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21 - 今日の哲学~サルトル、ベケット、ニュース

人間は揺れる 沈黙と言葉の間を
それが人生の運動そのものだ
日常生活から別の人生への飛翔
思考の人生 高度の人生というか
日常的な無意識の人生を抹殺する事だ
(『女と男のいる舗道』)

21(*20はこちら

10の断章 その8

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): 「今日の哲学」はい、来ました。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): 今日の哲学ね。サルトルにしよう。

C: Hania Raniも読んでた。彼女は毎回出てくるね。

JC: そうね。

C: やっぱり……同時代でああいう人がいるというのは嬉しいよね。

JC: うん。自分もすごい熱心に読んでた時があったね。『嘔吐』読み出して、実存主義……<レーゾンデートル>ですよ。「存在価値とは」と問う時代があった。それが、社会活動だ、社会への参加だ、という事になっていって、フランスは一気に共産主義に……思想家達がみんな傾く時期があった。

C: うん。

JC: サルトルはギリギリまで渋っていたけど、結局は仲間に加わってしまって……偉大な哲学者だという印象が残らないまま今日に至る、と。

C: 負けのイメージだけが残っているんだよね。

JC: うん。でも、面白かったと思うけどな。

C: 自分が抱いている負けのイメージとちょっと違った。

JC: おんおん。

C: レヴィ=ストロースにとっちめられたイメージ。

JC: あぁ。それは今の……所謂ポストモダンが始まって、終わって、というか実証されてきたのが今だと思うけど。レヴィ=ストロースはあんまり価値がなかったことになって、今は反転してきていると思う。実存主義自体を見直すのに価値があるかもしれない、と思っている人は多分沢山いると思う。一回「個」に帰っていく。この「社会性」みたいな……公的なものを上手く共鳴させられるんじゃないか、みたいな、もっと上手く出来るだろう、とレヴィ=ストロースが言っていたような世の中が……今みんなが避けるべき世の中に限りなく近い。だったらもう少し手前にあった実存主義……「サルトルって何言ってたっけ?」と思う人が増えてもおかしくはないと思う。

C: そうそう。そこが繋がる。歴史的評価……サルトルの負けのイメージを教科書的に固定して、なんとなくそういう人だと思っている。

JC: あぁ。

C: 読むか読まないか。今の自分が問い続けるか、ということに掛かってくるよね。

JC: ショーペンハウエルとかも世の中的には負けてる人のイメージなのかな。「厭世主義」みたいな。哲学を今やってる人で……そこから入るという人は多分いなかった。自分はショーペンハウエルありきで入っていった。サルトルは当然その流れだったからね。ニーチェに至るまでもそう。今の合理的な哲学の流れというものにもともと「?」と思って哲学を読んでいたところがあったから……その差は凄い大きいと思う。

C: ふん。

JC: レヴィ=ストロースじゃないな、と自分の中で思って、バランスがちょうど面白い所にあるなと思ったのがメルロ=ポンティだったね。実生活と結び付く接点の多さと、実存とのバランスがね。世の中と接点のありそうな哲学者というのは唯一そこくらい。ドゥルーズ読むまでは……結構サルトルも読んでたと思う。見直されてもおかしくない、多分。

C: Hania Raniさんやっぱり良い目の付け所と思った?

JC: 思ったなぁ。そうそう。だから……「そういえば最近サルトルの話はしたことないな」と思ってたら、「読んでる!」と。

C: うん。

JC: 同じ頃に……舞台演出についてのページだったのかな。あれサルトルが書いてるのかな。誰の著作かは書いてないから分からなかったけど、ベケットのショーの考察みたいな事が書いてあるページが載っていて、「ああぁ! その流れね!」と思うよね。ベケットとかサルトル……あの頃の感覚というのを与えてくれるものに興味が向くのはタイムリーだよ。ニュース的。ベケットも重要。それぞれの人にそれぞれのベケットがいるよね、多分。

C: うん。

JC: シーンを回想する。それがただの小説よりも面白いことがそれぞれの脳内に起こっていそうな……「規制の少なさ」と言うのか。仮想現実・バーチャルリアリティーみたいなものと凄く密接にありながら全く相容れないものをベケットは描いていたような「気がして」、今もう一回読み直す人がいたらニュースです。タイムリーです。その感覚……分かるね。なかなかまだしばらくは「前からこういうのが示唆されていた」というのを探していくという事が多いかもしれないけど。そうじゃない、既にそこから逸脱しているジャンルに……当然いずれは目がいくわけだから。

C: 次のクリエイトだね。

JC: それを今から自分の想像の中に持っていてもなんら困ることはない。ずっとそうやって作っていた人にとっては何ら不都合ない。

C: そうね。ニュース……先の話に行きがちなJCからすると。

JC: ニュース大事。

C: ニュースが出来る人は違う資質よね。

JC: ははははは。

C: 貴重だと思う。

JC: シナリオはシナリオで置いておいて、自分は自分の……「今ベケット読むの? 熱いね!」とか、そういうのがニュースですから。ははははは。

C: ごくごく個人的な。

JC: そうそうそう。そういうニュース、トピック。ランドローバー凄い車出したな、とか。はははは!

C: そうだね。面白がる事と。

JC: そう。面白がる範囲でしか扱えないから。

C: もう終盤。断章9行ってみる?

JC: うん。9になってる理由があるんでしょう。

C: 時系列になってる。だからニュースですよ。次は最新ニュース。

つづく

 

2022年2月25日 dacha doublesにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)

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