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逆R指定のススメ

 価値観や感情を押し付けるとモテない、という話を以前したが、最近はっきりキモチワルイと思った番組を見た。ニュージーランドの大自然や先住民の風習を紹介する教養系番組かと思って眺めていたら、やたらと制作側の価値観を押し付けてくる。その上せっかくの現地映像を出し惜しんで代わりに低質な解説アニメを見せてくるわ、「へえ」とか「スゴイ」とか本編と関係のない感嘆の字幕を大文字でぶっ込んでくるわで、実に見苦しく不快である。「56時間撮影したのをたった2時間の番組に編集したので、素晴らしい映像であっても編集に漏れてお見せできないのが残念」とか言っているくせに、見たくもない下手な絵のアニメや、見たくもない番組案内人の幼児性溢れるリアクションや、聞きたくもない一方的価値観の押し付け且つ出来の悪いAIに喋らせたかのようなヘンテコな日本語(文法も発音もあちこちおかしく、ネイティブでない日本語に聞こえた)のナレーションで、ただでさえ短い番組時間を更に浪費してしまっている。56時間も撮ったのならもっとマシな真の映像をじゃんじゃん出せるだろうに、一体どういう優先順位なのだ。それとも宇宙人の価値基準はそんなにも地球人の平均の真逆を行っているのかね。これが地球人の大多数が好む番組編集なのかね。いやいや、これは紛れもなく編集者のセンスが悪いか、さもなければ56時間撮った撮影スタッフが実は時間ばかり使ってロクな映像を撮れなかったのを、無理やり2時間番組に仕上げるためにあの手この手を弄した結果かような見苦しい作品にまとめるしかなかったかの、どちらかではないのか。その撮影スタッフの失態を隠すから、かような学生が作ったかのような稚拙で薄っぺらな番組になったのではないのか。

 なかんずく一番頭がねじれたのは、氷河を定点撮影している現地人への取材の模様だ。その白人男性は「見てごらん」と自分が定点撮影して溜めた動画を早回しして見せ、静止して見える氷河が実は僅かずつでも絶えず動いているという事実に対する自身の感動を押し付けてくるのだが(今どき小学生でもそれくらいの事実は知っているだろうに)、その一方で、「画像でもわかる通り、近年氷河は減少している。このまま放置すれば消滅してしまうだろう。しかし排出ガスを減らせば消滅を食い止められるのだ」とSDGsの定型文を垂れるのだ。日本語吹き替えがかぶさっていたので本当に本人がそう言ったのかは定かでないが、結論が予め決められているお決まりのシナリオに鼻白む宇宙人。劇場型詐欺に近似している。どうしても炭素ゼロの価値観に持って行きたいのがミエミエだ。もうそれは耳にタコだし、炭素ゼロで儲けたい奴らのえげつない商法の一環だってことは世間もぼちぼち気付いているのに。
 宇宙人の頭では、「一見して止まっている氷河が少しずつ動いているのなら、その先に氷河の自然消滅が待っていても不思議ではない。この先何億年もこの氷河がこの量のまま留まっていることの方があり得ないのだから、いずれは消滅すると考えるのがむしろ自然だ。人間が温暖化ガスを増やしたり減らしたりする時間や程度は、氷河という大自然のスケールからすれば一瞬の誤差に過ぎない。つまり人間が「この氷河を守るために」したがる作業も、圧倒的なスケールで途方もない年月をかけて進む氷河や地球全体の変化に比べれば、そこへ一石を投じるどころか吐息にさえならない。そういうことが、氷河の定点撮影によって自然の途方もないスケールを視認した人間が気付けない、ということの方が余程不自然で矛盾している」と考えるのだが、皆さんはどうですか。あちこち頭がねじれる番組だと思いませんか。全然思わないですか。

 そもそもニュージーランドに英国人が入植したせいで絶滅したり絶滅危惧種になったりした動植物が山ほどあるのに、氷河に限って「このまま存続させよう」とか言っているのが辻褄合わない。論点をすり替えてる感じがする。それとも、動植物より氷河の方が雄大で綺麗だから保護したいのかな? 金髪白皙のウクライナ女性は助けるけど、黒髪褐色肌のアフガン女性は助けない、どこかの国の金髪依存症男と通底する発想である。動植物が絶滅したのは自分達白人のせいなのに、それをさらっとスルーして、氷河の減少・消滅は(白人のみならず有色人種を含む)人類全ての責任だ、といったロジック破綻も気に食わない。責任を取るのは事態を招いた原因に関わる当事者だけでいいのでは。都合の悪い時だけ連帯責任で、それ以外は個人主義なアングロサクソン。そのあからさまな矛盾がカッコ悪いんだよ。皆さんはそうは思わないのかい? こういう番組見ていると、頭がツイストドーナツ状にねじれ上がってキモチ悪くなりませんか? それとも宇宙人だけ? 見せかけだけのお得プランに騙されてホイホイ携帯契約してしまいますか? ステルス増税やステルス値上げに馬鹿にされてる感じがして、消費そのものを手控える心境になりはしませんか?

 宇宙人は提案する。子供が見ることを禁じる映画はR指定だが、その反対に大人が見るのを禁じる「逆R指定」を作ろうではないか。目的は、「大人が幼児化しないため」。結論ありきの単純で恣意的な思想誘導や、一方通行で独善的な正義をベースにした勧善懲悪、単細胞な思考を助長するヒーローものの映画や番組は、「社会的責任のない子供は見て楽しんでもいいが、大人まで見るといつまでも幼稚な思考で留まってしまい、無責任な大人ばかりの社会になる恐れがあるので、視聴を禁止する」のだ。ハリウッド映画なんかエロシーンがあろうとなかろうと全編禁止なのだ。そうしたら人類は思考誘導されることなく自らの頭でものを考え判断できるようになり、誰かの思い通りに動かされる奴隷状態から解放されて、社会全体ももう少しマシな方向へ立て直せるのでは? 

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