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沢田研二さんのドタキャン騒動

歌手・沢田研二さんが、全国ツアーのさいたまスーパーアリーナ公演を開催直前に中止したドタキャン騒動で話題になっています。

沢田さんは「イベンターから9000人入ると聞いていた観客が実際にはたった7000人だったことや、客席の一部がつぶされていたことなどから、自ら中止を決断した、こちらにも意地がある」と話していました。

僕は中学生の頃テレビでお見かけしていた程度の知識しかなく、特にファンでもなければ会場に足を運んだ事もありませんから、コアなファンがどう思っているか知りませんが、音楽の世界で演奏に携わるという意味で、一般的な方々と沢田研二さんのちょうど中間地点くらいの立場の人間だと思います。ジュリーのようなビッグスターではないことを含めれば、どちらかといえば一般的な国民の目線に近いかもしれません。

そんな事を踏まえこの件を考えてみるとき、ジャンルこそ違えど同じステージに上がる者としては、お客さんが少ないとテンションが下がる気持ちは理解出来なくもありません。私は過去にTHE ALFEEのストリングスとしてキャパ38000人の神宮球場で演奏したのがこれまでに経験した最多観客数ですが、確かさいたまスーパーアリーナもほぼ同じキャパのはず。そこに7000人しかいない光景は、過去に大きなハコを満員にしてきたジュリーからしたら想像を絶する景色と思います。

しかし、この来場されたお客さんを「たった7000人」と捉えるか「7000人も」と捉えるかで立場は大きく変わってきます。

どんなにお客さんが少なくても、客席が空いていても、その会場に足を運んでくれたお客さんがいる限り、良いものを届けるのがプロの仕事だと思いますし、このコンサートを成立させるために動いてくれた多くの人々の事を忘れてはいけません。いくら再演するにしても、その日しか行けなかったり、その日を楽しみにしていたファンの気持ちを無視した事実は消えません。

私も1500人のホールに500人くらいしか入っていないケースを何度か体験しましたし、ステージに出た瞬間ガッカリした事はありますが、「そこにお客さんがいる」という事実は変わらないのですし、「このお客さんたちが新たにお客さんを連れて来てくれるかもしれない」という思いから、いざ開演したら全力で演奏したものです。まあ、ジュリーほどのビッグネームになったらこれ以上新たな客層の開拓は必要ないのかもしれませんけどね。

しかし、ジュリーが「俺にも意地がある」と言った言葉とツアーの日程を読み解いていくと、集客に関してイベンターにも責任があるのは明白です。

オーケストラだと大きなホールでキャパは2000人平均、クラシックコンサートには不向きながらイベントで使用される事の多い国際フォーラムのホールAで5000人。さいたまスーパーアリーナを埋めるのがどれだけ大変か、この数字からも窺えます。

ところが今回の沢田研二さんのツアーは、4ヶ月の間に横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、立川のたましんRISURUホール、府中の森芸術劇場、かつしかシンフォニーヒルズ、横須賀芸術劇場、国際フォーラム、日本武道館3Daysなど関東近郊だけで8箇所10公演。
私はイベンターでは無いですし、こちらの業界の状況に詳しい訳ではありませんが、中学生の頃から沢田研二を見てきた人間として、絶頂期ならともかく、ファンも高齢化が進み、新規のファンも少なく、70歳になった今のジュリーに、そこまで集客能力があるか甚だ疑問です。イベンターも、少し見込みが違ったのではないでしょうか。いや、僕が知らないだけで、もしかしたら近年でも沢田研二さんのツアーは飛ぶように売れていて、今回もたまたまさいたまスーパーアリーナだけガラガラで他はほぼ完売だったのかもしれませんが、一般的な世間の認識、イメージはその程度だと思います。

いずれにせよ「お客さんが少ないから」とドタキャンをした今回の騒動で沢田研二さんに「ファンを大切にしない」イメージが世間に根付いてしまったでしょうし、小さなプライドと意地の為に、大きなものを失ってしまった事は確かです。

私も12月に2週間で10公演のツアーを控えていますし、改めて「現場に足を運んでくれたお客さんを大切にする」という、当たり前の大原則をもう一度認識する良い機会となりました。
  


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