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BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」追加公演の日記

BREIMENのライブはいつも純粋に楽しむことを教えてくれる。教えてくれるというか、気付けば勝手に楽しんでいる。去年の10月のライブもそうだったし、この日もそうだった。

今回行ったライブ

・6/28(金) BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」@KT Zepp Yokohama(神奈川)

言葉が出てこない

この前、本屋さんをうろうろしていたら『書けないんじゃない、考えてないだけ。』というタイトルの本が目に留まった。

2022年から、主にライブの感想をnoteに綴っている。実際に書き始めるまでは、ライブを観て思ったことや感じたことを、ただ言葉にすれば良いと思っていた。
この「ただ言葉にする」が想像以上に難しい。確かに私は感動を覚えたはずなのに、いざ書こうとすると言葉が出てこない。

感想日記を書き始めてから2年以上経った今、素早く言語化できるようになったかといえば全くそんなことはなく、しょっちゅうパソコンかスマホの前でフリーズしている。
早く書かないと忘れてしまうし、次のライブの予定があると記憶が上書き保存されてしまう。だからある程度書くと「えいや!」という気持ちで投稿する。

書けないんじゃない、考えてないだけ。書くには、考える必要がある。
過去に起きたことを書くのだから、事実を記録するようにするすると書けるものだと思っていた。とんだ勘違いだ。

結局この日は『ユリイカ』2024年6月号を買ったので、『書けないんじゃない、考えてないだけ。』は買っていないし読めてもいない(すみません)。
とはいえタイトルだけで気付きのある本だった。

今まで、Tempalay関係のライブの感想だけ綴っていた。私にはそれだけで精一杯で、他のライブの感想日記を書くほど体力(思考力?)が残っていなかったのだ。
でもこの日の感情は残しておきたい。本当に素晴らしいライブだった。

ライブの日記

会場に入ると、フロアに椅子が置いてあった。正直に書くと素晴らしいライブ演出の数々よりも、椅子があることに一番驚いてしまったかもしれない。
椅子があるおかげで周囲の人と一定の距離を保てるし、何より座って待つことができるので楽だった。ありがたや。

ステージ後方には、3つのスクリーンが設置されていて、カメラ3台によるリアルタイムの映像が流されていた。
『チャプター』くらいしか思い出せないが、事前に用意された映像が流れる場面もあった。

バンドのライブは、長くても2時間弱が相場だと思う。この日は19時開演で終わったのが21時半頃。多少開演は遅れたものの、たっぷり2時間以上楽しむことができた。
BREIMENのライブは数回しか観たことがないが、いつも進行がまったりしている。
ワンマン公演のように自分たちで構成を考えられるライブに限らず、持ち時間の決まっているフェスでもそんな印象を受けた。
たくさんお話してくれるのはうれしいけれど、そんなにのんびり話していて良いのだろうかと勝手に心配してしまうくらいまったりしていた。

例えば仕事中に同僚が焦っていると、それが伝染するのか私までそわそわ落ち着かない気持ちになってくる。
BREIMENのまったり雰囲気も会場に伝染するのかもしれない。いつの間にか心を解かれて、だから私は私を忘れてライブに没頭できるのかもしれないと思った。

ツアーの最終公演だからか、皆さんが「今日は打ち上げだ」という気持ちで楽しまれていた。
祥太さんが「ツアーファイナルとか、セミファイナルとかよく分からない。一応ツアーの最後が名古屋だったからMCで『今日がファイナルだ!』と言ったらみんな盛り上がってくれたけど、追加公演の今日が本当のファイナルだと思ってます」というお話をされていた。
あれ?祥太さんじゃなくてカツシロさんだったか……どんどん記憶が薄れてゆく。

BREIMENのライブは、ライブ用にアレンジした演奏の数々も魅力的だ。
はじめてライブで『A・T・M』を聴いたとき、もちろん音源も良いのだけれど「こんなにかっこよかったっけ!?」と驚いたことを思い出す。この日の演奏もかっこよかった。

去年まで祥太さんのベース演奏だけは、TempalayやAAAMYYYちゃんのライブで度々聴く機会があった。最近はBREIMENの活動が忙しいからか、Tempalayのサポートを務めておらず、生演奏を聴く機会が減っていたのでとても楽しみにしていた。
開演前は「ベースの音に集中しよう」と思っていたが、だーいけさんのキーボードとコーラス、林さんのフルートやサックス、カツシロさんのギター、そして颯さんのドラムどれも聴きたくて、目と耳と、それぞれの情報を処理できる脳が複数個ほしかった。もちろん祥太さんの歌声も良かった。

とにかく颯さんのドラム演奏に圧倒された。
『寿限無』のイントロもかっこいいし、『チャプター』も好きだし、その印象を上回る凄まじいパートがあった(のに、どの曲だったか忘れてしまった)。

演奏で言うと、『眼差し』で祥太さんのお母さんによるフルートが聴けたことも感動的だった。
曲紹介で母の歌であることをお話するときの祥太さんは恥ずかしそうで、その後歌いながら涙ぐむ姿にもらい泣きしそうになった。
歌詞にある「セピア坂」は実家近くの坂をそう呼んでいるらしい。「琵琶の実」も、お母さんや弟さん達とよく歩いた道に琵琶のなる木があり取って食べていたとか。
「あの琵琶の実、勝手に食べちゃだめだったよね?」と問い掛ける祥太さんに対して、こくんと頷くお母さん。とても和やかな空間だった。

個人的に一番興奮したのが『T・P・P feat. Pecori』だ。Pecoriさんパートが来ると思ったら、演奏が止まって林さんからお知らせが。どうやらPecoriさんは来られないらしい。
代わりに音源を流すのかと思ったら、林さんによるラップパートがあった。まさかラップされると思わず、驚きで記憶がないのでもう一度聴きたい。
他の公演でもこの件はあったのかな?ネタバレ回避のため検索しないから何も知らず……純粋に驚くことができて良かった。
そうしたら客席後方からPecoriさんが現れて、ミステリ小説のどんでん返しをくらったような気持ちになった。気持ちいい。こうやって騙されるの大好きだ。

そういえば、曲が終わった後のMCで祥太さんが「Pecoriは地方公演にも来てくれた」と仰っていた。『T・P・P』本当に良いな……また聴ける機会がありますように。

ライブで『AVEANTIN』の曲たちを改めて聴いて、一度聴いたら覚えてしまうようなキャッチーさや、様々な表現力に驚かされた。
そんな中どうしても『L・G・O』は曲の印象が薄くて、まだ『L・G・O』を歌っていないのに「もう『AVEANTIN』の曲は全て演奏したか?」と思ってしまったくらいだった。

『L・G・O』が始まる前、ステージ後方の黒い幕が取り払われ、背景が真っ白に代わった。まばゆい光に包まれ、メンバーがシルエットに代わる。
最初は白色の光で、途中からオレンジ色に染まっていったんだっけ……昨日のことなのに忘れちゃったけれど、とにかく懐かしくて寂しくて優しくてあたたかかった。
「曲の印象が薄い」だなんて思ってしまいごめんなさい。本当に素晴らしくて、感動的で、アルバムで一番好きな曲になった。

曲を聴きながら、祥太さんのMCも思い起こされた。
以前住んでいた家がなくなってしまう。思い出はなくならないけれど、物理的に帰ることができなくなってしまった。
祥太さんには忘れたくない瞬間や場所や物事がたくさんあって、それらを音楽にして記憶してゆこうとするのかな。様々な瞬間が詰め込まれた曲は、それぞれが宝箱のようだ。
祥太さんの過去に対する眼差しは、『L・G・O』にすごく詰まっている。

「過ぎゆくあなたは美しく」の部分、照明演出も素晴らしく深く深く心の奥まで染み込んでゆくようだった。

何かのライブでカツシロさんが「BREIMENはアンコールをやらない」と仰っていた記憶がある。この日もアンコールはなくて、アルバムと同じく『L・G・O』が一番最後の曲だった。
アンコールがあってもうれしいけれど、昨日のライブはなくて良かった。
『L・G・O』が見せてくれたあたたかな光を抱えたまま、ライブ会場を後にした。