せめて置いていかれないように
最近、Facebookのグループ機能で、恋人募集グループに複数参加してそれを眺めている。実際にそこで恋人を探す気はさらさら無いのだが、なかなか考えさせられる景色がそこに広がっている。
そもそもFacebook自体が限界集落のような雰囲気があって面白いのだが、そこでの恋人募集グループはとにかく混沌としている。
まずグループ全体のプロフィール写真は、明らかに無断使用された女性の写真やフリー素材などがある。とりわけ目立つのが、どう見てもAI生成された若い女性の画像だ。細身のニットを着た巨乳の女性が、バーやゴルフ場を背景に写っており、文字通り人形のような顔をこちらに向ける。個人的にはこの時点で生理的嫌悪感が湧いてくる。その画像を見てもなお大勢のユーザーがグループに参加しているという事実が面白い。
余談だが、AI生成された女性の小さくて人形のような綺麗な顔を見ると、数年前にYouTubeで見たダッチワイフの製作映像を思い出す。似ているのだ。AI生成の女性の顔やダッチワイフのデザインが、「理想的な女性」を目指しているのだとすれば、「理想」とはそもそも何なのだろう。
さて、いざ恋人募集グループに参加すると(承認制が多い)、30代から50代の男性達の書き込みがずらりと並ぶ。女性の書き込みはほとんどなく、あるとすればこれまたAI生成画像をプロフィールにしたアカウントの怪しい日本語の挨拶文だ。
男性の書き込みがとにかく生々しい。年齢や大まかな居住地とともに、気軽に会いましょうなどと書く人、身長と体重を載せる人、画面いっぱいの自撮りを載せる人など、ネットリテラシーの欠落というよりおじさん達の「ピュア」を観察している気分になる。
そしてその書き込みに反応しているのはやはり日本語の怪しい女性(?)である。その女性にまた男性が反応し、ライン交換まで至っている会話もある。
男性たちが相手を本気で写真通りの女性だと思っているのかどうかはわからないが、かなり高い確率で、男性のピュアな性的欲求が搾取されているのだろうと推察できる。
いやもう、正直に書くと、どう見ても詐欺への誘導である。
僕はそれを、バカなおじさんだな~と眺めているわけではなくて(内心そう思っているかもしれないが)、僕もいつかはこうなるのではないか、という危機感とともに観察している。
Facebookで顔を晒して恋人を探してしまうんじゃないかという意味ではなくて、時代とともに移り変わる常識やリテラシーについていけなかったり、最新のコンテンツに触れる体力をあきらめたり、その繰り返しが、AIの女性や詐欺への誘導にウキウキしてしまうおじさんを作ったのではないか。
彼らも20年前はきっと最新を身に纏った若者で、僕も20年後は最新をとっくに諦めたおじさんで。
最新を諦めた僕は人間ですらない何かに騙され続けて、若い女(に見えるもの)をハアハア言いながら追いかけるおじさんになってしまうんじゃないか。そんな危機感がある。
世界は常に時間とともに流れていて、歩き続けるのは面倒くさいから立ち止まりたくなる瞬間も本当にたくさんあるけど、立ち止まっていると時代が生んだハンターにすぐ狙われちゃうから、だから歩き続けなければならない。
今はダッチワイフみたいな顔のハンターがFacebookでおじさん達を狩っている。
20年後にはどんな狩りが展開されているのか、できれば獲物ではなく観察者として、それを眺めていたい。
そのために自分を更新し続けよう、と、最近よく考えている。
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