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怪談・THE私43team100モノ

※寄せ集めた怪談です。

前々回

前回

メンバー。

解滴 榾建ときしずく ほたて

心霊現象は嗜む程度だが、自覚なく怪奇現象に見舞われている。
怪談は恐らく実質ノンフィクションである。
女子大生。

獬焼 依奈巾かいやき いなは

スポーツ好きの男子高校生。
浮気性で様々なスポーツを楽しむ。
口癖は「俺〇〇極めた。」
クラウドファンディングで心霊番組に協力するほどのホラーファン。
怪談は慣れてないからか、スポーツ関係の実体験での話が怖さをかもし出している。

ワデス竿翔冠さおとめ

自称ハーフの欧米出身男子中学生。
本名不明。
何処から聞いたのか00年代のホラーよりな話が多い。
呪いをかけているつもりはないのに相手の負の予兆を直感で分かるからかあだ名は「呪詛師」
恨みの相談を頼まれることが多い。

惰鯛 船護たいた にっく

映画に影響された家族に見切りを付けて早くから双子の姉と共に二人暮しをしている女子高校生。
決して暗い性格ではないのだがやたらと怖い体験が多く、そんなに仲が良くない姉と怖い話の時だけ盛り上がる。
最近は話す練習のために怪談を始めた。

惰鯛 筏船たいた ごふ

船護にっくの双子の姉で女子高校生。
妹と仲は悪いが「自分達に大した財産ないし親族の介護もしたくない気持ちは一致してるからからいいじゃないか。」
と若いうちから未来の準備をしている。
それでもおじいちゃん、おばあちゃん子で年配者から聞く令和の怖い話を多く持つ。
手続きさえしっかり終わればある決断をするつもりでいる。

俺は霊体とコンタクトをとる


 公園で水を浴び、スポーツを終えた後の余韻に浸る。
解滴 榾建ときしずく ほたてさん。
心霊コミュニティを維持してくださる女子大生。
彼女は心霊現象や怪奇現象を当然のように語る。
信じたくないのに、信じてしまいそうになるくらいにナチュラルに。
案外心霊現象って間近で起こってるのかもな。

 獬焼 依奈巾かいやき いなはは様々なスポーツを時に主体的に行ったり、受動的にやらされたりするごく普通の男子高校生。
少し変わったところがあるとすれば、ホラー番組の沼に浸かっていることだ。


 最初は心霊現象で出演している女優か女性投稿者が美人だったからといった理由で楽しんでいたのだがちゃんと投稿までのくだりや写ってしまった心霊映像の怖さにいつのまにかのめり込んでいった。

 それなのに心霊コミュニティでうまく話せずに困っていた。
歳下のメンバー、ワデス竿翔冠さおとめの00年代特有の怖さを今風にアレンジして無から有を話せるスキルにいつも比較して凹む。
でも面白いのだ。

 依奈巾は暑さに参ってシャツをひらひらとさせ、鍛えた腹筋をちらつかせた。
スポーツ推薦で大学へ行くのもいいけれど、正直未だに発展しないこの国で労働したくないのが本音。
そうはいいつつ心霊体験談を増やすために大学へ進学して院生を送るのもいいし、就職してわけのわからない社長から生まれたその会社ならではの怪談を楽しむ人生もありだ。

 最近気がついた。
恐怖体験がない人間なんていない。
テンションやパーソナルに左右されるが、今やクオリティの高い怪談を言えない人間はいない。

 どうにか自分も飽和して一般化してしまった心霊関係と上手く折り合いをつけて尖らせねば。

 それよりもまずは顔を洗っていくか。
ちょうどトイレも行きたかったし。
部活の練習も終わり、実用的筋肉自慢を野郎共がしていた時間も過去となっていた。
さっさと帰ろう。

                              ✳︎

 トイレで顔を洗い、用も足して誰もいない洗面所の鏡でマッスルパフォーマンスをする。
昔いた、競技とは関係ないけれどマッシブな身体をした人達のようにいつか「実用的な身体」という呪いを紐解いて健康的で非日常的なマッチョを目指す選択肢も考えた。
既にそっち方面では動画投稿も編集もしているし。
モテなくても小遣いぐらい稼げる希望さえあれば充分。
筋肉関係のホラーもいくつかあるし。

「生きているうちに運動量が適切なまま死ねる人なんてどれだけいるんだろうね。」

 え?
誰かいた?
いや、それは鏡の前だけにいた。
後ろに気配がなかったから。

「全然驚かないねえ。
まあそうか。
近頃誰かを脅かすの、苦労してたし。」

 えぇ?
嘘だよね?
心霊現象?
記録しないと!

 スマホを構えようとしたが鏡にいる霊体を捉えようにも被写体にならない。

「とっくに人間社会から降りて、映像とか写真に残せると思う?」

 やたら現代に精通しているこの霊。
でも皮肉を伝えるので危害を加えようとしない。

「仲間から聞いたよ。
君達、心霊について話してるんだって?
今時、金にもならないのに盛り上がってて羨ましいよ。
まあ、お金がどうかっていうのも別か。
話に花が咲けばいいし。
事故物件も自殺の名所も一般化されつつあるし。
本当、嫌な時代だよ。」

 おしゃべりな霊だ。
何故音声もスマホやビデオカメラで記録できない!
いくら本物だからってそんな現実ありえない!

「そういえば黒い尻尾の持ち主が、ある人間をマークしているって話は出た?
心霊コミュニティだからといって、人間の怖さやUMA、超能力や超常現象から
目を背けるわけにはいかないでしょう?
何故なら!
もう専門家なんて遅れてるから。
勿論ターゲットはちゃんと決めないと。
君の場合は心霊コミュニティに属している人達。
あの女子大生が話していた黒い尻尾の主を探さないと単なる一過性のホラーコミュニティになるだけさ。
探すべきだよ。」

 やたら命令口調かつこちらのコミュニティで話したことがダダ漏れなので間違いなく本物の霊体なのだろう。
本物というか、死者の実体験というか。

 長セリフでうまく話に割り込む隙がない。
黒い尻尾の話は榾建さんから聞いた通り。
まさかノンフィクションだったとは。
けれどその現象を証言できるのは榾建さんのみだ。
他の人には見えないらしいし。

 今までならよくできた話で済んだ。
しかしたったいま幻覚ではない霊体から話を聞いた。
あの霊体は自分がなんなのかを説明しなかったから誰かのいたずらか自分の疲れによる幻聴か聞き間違いもあるかもしれない。

 だとしても「黒い尻尾の検証」は盲点だった。
次のコミュニティで切り出してみるか。
みんな予定があって忙しそうだし、次の心霊コミュニティがやるかは不明だけど。

 次は自分達がクラウドファンディングしてもらえるかも。
そう期待に胸を膨らませながらトイレを出る。
心霊体験をしたのに希望を持つなんて自分だけと依奈巾は誇らしげだった。

「あーあ。
ちょっと火に油を注いじゃったかな。
彼が大学を浮遊していたら偶然聞いた心霊コミュニティへちょっかいをかけただけだったのに。
若い生者は根拠のない自信があるね。
自己啓発だの自己実現だのの本のおかげか。
全く生きづらい。
人間にできることは限られていて、死後はやることもないのに。」

 希望の持ち方の個人差ほど研究し甲斐のあるテーマはなさそうだ。
霊体は少し考えを改めるのだった。

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