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童話 ホルモンの森 05 テーブルの上にピーナッツおじさん 作:MONTAN


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童話 ホルモンの森 05 作:MONTAN
●テーブルの上にピーナッツおじさん

ホルモン屋に朝が来ました。
ネコネコの森の西のはずれにあるガラクタのようなピンクの建物がそうですよ。
二匹の双子の白ネコ“ホル”と“モン”は、二階のダイニングで朝食です。
木製の四角いテーブルには、二つのお皿。
二匹は向かい合って、いつものカリカリを食べていました。
ホルは近頃舌が肥えてきて、安物のカリカリの味では物足りません。
モンは美味しそうにひと粒ひと粒ていねいにカリカリを食べていますがね。

ホルはテーブルの脇に置いてある大きなピーナッツの殻のフタを取りました。
中には“ピーナッツおじさん”が裸で眠っておりました。
ホルは右手でおじさん“ピーナッツおじさん”をつまみあげ、
ちょっと膨らんだお腹を指で押しました。
“ピーナッツおじさん”は「うひゃひゃひゃ!」と笑い、
お尻からピーナツバターが出てきます。
ホルはそれを自分のカリカリの上にふりかけました。
それから、“ピーナッツおじさん”のお尻に残っているピーナッツバターをぺろりと舐めて、もとの殻の中に戻してフタを閉めました。

ホルは、ピーナッツバターが乗ったカリカリを、美味しそうに食べていますよ。
そんな様子を目の前でみているモンは、
“そんなのを付けて食べて美味しいのかなぁ?”
と思うのでした。
双子なのに、ちょっと違うところもあるのですね。
“どうせだったら、変なおじさんより可愛らしい娘がいいよなぁ~!”
とモンは思いました。
「ピーナッツ娘っていないのかなぁ?」
モンはボソッとつぶやきました。

「私たちをお呼びですか?」
「私たちをお呼びですか?」
気が付くと、テーブルの上に小さな双子のピーナッツ娘が立っておりました。
モンはびっくりしましたが、美味しそうだなぁとも思い、
生ツバをゴクリと飲み込みました。
そんな様子をさっしてか、
「私たちは、食べられませんわ。」
「私たちは、食べられませんわ。」
二人のハーモニーはキレイですね。
『コドモを返してください。』
「えっコドモ?」ホルとモンは何のことだかわかりません。
双子のピーナツ娘はいきなり歌い始めました。
まるで大きな蝶がキレイなリンプンをふりまいているような、
幻想的で伸びやかな曲でした。
♪らららぁ~ら、らららぁ~♪
二匹の白ネコは、急に始まったテーブルの上のコンサートに、
うっとりと耳を澄まして聴いておりました。
ゴロゴロ、ゴロゴロゴロ。

10分間のコンサートが終わると、ピーナッツの殻のフタが開き、
“ピーナッツおじさん”が出てきました。
「ママぁ~。」
『おお、私たちの可愛い坊や!こんなところにいたのかい!』
ピーナッツ娘たちは、坊やのそばにかけよりました。
「えっ、このおじさんが坊やだったの!?」
ホルとモンはとってもビックリしました。
★☆★☆★☆
『坊やを連れて帰ります。』
双子のピーナッツ娘は、坊やをピーナッツの殻に入れ、前と後ろで抱えると、
そのまま消えてしまいました。

「ところでさ、あのピーナッツの殻、どこで手に入れたの?」
とモン。
「それは言えない。」
とホル。
「この頃、隠し事が多くないかい…?まぁ、いいけどね。」
「むふふふ。」
「ふふふふ。」
二匹の白ネコが笑っていると、
開け放たれた窓から、清々しい風がふいてきました。
5話 了

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