記憶

旅行中によく聞いていた曲を久しぶりに聴くと、その旅行の記憶が蘇ったりすることは頻繁にある。映画のサントラを聴くとその映画のシーンが思い浮かぶことも多い。その逆の、景色を見て、曲が頭の中流れるなんてことも割とある。音楽がいかに特定の記憶や映像と結びついているかがわかる。

先日、[Alexandros]のワタリドリを何の気無しに懐かしさから聴いた。イントロの時点で言葉では表現できないくらいの温かい感情が溢れた。旅行の記憶が蘇るのとは比にならないレベルである。

つくづく不思議だと思う。ワタリドリはちょうど高校一年生になるかならないかくらいの時期に流行ってずっと聴いていた曲で、大した青春も送ってないのになんでこんなに心が揺さぶられたんだろうか。

いまだに僕はあの時の呪縛から逃れられていないんだろう。自分で勝手に作って勝手に自分に背負わせておきながら。あの時から何も成長していないんだと。そしてあまりにも女々しすぎる。今後もこの曲を聴いたら同じ感情を抱き続けるような気がする。たとえ記憶喪失になったとしてもこの曲を聴けば記憶が戻るかもしれない、なんて思ったりもする。

今もワタリドリを聴きながらこの文章を書いている。聴きながら、確かに懐かしい気持ちが溢れてくるが、逆に言えばそれだけであることに気づいた。直前まで言っていたことと正反対のことを言っているけれど。この曲にあの頃の記憶を詰め込んで封印しているのかもしれない。これは前に進んでいるのか進んでいないのか。まああくまでも今少しでも前に進むための応急処置である。いつかは成仏させないととは思っている。いつかは翔ばないといけない。

今の記憶は将来、どんな曲を聴いたら思い出すのだろうか。意外と想像もつかないような曲だったりする気もする。でもどうせ美化されているから関係ないか。


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