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第3回コントラバスコンテストを終えて

2023年3月28日、文京シビックホール小ホールにて私の主宰する「第3回中学生・高校生のためのコントラバス・ソロコンテスト」が終了致しました。今日はその感想などを書き連ねてみようと思います。


プログラムの代表挨拶にも書きましたが、クラウドファンディングで資金調達をしたことによりネットで批判されたりしつつ無我夢中で駆け抜けた第1回、コロナ禍ど真ん中で強行開催した第2回と、ここまでドンと構えて迎えられた事のないこのイベント。3回目ともなれば少しは落ち着いた気持ちで当日を迎えられるだろうと思いきや、前日一番緊張したのが今回でした。
 おそらく、前日まで3日連続で演奏会本番を入れた事で準備が間に合っているのかどうか不安だらけだったからだと思われます。かといって自分の生活があるので仕事を休みにするのも違うとは思うのですが。
 私が遅刻するとホールの鍵を貰えないので全国大会前夜は東京ドームホテルに宿泊するのですが、結局午前3時半まで不安で眠れませんでした。ホールまで徒歩10分の距離だというのに、、、

 そんな不安を吹き飛ばしてくれたのが当日手伝ってくれたスタッフさんたちでした。
 前回から残ってくれたスタッフさんが多数いらっしゃったので「現場の判断でどんどん動いて欲しい」と伝えてあったのですが、彼らのお陰で私はかなり楽をする事が出来ました。前回のように現場を走り回るのではなく、ある程度落ち着いて取材対応をしたりご招待の方にご挨拶をする事が出来たのです。おそらくこれが本来の代表者の仕事だよな、と思いつつ、イベントで偉そうにふんぞり返るトップが大嫌いなので、何回やろうと私は現場で動きたいと思いますが。
 誘導スタッフの皆さんは「会場を温かい雰囲気で包んで参加者をリラックスさせること」という私の考えを100%理解して下さっていて、控室から前室、ステージと誘導しながら参加者にがんがん話しかけて笑顔を生み出してくれました。他のコンクールでは見られない、自慢できる光景です。いつも以上に、本番前笑顔の参加者が多かった印象を受けました。
 ステージマネージャーさんから「前回ステージに上がる段差で楽器をぶつけている子が多かった」と連絡を受けて、誘導スタッフがステージ上まで楽器を運び上げ、演奏終了後も舞台上まで取りに行くというVIPスタイルに変更して下さいました。一見すると甘やかしているように感じられたかもしれません。もちろん本来は自分たちで運ばせたいのですが、今回はレンタル楽器希望者が多かったため、楽器を守るためには仕方なかったんです。これもコントラバス奏者が揃ったスタッフならではの判断だったと思います。
 呼び出しの順番を間違えて出番が入れ替わったのは反省点ですね。これについては既にスタッフたちとミスを減らす方法を模索中です。

 さて、審査員の御三方。東京シティフィルの瀬野さんは私が20代でシティフィルに入り浸っていた頃の兄貴分のような人です。千葉響の寺田君も、私が留学から帰国してから25年くらいの付き合い。東フィル首席の片岡君は、彼が新日フィルにいた頃たまにご一緒していました。皆さん吹奏楽部の出身です。
 前回から導入した予選動画審査からこの全国大会まで、貴重な時間を削って審査に向き合ってくれた審査員には感謝しかありません。共有ファイルの最終更新時刻を見たら、ある審査員は審査締切前日の午前3時半まで講評を打ち込んでいらっしゃいました。
 全国大会でも、「講評を書く時間が間に合わないようなら2行くらいでも大丈夫」とお伝えしていたのに、後で見たら全てビッシリ書いてありました。
 参加者の皆さん、こうしてプロのコントラバス奏者から貰ったアドバイスを、これからも練習の励みや目標にして貰えたら嬉しいです。

 今回から全国大会の審査方法を少し変えて、課題曲と自由曲を別々に採点して合計点を出す方式にしました。というのも、前回までは総合点にしていて、課題曲が初見のような酷い状態で全く弾けていないのに、自由曲でほぼ賞が決まってしまったというような人が多く見受けられたので、今回からは課題曲にしっかり点数をつける事にさせて頂きました。
 過去3回の審査員全員が「象でめちゃくちゃ差がつく」「これは本当に良い課題曲だ」と話すように、この曲は簡単ではありません。次回以降も、ぜひ課題曲には真剣に取り組んで頂きたいと思います。

 その影響もあってか、今回は第2回に比べ金賞がかなり減り、金賞の重みが出たと言えます。動画審査の採点を見ていて「今回の全国大会は銅賞が出るかもなあ」と思っていましたが、ぎりぎりのところで銅賞無しでした 笑 次回からは銅賞があっても良いのかな、と思ったので、さらに配点の見直しはしてみたいと思います。

 続いて公式伴奏者のお二人。今回は二人合わせて30名近い伴奏をこなして頂きました。モニターで何名かの演奏を聴いていて、参加者のテンポが多少崩れてもピタッと合わせていく様子が伝わってきて、やはりプロは凄いなと感嘆してました。
 審査員の間でも話題になったのはその音量のバランス感。コントラバスの伴奏は本当に難しいのですが、演奏が始まった瞬間にスッと音量のバランスを合わせていく耳と技術は流石でした。
 そういえば中学の部、ピアノの蓋は全閉でやるはずだったのですが伝達ミスがあって蓋が開いたまま開始してしまいました。これは完全にこちらのミスでお詫び申し上げます。公平を保つため中学の部はそのまま蓋を開けた状態で最後までいかせて頂きました。

 ゲストの地代所悠くんに触れない訳にはいきません。今回はコントラバスヒーローショーという、コンクールでは前代未聞のショーを見せてくれました。
 実は当初、彼のソロを想定して依頼していたのですが、その後「コントラバスヒーロー」というキャラクターが誕生し「ヒーローでいっても良いですか?」と連絡が来たので「もちろん!」とお願いしました。
 打ち合わせをしながら「スタッフにいる音大生を飛び入りで参加させたら盛り上がるんじゃないか」となり、スタッフさんに確認したら「出ます!」と快諾して貰い、さらに篠崎くんや布施くんというプロのコントラバス奏者まで飛び入り参加したコントラバスアンサンブル、なんと贅沢な時間でしょう。残念ながら私はその時間審査に立ち会っているので生で観ることは叶いませんでしたが、モニターから盛り上がっている様子が伝わってきました。
 親睦会にもヒーローのまま現れてくれて、中高生とたくさん記念撮影をしてくれました。ネットから盛り上げる方法を知っている彼だから、わざわざ着替えずに来てくれたのだと思います。これからも一緒にコントラバス界を盛り上げていきましょう!

 ステージマネージャーの志村さんは、シエナ・ウインドオーケストラのお仕事で知り合って意気投合して、第1回からずっとステージをお願いしています。文京シビックホールを知り尽くしているのも強みで、ホール打合せから本番まで、ステージ周りはおんぶに抱っこ状態。時間調整、影アナウンスへの配慮など気遣いのプロフェッショナルは今や裏の顔となっています。今回トラブルもいくつかあったのですが、彼の迅速な対応に救われた部分が多々ありました。

 その影アナウンス、前回まではコントラバス奏者小野さんが務め、その温かい空気感で客席をリラックスさせてくれましたが、今回は出産などもあって不在。どうしようかなと悩んでいるとき思い出したのが今回の秋山くんでした。
 実は第1回中学の部の参加者で、その後高校で放送部に入り全国大会までいった逸材。お母様が第2回から受付スタッフとして助けて下さっていて、今回は親子での参加となりました。その落ち着いた声が来場者から大変好評で、「アナウンスが素晴らしかった」というコンクールにしては珍しい感想まで頂きました。救って頂いて本当に感謝です。

 毎回控室には二組の職人さんに常駐して頂き、参加者の相談に乗ってもらったりしているのですが、今回は絃バス屋さんとベースランドさん。そして、コントラバス職人を目指す二人の若者に見学に来て頂きました。実は前回開催前に絃バス屋さんから「若い職人が育たないと未来が心配」と聞いて「職人見学ツアー」を思いついたのですが前回はコロナ禍で出来ず、今回様子見で二人だけ見学のお声がけをさせて頂きました。少しでも勉強の手助けになっていたら幸いです。

 私は、いろんなオーケストラのコントラバス奏者、いろんな職人さんを知って欲しいと思っており、どちらも同じ人に頼むのではなく毎回代えていきたいと考えているので、審査員、職人さんは次回以降も様々な方にお声がけしていこうと思っています。

 今回のレンタル楽器は絃バス屋さん2本、ベースランドさん1本、クロサワ楽器さん2本の計5本、、、の予定だったのですが、いざ蓋を開けてみればレンタル希望者が殺到して足りなくなり、急遽スタッフから2本貸して頂く事になりました。
 「職人が本気で調整した楽器を弾いてみて欲しい」という絃バス屋さんの言葉を「全国大会のご案内」に載せたのが希望者殺到に繋がったのでは、と思ったので次回からこの一行は削除ですね 笑
 閉会の言葉の時に話しましたが、レンタル楽器があるのは決して当たり前ではありません。もちろん「楽器貸します」を売り文句にしてはいるのですが、100万を超える高価な楽器を無償で貸し出して頂くのは普通では考えられませんし、他のコンクールでこんなサービスは存在しないのだという事を知識として持っておいて欲しいなと思います。いまサービスと書きましたが、そう、これはあくまでもサービスなんです。「運んで来るのは大変だから助けてあげたい」という気持ちで楽器屋さんに頭を下げてお願いしていますし、楽器屋さんもその想いに共感して無償で貸して下さっています。「貸してもらって当たり前」ではないということ、今回その辺をご理解頂けるとありがたいかなと感じました。
 そしてレンタル楽器については今後見直しが必要だなとも思っています。
「学校の楽器と比べたら物凄く弾きやすかった」と話す参加者も多かったようで、そうやってちゃんとした楽器を体験して欲しい気持ちもあるのでレンタル楽器のシステムは止めたくはないのですが、今回の7本は正直やり過ぎで、運搬するスタッフや楽器屋さんへの負担がかかりすぎました。楽器屋さんのお言葉に甘えてしまって楽器レンタルの契約書を作成していなかったので、そちらも合わせて要検討案件です。今後は有料化し、最大でも4本まで、遠方の方のみなど条件をつけることが必要になりそうです。

 スタッフからは控室への保護者の立ち入りについても聞かれました。「参加者の成長、自立心を促すためにも保護者は控室に入ってほしくない」というのが私の気持ちですが、はっきり明記していなかったので、次回からは伴奏される保護者以外の立ち入りは禁止とさせて頂こうと思います。
 逆に、2年後はコロナももう少し落ち着いているでしょうから、親睦会に保護者の方が入れるようにしたいですね。

 それから一つ苦言になります。毎度の事ですが、事務手続きをしていて、メールのレスポンスが遅い参加者が非常に多いです。社会人になったらこれは致命的です。期限内に連絡をする、行動する事を意識して欲しいと思います。こちらとしてもこれが凄いストレスになるので、そもそもやり取りの回数を減らすシステムの工夫が必要だと感じました。
 締切が過ぎてから「やはり〇〇を変更したい」と伝えてくる人も多かったです。他のコンクールなら相手にもされないところですが、私個人がやっているコンテストという事で、今後への反省を促す意味であえて厳しい文章で返信させて頂いた方も何名かいらっしゃいます。うるさいなあ、と思われたかもしれませんが、ぜひアドバイスとして前向きに受け取って頂けたら嬉しいです。
 苦言を申し上げさせては頂きましたが、こちらも事務作業の中でたくさんミスがあったので、その点についてはお詫び致します。

 プログラムの広告はじっくりご覧いただけましたか?今回は各楽器店のほかに一般企業様にも広告を出して頂くことが出来ました。
 新R25は時代の先端をいくビジネスバラエティメディアです。著名人の方のインタビューなどは読んでいて生き方のヒントがたくさん載っています。ぜひ一度目を通してみて下さい。
  ROLFBENTZ TOKYOさんは東京・表参道にあるドイツの高級家具ブランド。以前私が室内楽コンサートをやらせて頂いたご縁で、今回広告掲載させて頂きました。座ると立ち上がれなくなるような座り心地のソファなど、ぜひ一度お試しください。
 東部ケミカル株式会社は植物油脂製品や健康食品を販売しています。今回のQRコードからはおしぼりの購入が出来ますが、このポケットおしぼりの香りが素晴らしいんです。 
 このような形で音楽と一般企業の繋がりを増やしていけたら、と密かに期待していたりもします。

 こうして幕を閉じたコンテストですが、既に2年後に向けて気持ちは動き始めています。スタッフからも「忘れないうちに」と、よりスムーズな運営のために次々に改善案が出てきています。本当に頼もしい人たちです。

 残念ながら全国大会に届かなかったひと、全国で目指していた賞が取れなかったひと、満足いく演奏が出来なかったひと、再挑戦出来る学年の方は次回もお待ちしています。私は毎回申込み受付をしていて、これまでに見た名前があると「お、お帰り!」という温かい気持ちになります。もちろん優遇出来る訳ではないのですが、楽しくてまた申し込んでくれる人も、再挑戦の人も大歓迎です。申し込んだ時点で皆さんの勇気に心の金賞をあげたいと思います。

 クラウドファンディングに頼らない運営は初めてになるので、次回は資金面でいろいろと不安な気持ちにはなりそうですが、とにかく「全国のコントラバスを弾く学生のためにどう盛り上げるか」「いかに温かい会場の雰囲気を作るか」という原点だけは忘れずに、準備を進めていきたいと思います。
 今回も、きっと普通のコンクールの雰囲気を想像してご来場された方はたくさんいらっしゃるでしょうが、代表の私が自ら前説で笑いを取りに行ったり、表彰式で堅苦しい雰囲気を作らないようにしていたのは全て意識しての行動です。「なんだあれは、けしからん」と言われる方もいるでしょうが、これが私のスタイルです。身近に感じるコンテスト、アットホームな会場作りはこれからも変えるつもりはありません。ご理解頂けましたら幸いです。

 最後になりますが、第3回コントラバスコンテストに関わって下さった全ての方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
  

 

 
 

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