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Alfie Templeman JAPAN TOUR 2022w/小原綾斗とフランチャイズオーナーの日記

はじめて小原綾斗とフランチャイズオーナーの『おかしな気持ち』を聴いた時から好きすぎて、11日のライブで聴いたらやっぱり大好きだったのでnoteに感情を残す取り組み。ライブの感想というより、曲の感想に近くなってしまいそう。

今回行ったライブ

・10/11(火) Alfie Templeman JAPAN TOUR 2022(ゲストアクト:小原綾斗とフランチャイズオーナー)@LIQUIDROOM(東京)

夏の話

全てにおいて不器用なのか、自分の気持ちを理解するのに一つずつ考えないと分からなくなる。だから、夏の話から書いてみる。

夏が苦手だ。夏のいいところを挙げるとすれば、洗濯物が早く乾くことと、旅行の荷物が冬より少ないことしかない。夏が苦手すぎて、なんなら春から憂鬱になっている。
でも、概念の夏は好きだ。概念の夏という表現が正しいかどうか分からないけれど、小説や歌詞や映画といった創作物で描かれる夏は好き。そして、幼少期の印象的な体験を思い返すと、何故だか夏の出来事が多い気がする。

「概念としての夏が好きなのかもしれない!」と、思うようになったきっかけを覚えている。それは、夏目漱石の『こころ』の文章が目に留まったからだ。

私は夏郷里に帰って、煮え付くような蝉の声の中に凝っと坐っていると、変に悲しい心持になる事がしばしばあった。私の哀愁はいつもこの虫の烈しい音と共に、心の底に沁み込むように感ぜられた。私はそんな時にはいつも動かずに、一人で一人を見詰めていた。

夏目漱石『こころ』(青空文庫より)

「私」が田舎へ帰省し、家の中で蝉の音を聞いている描写。蝉が烈しく鳴く音と、その中でじっとしている「私」の姿という、静と動の描写が印象的だったのかもしれない。
夏は、夏祭りや海水浴、夏フェスなど明るい賑やかな一面を持つ一方、うまく言葉にできないけれど夏の夜にふと感じるようなもの悲しい一面も持ち合わせていると思う。
とはいえ、季節に様々な側面があるのは夏に限ったことではなくて、例えば、出会いと別れの季節である春も正反対の顔を持ち合わせていると思う。
夏の強い日差しによって生まれる光と影のコントラストが他の季節よりも強烈にその差を意識させるのか?実際の夏が苦手すぎるが故に、夏を意識しすぎて色んな側面が目に留まりやすいだけなのか?『こころ』の文章に出会ってから色々と考えてみるも、自分の中でしっくりいく答えに出会えない!

夏は不思議で、「ひと夏の恋」という表現はあるのに、「ひと春の恋」や「ひと冬の恋」という表現はない。「あの夏」とは言うけれど、「あの秋」や「あの冬」とは言わない。夏に対しては「終わってしまう」とか、「終わってしまった」という感情があるのに、春・秋・冬にはあまり思わない。夏に限った表現は、多分探せばもっとある。

ライブの話

まだ曲名が『おかしな気持ち』とは知らなかった頃にライブで聴いて、「私の好きな(概念の)夏だ!」と、ひどく感動したことを覚えている。
11日のライブでも、6月のドミコとのツアーでも一番最後に歌ったこともあり、「夏が終わってしまう」という歌詞と、この曲で最後なのかという気持ちが結びついてより切なくなった。

何故、夏に対しては終わってしまうと思うのか!歌詞に「ドキドキを待っている 愛しい夏のひととき」とあるけれど、待ちわびていたからこそ終わってしまうという感覚が強まるのか。そのまま「今か今かと待ちわびて」という歌詞もある。
辞書で「ひととき」を調べてみると、「しばらくの間」とか「過去の、ある時」という意味が出てくる。前述した「ひと夏の恋」もそうだけれど、夏は過ぎ去ってゆくもの、取り戻せないもの、ある一時期といった印象が強い。表層的な賑やかさの奥にうら寂しさを覚えるのも、この辺りに関連している気がする。キャッチーなメロディーと、不意に泣けてしまうような歌詞の関係性も正に私の好きな概念の夏だ。
少し話が逸れるけれど、今まで観た映画の中で『千と千尋の神隠し』が一番好きで、その理由の一つに私がもう絶対に得られない時代を描いた物語だからというのがある。手のひらからこぼれ落ちてゆく砂とか、覚えていたいのに忘れてしまうこととか、何故だかそういうものに美しさを感じてしまう性質なのだな。

話を戻す。歌詞を読むと「ひととき」以外にも、ある一時期を表す表現があることに気が付く。「通り雨」は「さっと降って、すぐやむ雨」のこと。「いつの日かさよならして」も、ずっとは続かないこと。「夏が終わってしまう」のも、終わりがあるということ。
綾斗さんが歌詞について何を意図したのか、あるいはしていないのかは分からないけれど、私が『おかしな気持ち』を好きなのは、大好きな夏の概念がたくさん詰まっているからみたいだ。順を追って考えて良かった。

謎のまとめ
①私は概念の夏が好き。
②概念の夏の好きなところ
(1)表面的な賑やかさの奥に感じるうら寂しさ。
(2)「ひと夏の恋」や「あの夏」といった夏にしかない(と思われる)表現。
(3)期限付きであること。終わりがあること。 など
③『おかしな気持ち』が好きな理由
・②概念の夏の好きなところがたくさん盛り込まれている。
→②(1)キャッチーなメロディーと、歌詞の関係性
→②(2)(3)「通り雨」や「夏が終わってしまう」という表現。 など

11日のライブの演奏で更に良かった点があるので書く。

今回のライブでは、ギターにMONO NO AWAREの成順さんが参加されていた。成順さんの音が加わることで、人生にそう何度もない、何かに搔き立てられて走り出さずにはいられなくなるような狂おしさを感じられて非常に良かった。最高だった。
綾斗さんの歌い方や演奏も音源より力強くて、この曲で最後なのだという終わりを感じさせられたのがたまらなく良かった。そんな顔して歌わないで(歌ってほしい)という気持ち。泣いてしまう。綾斗さんの歌い方と、成順さんの演奏のシンクロが完璧だった。ライブ中、何度か目も合わせていた気がする。また競演してほしい。

今回のライブは、Alfie Templemanのゲストアクトということで持ち時間は約30分だった。曲は6曲?1曲目と3曲目がEPに収録されていない曲だった気がする(過去のライブで歌ってはいる)。
MCでは、綾斗さんが成順さんに「牛乳が好きそうな見た目をしている」「カルシウムが好きそう」という謎の振りをされていた。9月の中国巡演増加演出では、AAAMYYYちゃんと成順さんは前髪ぱっつん組でかわいかったな……。
あとは、ステージ上に次の入れ替え用の機材が置かれていたので、綾斗さんが本当は扇形に並びたかったのに一直線に並ぶことになったとおっしゃっていた。少し奥に行きがちのドラム(大樹さん/saccharin)が良く見えたので、一直線スタイルも良い。酒場のイメージが強い大樹さん、ステージ上では紅茶を飲んでいらっしゃった。

いつも、要約すると「好き」しか言ってない文章になってしまう。でも実際そうだから良いか。2022年、まだライブを観る機会はあるかな。仕事さえなければ、海外にだって行きたいくらい大好きだ!

寝る前に書いた、睡魔に負けすぎのライブメモ。