怪談・THE私92 シイモの場合
※この物語、怪談はあるキャラの視点です。
なんと言えばいいかわからなくて
霊体アイドル地方公演メンバーに抜擢されてから思ったよりも飽きない毎日を送っている。
死ぬ前の記憶なんてほぼみんなないらしいけど、私の場合は成り行きで殺されてしまった過去ばかり思い浮かぶ。
別に生前の人間を恨んだりしていない。
全ては成り行きだったから。
四体で組んだユニット。
何故かこの世ならざるモノ達が建物やら色々人間の真似事をしっかりとこの世界に作ってくれた。
報酬とか対価も要らないから楽しめる。
少し経って、休憩時間に空を飛んでいたら飛び降りようとしている人を見かけた。
止めはしない。
だが見捨てることはできなかった。
私は成り行きで殺されたから、人間の綺麗事が如何に無意味かつ暴力となるかよく知っている。
疲れるくらいなら…
私はその人の元へ向かう。
『無責任な人生ほど 最悪の暴力はない
どうにもならないとき その無情を守った
暮らす日々に疲れたなら また会いに来るよ
その時が来なくても 私は待っている』
聞こえてるわけない。
でも私はアイドル、「雷電のシイモ」
生きている人間にも歌が届くと信じたい!
するとその人は一度降りるのをやめた。
そしてその場で音楽を聴き、タバコを吸っていた。
私は見えないことはわかっているけれど、休憩時間が終わるまでその人の側に居続けた。
雷電のシイモ 休憩日和にて。
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