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記事一覧
橘木俊詔『新しい幸福論』(岩波書店、2016年)
主題…現代社会を生きる人々の「幸福」とは何か。そしてその「幸福」を得るために社会はどのように変わる必要があるのか。「幸福」をめぐる現状と理想へ向けた道のりを考える。
1章では、日本における高額所得者数と貧困率、および格差社会の実態について説明がなされている。
日本において高額所得者の数や割合は、ここ数十年で変容を遂げている。橘木氏によれば、そうした変化は高額所得者が集中する創業経営者やスポー
橋本健二『アンダークラス 新たな下層階級の出現』(講談社、2018年)
主題…現代の社会における非正規労働者の比率は4割近くに及ぶ。彼らのうち、パート主婦・専門職以外の人々の暮らし向きは悪く、過酷な環境に置かれている。彼らは「アンダークラス」とも呼べる新たな階級の一つとなっているという。「アンダークラス」と呼びうる階級の実態を示し、それを乗り越える可能性について考える。
1章では、橋本氏が「アンダークラス」と呼ぶ階級の内容とその形成背景の説明がなされている。
『ルポ 貧困女子』/飯島裕子
主題…貧困問題に苦しむ当事者は、男性が想定されやすい。しかし男性だけではなく、女性もまた貧困に苦しんでいる。そして、女性の場合、男性の貧困問題とは異なる形で問題の深刻さを背負うことになる。「貧困女子」に特有の問題やその背景とは何か、考察を行う。
序章では、本書で扱う「貧困女子」について基本的な説明がなされている。
従来、貧困問題はホームレス問題や非正規雇用の問題と絡めて論じられてきた。その
『新・日本の階級社会』/橋本健二
主題…現代社会の一つの問題として、格差の拡大が挙げられる。格差が拡大した社会のことを格差社会と呼ぶが、今日の深刻な格差拡大した社会は、もはや「階級社会」になりつつある。現代の「新しい階級社会」の様相に接近する。
1章では日本社会において「中流意識」と呼ばれるものがいかに形成され、徐々に解体されていったかについて述べられている。
戦後の高度経済成長期に日本においては、好景気の余波を受け、人々
『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』/白波瀬達也
主題…日雇労働者の町として知られている大阪市西成区の「あいりん地区」 そこは路上ホームレスの多さから貧困が可視化する場としてのイメージが強いが、「あいりん地区」は時代を経て多様な変貌を遂げてきたとされる。その変化の姿や背景に迫る。
序章では戦後に行われた「釜ヶ崎」の実態調査について説明がなされている。
「釜ヶ崎」とは、大阪市西成区の北東部の地域の俗称である。この地域は行政の用語としては「あ
『「命の値段」はいくらなのか?国民皆保険崩壊で変わる医療』/真野俊樹
主題…日本では実際の費用の3割程度で各種医療サービスを受けることができる。これを支えているのが「国民皆保険制度」である。しかし高齢化の進行や医療技術の高度化は、医療費の高額化を押し進め、「国民皆保険制度」による負担費削減の土台を揺るがすものとなっている。現代の日本の医療が置かれている状況を検討する。
序章では国民皆保険に関して日本が置かれている状況について説明されている。
日本の国民皆保険制度は
『社会的排除 参加の欠如・不確かな帰属』/岩田正美
主題…近年、注目されつつある「社会的排除」 なぜ「貧困」ではなく、「社会的排除」という言葉が用いられるようになってきているのか。「社会的排除」が意味することを知り、その実態へと接近する。
序章では社会参加や関係形成における多様さについて論じられている。
私たちを取り巻く社会において、その参加の態様や人間関係の形成は画一的なものでは決してないと岩田氏は述べている。社会参加の目的や密度、関係形成の
『居住の貧困』/本間義人
主題…行政が担う「住宅政策」を通して私たちは「居住」へのアクセスが可能になる。そのため生活の基盤である「住」を確実なものとするためには、「住宅政策」はすべての人にとって充実したものでなければならない。しかし現実としては、居住環境の悪化や安定した住居が得られないといった「居住の貧困」が存在している。「居住の貧困」と「住宅政策」について、その問題の実態と本質に迫る。
1章では住宅問題の実態やその
『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』/山森亮
主題…無条件を前提とした所得保証として注目を集める「ベーシック・インカム」は、社会保障の欠缺を補うものとして議論されている。しかし「ベーシック・インカム」を要求する運動の歴史や背景にある思想、理念を紐解くことで、見落とされがちな個人と「賃労働」のそもそもの関係を根底から考え直すことができるという。
1章では「ベーシック・インカム」についての基本的な概要や現在の社会保障の実態が説明されている。
『社会保障の法理念』/菊池 馨実
主題…公的扶助や社会保険などからなる社会保障は、貧困者の救済をしたり、将来の加齢や病気に備えるものとして捉えられがちである。しかし社会保障を「権利」として捉えると、社会保障制度の異なる側面を検討することができる。それは、個人としての「自由」を希求する制度としての側面である。
1章では日本の社会保障法をめぐる理論動向について、50年勧告と95年勧告の比較検討を素材として論じられている。
菊池氏は
『創造的福祉社会 「成長」後の社会構想と人間・地域・価値』/広井良典
主題…経済成長が限界に達したとされる現代社会において、資源の枯渇や失業者の増加など、問題は山積している。それらの問題に対して福祉政策による応答はどの程度に可能なのか。時間・空間・価値観・人間観などの多様な視点から「創造的」な「福祉社会」の構想を検討する。
1章では近代と連なる現代という時代は、「成長」という視点に立ったときにいかなる見方をすることができるかについて論じられている。
前半部で
『コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来』/広井良典
主題…「社会的孤立」と呼ばれる状態にある人々は生きづらさを抱えている。そうした状態に誰しもが陥る可能性がある今日では「コミュニティ」の再興がよく議論に挙げられる。その「コミュニティ」の可能性と実現の道のりを考える。
1章では日本人の集団性と「都市」について述べられている。
日本人は「農村型」の関係形成をしてきたとされている。すなわち農村においては、小規模で凝集的な管理の必要性が求められているこ
『生活保護から考える』/稲葉剛
主題…「最後のセーフティネット」と呼ばれる「生活保護」。無条件・平等の名の下に保障されている制度であるはずだが、経済的困窮は改善される余地はない。理念と実態の間には何があるのか、「生活保護」の制度と意識の視点からアプローチする。
1章では2013年1月に閣議決定された生活保護費の段階的切り下げについて、その根拠の正当性や影響について検討する。
生活保護費の切り下げは「物価の下落」を根拠とし
『現代の貧困 ワーキングプア/ホームレス/生活保護』/岩田正美
主題…現代の日本社会に根強く存在する「貧困」とはいかなるものか。誰が貧困であり、それは一体どのような形で姿を表すのか。個人の「努力不足」では説明できない「貧困」の実態へと迫る
1章では日本で「貧困」がどのように捉えられてきたかについて論じられている。
1980年代以降、欧米諸国では新しい貧困が姿を表すようになった。従来の貧困はスラム街にイメージされるような経済的、社会的財が全面的に損なわれてい