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道徳授業まとめ

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道徳の授業に関する記事をまとめています。
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2019年7月の記事一覧

哲学科

今日は哲学科について紹介します。 哲学科はお茶の水女子大附属小学校が中心となって、新しい道徳の時間の授業を模索している物です。 (ちなみに、お茶の水女子大附属小学校は共学です。) 哲学科の特徴は、学問としての哲学を学ぶのではなく、「哲学すること」を通して、他者との相互理解を目指します。ですので、扱う内容も学問的なものではなく、身近な問題をテーマとして扱います。 例えば、普通って何?友達ってどんな人?大きくなるとは?といったテーマを扱います。 What,Howが中心的

モラルスキルトレーニング

今日は、モラルスキルトレーニングについて解説します。 モラルスキルトレーニングは道徳的行動をスキルとして捉え、子どもたちに習得させようとする学習方法です。 様々な人間の社会的行動を技術として捉えることをソーシャルスキルと言いますが、それの道徳的行為版と考えていただいてよいでしょう。 価値の明確化やモラルジレンマが子どもたちの内面的な側面に対してアプローチをしていたのに対して、このモラルスキルトレーニングは直接的に児童の行動面にアプローチをかけることが出来ます。 また、

モラルジレンマ

今日は、一読総合法以外の道徳の道徳科の授業第二弾ということで、モラルジレンマについてお話します。 前回の価値の明確化は相対主義で善悪の判断を考慮に入れることが出来なかったために、児童、生徒に対して積極的な介入がしにくい。という弱点がありました。 しかし、伝統的な道徳教育の方法では押しつけがましい感じが出てしまいます。押しつけになることなく、しかも、積極的に望ましい価値観を身につけることはできないか。そこで、コールバーグにより開発されたのが、モラルジレンマという教育方法です

価値の明確化

前回の投稿から日が空いてしまいました。 今日は道徳科の一読総合法以外の道徳の方法として、価値の明確化について紹介します。 価値の明確化は、1950~1960年代のアメリカの「人間性回復運動」から生まれてきたものです。この時期のアメリカは、ベトナム戦争からくる、厭戦気分や人間や伝統的な価値観に対する反動がありました。 国の示してきた伝統的価値観に従い、正義の戦争を行った結果、ベトナム戦争が悲惨な結果を生み出したことは承知の通りだと思います。 そのため、この価値の明確化は

道徳のお話が面白くない理由

「こんな面白くない教材を使っているから道徳はつまらない。」 そう、思ったことはありませんか。 道徳の教科書のお話は基本的に面白くありません。 というより、わざと面白くないように作っていると言えます。 国語の教材の「ごんぎつね」とわかりやすく、「はしのうえのおおかみ」を比べてみましょう。 道徳的価値という観点から切り取ってみると、「ごんぎつね」には様々な価値が出現します。 兵十の母への思い、ごんと兵十の関係、悲しいすれ違い等々・・・・ 人によって感動するポイントが

一読総合法以外の道徳の授業

道徳科の授業法の定番と言えば、一読総合法です。 昔は一読四分進法と呼ばれていました。 要は、今ある読み物教材の特性を活かした授業の進め方です。基本的にどの教科書教材もこの進め方に準拠したものになっています。いわゆる道徳の授業というとこの方法が真っ先に考えられます。 授業としては、 ①価値や資料への導入(経験や価値のイメージを問います。) ②先生の範読 ③物語の起・承・転・結ごとに一つずつの発問 ④自分の生活の振り返り ⑤先生からの説話 といった流れです。

道徳の授業の成功は始まる前から決まっている。

様々な附属の小学校が公開授業をしています。土曜日にしてくれることもあれば、平日のところもあります。 土日にはできるだけ授業を参観するようにしているのですが、その中で、気づいたことが一つあります。 それがタイトルにある。 道徳の授業の成功は始まる前から決まっている。ということ。 始まる前から、すでに雰囲気がよいクラスの授業は何をやってもうまくいきます。逆に何だか重苦しい雰囲気が流れているときは、だいたい上手くいかないことが多いです。 今年の6月に筑波大学に授業を見に行

すごく簡単な道徳授業上達法

道徳科の教材研究をするのは大変です。というより、道徳科の授業にまで労力を回すのが難しいという方が適切かもしれません。 何故なら、効率が良くないから。 例えば、道徳科の授業の教材研究を3時間かけてしたとします。すると、一時間の授業がぶっつけ本番でするよりも良い授業になるはずです。(理屈の上では。) では、その3時間の教材研究を国語科ですれば?小学校の国語科の一単元が10時間分の単元であれば、その10時間分が充実することになります。 なので、どうしても、道徳の授業研究をす

道徳科と国語科の違いは?

道徳科とよく似ている教科に国語科があります。 例えば、どちらの教科も文章を読んで考えるという点は共通しています。 道徳科ではそれを読み物教材、国語科では「物語文」や「説明文」として扱われています。 例をあげると「泣いた赤鬼」という教材は道徳の教科書にも、国語の教科書にも掲載されています。 また、「どんな気持ちですか?」という発問も、道徳、国語共によく使われる発問です。(国語科では、気持ちばかりで気持ち悪いと言われることもあったそうです。) そして、教える側も、意識し

道徳教育の歴史を千字ぐらいで解説。

道徳教育には大きく分けると二つの考え方があります。 ①道徳は普段の生活や授業の中で十分に教えられるという考え方 ②道徳はそのために一コマの時間を設けて教えるべきだという考え方 ①のことを全面主義、②のことを特設主義といいます。 では、日本はどちらの立場をとっているのかというと現在では両方の立場を取り入れているということが出来ます。ここでは、便宜上、戦後に絞って話を進めていきます。 戦後の日本の道徳教育は、最初、全面主義を採用します。これは「修身科」が戦争の片棒を担い

道徳科って何する教科なの?

今日は、そもそも道徳科って何を学ぶ時間なのか?ということを考えていきたいと思います。 国語であれば言葉のこと、算数であれば数字、理科であれば自然科学など、他の教科は何かしらの学ぶものがはっきりとしているような感じがします。 では、道徳科で学ぶものは? 僕なりに考えていることを書いていこうと思います。 まずは、文部科学省が出している学習指導要領を見てみましょう。学習指導要領は学校教育の最も大本となる指針を示したもので、いわゆる小中高等学校の授業のカリキュラムはこれに基づ