水のラベル
初稿 2023年9月6日 (画像は仮の文字による)
著者 douki
人は、よりよいものを求める。
なぜ、安全で安い「水道水」を飲まずに、高い水を買う人がいるのか?彼らは、水道水の安全性を知らないのか?
[image(水道水と自然水) ]
マーガリンは危険なのか?もしマーガリンが危険だとして、それを選ぶ人がいるのはなぜか?彼らは、マーガリンの危険性を知らないのか?
[image(マーガリンとバター)]
似たようなものが並んでいたとき、人は、それらを比較して、自分にとってより良いものを選ぶ。
食べ物の価値を決めるのは何か?
食べ物の価値を決めるのは、安全性、見た目、おいしさ(味、香り、食感、…)、機能(健康効果、美容効果、…)、値段、など。
見て、直ちに分かるのは、見た目、値段。食べて、直ちに分かるのは、おいしさ。安全性や機能は、広告を頼りにするしかない。
安全性や機能の広告
ある食品の安全性や機能を宣伝するためには、その商品が、他の商品よりも優れた安全性や機能を持つと言う必要がある。
そのためには、他の食品の安全性や機能と比較したり、そこに疑問を投じる必要がある。
さらに、それを信じさせるだけの説得力ある資料が必要になる。
[image(皿の上の機能性ヨーグルトとただのヨーグルト) 広告が無ければその機能を感じることはできない]
[image(水素水) 安全性や機能に関する広告の中には、こじつけやでっち上げ、他の商品への難癖に近いものもあるかもしれない]
自然と安全
化学物質は、人間による環境汚染を連想させる。手つかずの自然は非化学物質、ひいては、安全や健康を連想させる。
[image(水道水と自然水) 2つの広告、どちらも安全性や健康を訴える]
[image(自然水のパッケージによくある山の絵) 沢の水は綺麗?実際には、多くの病原菌がいる。そのため、濾過、加熱、など多くの処理を経て商品になる]
[image(水道局による浄水場の説明)]
自然から連想する安全性と、科学的調査・処理から連想する安全性。どちらをより安全に感じるか、それは広告による。
危険の価値
バンジージャンプは危険だ。それでもやってみようとする人が後を絶たないのはなぜか?
日本では、年間1~3人ほど、ふぐ毒で死んでいる。それでもふぐを食べる人がいるのはなぜか?
ふぐと同じ姿形・味も同じな、無毒の魚がいたら、ふぐはこれほどまでに特別な魚になり得たか?
ふぐは、古くは、高級魚としてではなく、度胸試しの魚として珍重された。
[image(ユッケ) 代え難いおいしさや好奇心の充足は、危険の見返りである]
ふぐの価値
ふぐの価値は、そのおいしさ、価格、毒性である。
ふぐは美味い。
ふぐは高価だ。
高価な訳の一つに、ふぐ毒処理の手間がある。
高価なことは、良いものを連想させる。それは、味の良さに留まらず、高い安全性も連想させる。
ふぐは致死性の毒を持つ。
この危険性は、ふぐを食べた人に特別な経験を与える。強い毒性は、ふぐの価値の一つである。
食べて応援
[image(食べて応援) この標語は、対象のいかなる価値も伝えない。人の情や気紛れを頼りにした募金活動に近い。]
もし、それを食べる安全性について何らかの懸念がある、もしくは、あると信じられているにも拘らず、「食べて応援」することを求めるのならば、その食べ物はバンジージャンプやふぐと同じ価値を持っている必要がある。
風評
日本人の中には、実際の製造工程を見ていないにも拘らず、生産地などの国名から次のような連想をする人々がいる。
「中国」 → 低級品、不味い、危険、不衛生、安価、安かろう悪かろう
「日本」 → 高級品、美味い、安全、衛生的、高価、量より質
「アメリカ」 → 農薬、ホルモン剤、着色料、質より量
[image(日本産のラベル) 外国の人々は、日本産という文字にどんな印象を持っているのだろうか?]
まとめ
いかに技術と労力を掛けているか、いかに安全なのか、誠実な調査と比較を土台に、その物語を劇的に伝えることができれば、ALPS処理水はふぐになるかもしれない。
[image(ALPS処理水にまつわる政府関係者らと漁師ら) 生産者の理解を得ることは、消費者らに対する安全性の広告にはならない]
どうやるか、どう宣伝するかによって、海産物に留まらない、日本産、その文字が与える安全性に関する印象を悪くすることもできるし、また、良くすることもできるはずだ。もちろん、海へ放出することが唯一の解決策、と言うわけではない。
[image(たまごかけごはん) 本来、鶏の卵は危険な雑菌まみれだ。この雑菌は過熱により死滅する。しかし私たちは、当たり前のように生のまま鶏卵を食べる。ALPS処理水は、ふぐや生卵(のような日本の食に関する安全性を裏付けるもの)になれるか?]
(おわり)
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