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劇団イキウメ 「終わりのない」

お前が知らなくても、頑張ってるやつはたくさんいる。お前の声は、必ず届く。

閃きだとか、第六感だとか、ピンときたとか、人によって表現は違うけれど、確かに理屈ではない「何か」によって、どこかに導かれることはある。そしてその閃きは、年齢を重ねるごとに消えていく。どこかとの繋がりが、途切れてしまう。

でも、確かに「それ」は「そこ」にある。大抵は意識をしていない無意識の中に。その無意識の中で、個は全体となる。

たぷたぷした羊水の水面下で、あらゆる意識が溶け合って存在している。言葉に出さなくても記憶を共有できる。それが例え、32世紀の宇宙船の中でも、またはホワイトホールの向こうにある、ベージュのマント姿の「自我が確立する前の」民の住む、タトゥイーンみたいな惑星でも。だって、宇宙は1つじゃない。Universeという言葉には「1」を表す「Uni、ユニ」が入っているけれど、実際には、時空間にはたくさんの分岐点があり、よって世界はマルチバースなのだ。まさに量子力学の世界。

自我が確立した世界でも、多分誰もが、繋がりを求めている。繋がりたいと願ってる。だからソーシャルは今、こんなに流行っている。無意識で繋がっていた世界を、意識が見失いかけているから。

今の自我は、どこから分岐したんだろう。どこからどこまでが、今生きている自分なんだろう。自我が確立するのにかかる時間は、一体どれくらいなんだろう。一つの生で完成するのかしら。そもそも「生」って、何だっけ?

それでも自分は生きている。この世界を託されている。今自分が何を選択するかで、世界はまた分岐する。500年後に地球が人の住めない惑星になるか否かに、自分の行動が影響するかも知れない。くだらないと思える小さな声も、想定外の誰かには響くのかも知れない。個は全で、全が個であるならば。

無意識のあれこれに心配されながら、自我を自覚したユーリは産道を通って生まれてくる。心配してくれてありがとう。一人でもう大丈夫だよ。何度目の生かは分からないけれど。

宇宙は自分で、自分は宇宙で。人のためは自分のためで。どこかで全ては繋がっていて。

この問いも、終わりのない旅。

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シンプルな舞台が、全てを雄弁に語っていた。舞台奥の円形の空間が宇宙船の窓になり、遠い惑星の月となり、水面となり、草木に縁取られたキャンプ場の空となる。きりりとした照明の白は、無菌の宇宙船内の色。白熱灯は、家族のいる温かな色。

劇団イキウメ、秋の新作。終わりのない最高。


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