキシラ、ミナト、レン「――ッ」
N「ムーンフェイス 宇宙空間など重力が微小になると体液が上半身へ移動する症状。結果、脚は細りバードレックとなって顔面がひどくむくみ、血液が沸騰する」
オキシラ、ミナト、レン「がぁっ、ハァ、ハァハァハァ……」
刺客「フッ、飛行機とロケットは似て非なるものです。宇宙服もなく大気圏を抜ければ……フハッ、もう酸素を生み出す力も残っていませんかぁ? 能力を燃料に使いきったのは悪手でしたねぇ!」
ミナト「……う……うううぅ……」
刺客「ハイ無駄ぁぁぁぁ! 如何に水素の能力でもここは宇宙! 酸素がなければ爆発しませぇぇぇぇんヌッ!」
ミナト「……なら、あれは……なんで燃えてんだ……よ……」
刺客「は」
ミナト「酸素もねえ宇宙で、一等強く輝いてんじゃねえか……」
刺客「……太陽……?」
「(ハッ)……ま、まさか……」
ミナト「水素は宇宙で一番初めに生まれた元素だ」「そして、酸素がなくても巨大な熱量を生み出す……そう、星々の輝きをなッ!」
男「水素核融合――!?」
「や、やめて……それは反則、いくらクマムシでも――」
ミナト「ハァァァァァァァァ――ッ!!!!」
○荒れた砂丘
ミナト「便利でいいよなー、レン兄の炭素って」
オキシラ「チートが過ぎる☆」
レン「本来、旅客機をコーティングして即席のロケットにするつもりだったのだがな……どこぞの火力馬鹿が破壊するから」
ミナト「(バツが悪い)ハイハイ、悪かったよ!」「つうか、どうやって火星までいくんだよ?」
オキシラ「んー、それ以前? 正直、詰んじゃってね?」
レン「……」
(続く)
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